憤怒身
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第七章
「その画像見せてくれる?」
「ええ、あるわよ」
友人の一人が言った、そしてだった。
その画像携帯に出したそれを見せるとだ、まさにだった。
そこにいる千佳は寿と同じだった、全身から黒い瘴気を思わせる怒りのオーラを放って目が真っ赤だった。丁度クラスに入る時だったが。
千佳はその時の自分を見て思わず言った。
「カープが巨人に惨敗した時みたいね」
「だからその時よ」
「マツダスタジアムで連敗した時よ」
「まさかと思って観たらね」
「こんな姿だったのよ」
友人達は千佳に話した。
「だから画像に撮ったの」
「それでこの日皆千佳ちゃんに声かけなかったけれど」
「気付いてた?」
「そういえばそんな日あったわね」
千佳も言われて気付いた。
「一日頭にきていて気付かなかったかも」
「というかそこまで怒ってるのわかったから」
「誰も声かけなかったの」
「絶対に怒ってるって思ったし」
「カープのことから」
本拠地で巨人に連敗してだ。
「そうなったからね」
「そしたら本当にそうだったから」
「もう何ていうかね」
「自分で見て思ったでしょ」
「お兄さんそっくりだって」
「いや、何かね」
千佳は友人達に冷静な顔でコメントした。
「昨日お父さんに言われたこと思い出したわ」
「何て言われたの?」
「私達と同じこと言われたの?」
「そうだったのよ、兄妹だってね」
ここでその父のその言葉を思い出した。
「思ったわ」
「同じこと思ったわね」
「実際その通りだしね」
「お兄さんそっくりよ」
「じゃあ私も鯉キチってこと?」
自分でだ、千佳はこの言葉を出した。
「要するに」
「その通りよ」
「そう言うしかないから」
「お兄さんのお話聞いてたら」
「兄妹で同じだから」
「こと野球については」
「そうなのね、まあ言われてみると」
どうかとだ、千佳も答えた。
「否定出来ないわね」
「自覚あるからね」
「そうなのね」
「ええ、どうもね」
こう言うのだった、しかし千佳はこう言うのは忘れなかった。
「まあ阪神にも負けないけれどね」
「はいはい、お兄さんもそう言ってるでしょ」
「それじゃあそこも同じだから」
「完全にね」
友人達は千佳にまた言った。
「全く、何処までそっくりなのよ」
「応援しているチームが違うだけじゃない」
「まあ巨人以外には凄く寛容なのはいいけれど」
「そのことはね」
「だって巨人は球界どころか全世界の癌細胞じゃない」
千佳はこう思っているが寿も全く同じ考えだ。
「だったらね」
「嫌うのも当然」
「そう言うのね」
「そうよ、それこそね」
だからだというのだ。
「嫌いだし負けたら腹が立つのよ」
「やれやれね」
「本当にそこも一緒ね」
「それじゃあ今年も巨人優勝しない様にね」
「カープも頑張ってね」
「今年も優勝するから」
あくまでこう言う千佳だった、本当に何もかもがそっくりな兄妹だとこの言葉を出しても自覚した彼女だった。
憤怒身 完
2018・4・29
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