FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
姉妹の再会
シリルside
「ここはギルダーツとカナに任せる。私たちはギルドを!!」
「よし!!」
「はい!!」
「わかりました!!」
強大な魔力を保有しているオーガストとの戦いはギルダーツさんとカナさんが名乗り出てくれた。彼の相手は二人に任せて、俺たちは先へと進んでいく。
「うおおおおおお!!」
その声を聞くよりも早く動いていたのはやはりこの人。それに続こうとした俺たちだったが、俺はある気配を感じて足を止める。
「どうしたの?シリル」
「この魔力・・・」
目の魔水晶を解放してそちらの方角を見据える。するとそこに見覚えのある人物がこちらに歩いてきていることに気が付いた。
「またあったわね、おチビちゃん」
「!!あなたは・・・」
金色の髪をした中性的な印象を与える女性。彼女を見た瞬間、ウェンディは目を見開いた。
「本当に無駄だったのね、あの子のすべてを賭けた戦いは」
俺たちの前にいるのはシェリアが未来の力を使ってまで倒したはずのスプリガン16の一人、戦乙女ディマリア。彼女は震えている天竜を見て歯を見せていた。
「もうあの女もいないことだし、あなたたちを殺すことなど容易いことよ」
そう言って彼女が奥歯をカチッと鳴らしたかと思った瞬間、俺の腕に激痛が走った。
「っ!!」
「シリル!!」
予想外の痛みに腕を抑える。そこからは血が流れてきており、急いで水を出して止血する。
「やっぱり私だけの世界はいいわ。あなたたちは何もできずにやられるしかないのよ」
「私だけの世界?」
その言葉の意味が一瞬わからなかったが、すぐに彼女の魔法を思い出した。ディマリアの魔法は時を止めるアージュ・シール。彼女しか動くことができないその世界で、相手に攻撃を加えることができるってわけか。
「まずいわね・・・」
「もうウルティアさんもいないよ~!!」
ハルジオンの時は彼女の魔法により時空が歪んだことで現れることができたウルティアさんがウェンディとシェリアの時を動かしてくれたおかげで勝利することができた。しかし、今は彼女が現れることはない。絶対絶命のピンチ・・・なんだろうけど・・・
「ウェンディ、セシリー、シャルル。下がってて」
「「「え?」」」
止血を終えて立ち上がる。俺は目の前で余裕の笑みを浮かべているディマリアを睨み付ける。
「俺がこいつを倒してやる。すぐにな」
そう言った瞬間、彼女の目が鋭くなったのは誰の目から見ても明らかだった。
シリルがディマリアに挑もうとしようとしていたその時、別の場所ではこれまた16の女性魔導士の前に苦戦を強いられている者たちがいた。
「な・・・何なんだこいつは・・・」
「ここまでの相手がいるなんて・・・記憶にないね」
お団子ヘアの少女の前にボロボロになっているのは剣咬の虎最強の6人と呼ばれるオルガ、ルーファスのコンビ。彼らはゴッドセレナとの戦いで激しく消耗していたこともあり、無傷のヨザイネにダメージを負わせることができないでいる。
「ククッ。下界の民ごときが我にダメージを与えることなど不可能。なぜなら私は・・・堕天使なのだから!!」
ギランッと流し目をするヨザイネ。その決めポーズに二人は何もリアクションを取らずになおも戦いを挑んでいく。
「俺たち二人が力を合わせれば・・・一矢報いるくらいはできんじゃねぇの?」
「記憶にはないが・・・それは十分に可能性があるね」
一か八かの賭け・・・二人は魔力を高めていくと、己の全力を目の前の少女へとぶつける。
「記憶造形・・・燃ユル大地ノ業!!」
「雷神の・・・荷電粒子砲!!」
持てる最後の力を使った全身全霊の攻撃。ヨザイネはそれを交わすことができず、直撃した。
「やったか・・・」
「これで倒せないなら・・・その先の記憶はないだろうね」
手応えは十分にあった。しかし、相手が相手なだけに倒せたかどうか判断することはできない。
それでも多少のダメージは与えたと思っていた・・・それなのに・・・
「何度も言わせないで。下界の者が我に傷を付けることは不可能」
砂煙が晴れて現れたのは、致命傷どころか傷一つ付いている気配のないヨザイネの姿だった。
「バカな・・・」
「これでもダメなのか・・・」
敵のあまりの強さに二人は膝から崩れ落ちた。勝てるはずがないという絶望が、戦う意志をも打ち砕いてしまう。
「全てを飲み込む清き水よ、この地の命を全て飲み込め」
そう言うとオルガとルーファスの足元が大きく振動する。そして地面から流れ出した大量の水が、二人の体を飲み込んだ。
「火竜の・・・咆哮!!」
敵兵へと突撃していったナツがブレスを放つ。しかし、それはなぜか瞬く間に凍らされてしまった。
「ぶはっ!!何すんだよグレイ!!」
「俺じゃねぇよ」
後ろにいた青年を睨み付けるナツだったが、彼がそんなことをするはずもなくあっさり否定される。
「つーかこの冷気・・・」
「寒っ!!」
「そんな薄着だからです」ブル
ナツたちを襲う冷たい風。それはどんどん増していき、全員が体を震わせていた。
「燃えろぉ!!」
この状況を打破するためにと周囲に炎を起こすナツ。だったが、その炎は瞬く間に冷気に負けて凍らされてしまった。
「う・・・うそだろ・・・」
信じられないといった表情のナツは、その風にやられて凍らされてしまった。そこに現れたのは、銀髪の眼鏡をかけた青年だった。
「ナツ!!ルーシィ!!ジュビア!!ハッピー!!」
凍らされた仲間たちを心配するグレイ。自身の冷気に負けることのない青年を見てインベルは興味深そうな顔をしていた。
「ほう・・・冷気耐性があるようですね」
「こいつ・・・」
仲間たちを凍らせた要因である青年へと突進するグレイ。彼は両手を合わせて魔法を放とうとしたが、それよりも早く氷の一撃が脇腹へと突き刺さる。
「ぐああああ!!」
建物へと叩き付けられるグレイ。その攻撃が当たった部位は、彼の氷により固まっていた。
インベルは驚いている彼を気にすることもなく手を動かすと、次から次へと氷の塊が彼を襲う。
「私の名はインベル・ユラ。全てを冬に変える者。君ごときの冷気では、私の冬は越せない」
いまだかつて感じたことがない寒さに体を震わせるグレイ。メイビス救出のための大一番が、始まろうとしていた。
「破邪顕正・一天!!」
大地を切り裂く死闘を繰り広げている二人の男。ギルダーツは自らの持つ最高の一撃をオーガストにお見舞いする。
「面白い魔法を使うが・・・」
それは見事にオーガストを捉えた。今までの敵であればそれで葬り去ることができたのだが、今回ばかりはそれは叶わない。
「その程度では私に勝つことはできん」
完全に食らったはずの攻撃。それなのにオーガストの体には傷など一切付いておらず、格の違いを感じさせる。
「何なんだこいつは・・・」
どんな攻撃もモロともしないその力に驚愕を通り越して恐怖を感じてしまう。あまりの圧に一歩後退すると、待ってましたと言わんばかりにオーガストは拳を叩き込んだ。
「ゴハッ!!」
あばらから聞こえてはならない音が聞こえてきた。ギルダーツの口からは赤いものが飛び散り、その場にしゃがみ込んでしまう。
「お父さん!!」
頼れるはずの父が歯が立たない強大な敵。カナはそれを援護しようとカードを放つが、オーガストは冷静に後ろへと下がり攻撃を交わす。
「大丈夫!!ギルダーツ!!」
「だい・・・じょうぶだ・・・」
カナの手を借り立ち上がるギルダーツ。だが、彼の体は既にボロボロ。先のティオスからの攻撃で本来の力を出すには至らなくなっていた。
「親子の愛情・・・この世界のありとあらゆる魔法を修得した私にもわからないものではある。だが、私たちにはもう時間がない。それを知るために君たちと戯れるつもりはないよ」
冷たい目で二人を見下ろすオーガスト。ボロボロの妖精はこの状況を打開する術を持ち合わせていなかった。
各地で16の面々と妖精の尻尾の戦いが繰り広げられているその頃、この少女は宛もなくさ迷っていることしかできていなかった。
「もう!!あのお団子何なの!?」
ヨザイネに連れ去られたと思っていたソフィアだったが、アイリーンのユニバースワンにより人々の配置転換が行われたことにより脱出に成功。ただ、そのことを知らない彼女はどこに行けばいいのかわからず、見たことあるようなないような、様々な景色が混ざり合ったその場所を歩いていることしかできなかった。
「ここがどこだか全然わかんない~!!」
カグラたちの元に帰ろうにもハルジオンの方角がさっぱりわからないソフィアは地団駄を踏むことしかできなかった。しかし、その時後ろから彼女は人の気配を感じる。
「この雰囲気は・・・」
彼女はその人の気配で誰が近くにいるのかすぐに察した。その方角へと走り出した彼女は、すぐに視界に捉えた黒髪の女性に飛び付く。
「カグラさ~ん!!」
「!?」
剣を携えた着物姿の女性に抱き付くソフィア。いきなりの出来事にカグラは驚いていることしかできなかった。
「ソフィア!?無事だったのか!!」
自分に飛び付いてきた人物がソフィアだとわかると彼女も嬉しそうに抱き締める。その際ソフィアはカグラのふくよかな胸に顔を沈ませてニヤついていた。
「逃げてこれたのか?」
「なんかいつの間にか一人になってました」
詳しい事情はわからないがとにかく大切な仲間が無事だったことに安堵するカグラ。なおも抱き付いてくるソフィアを引き剥がすと、彼女はソフィアに今の状況を説明する。
「ソフィア、妖精の尻尾に行くぞ」
「え?ハルジオンは?」
最初はここがハルジオンだと思っていたが景色が全く違うことで困惑していたソフィア。さらにカグラからそんなことを言われては、ますます理解が追い付かなくなってしまう。
「ハルジオンは奪還に成功した。だが、突然辺りが光ったと思ったらいきなりどこかわからない場所にいてな。それでどうすればいいか迷っていたら、こいつが妖精の尻尾まで道案内してくれることになった」
「たぶんみんなギルドに向かってると思うわよ」
そう言ってカグラが指差したところにいたのはラキ。彼女もユニバースワンの影響で仲間たちとはぐれたのだが、ゼーラの声により判明した妖精の尻尾へと向かってカグラと進んでいるのだ。
「わぁ!!メガネッ娘だぁ!!」
「きゃあああああ!!」
そんなことなど関係ないのか、ソフィアはラキへと飛び付き悲鳴を上げられていた。その後カグラからゲンコツが落ちてきて離れたことは離れたが、一切後悔している様子はない。
「それじゃあ早速!!妖精の尻尾目指してレッツゴー!!」
「急に仕切るな!!」
先陣を切って進んでいこうとしたソフィア。道も知らない彼女が先頭で辿り着けるわけはないとカグラが引き止めに入ろうとしたところ・・・
「あら?その必要はないわよ」
「「「!!」」」
突如横から女性の声がした。
「誰だ!!」
「綺麗な声ぇ」
「あなた女なら誰でもいいの?」
全員が振り返り相手の姿を確認する。そこにいたのは長くて艶々の黒髪をした女性が立っていた。
「あなたたちはここで全員死ぬんだから」
不敵な笑みを浮かべているのはスプリガン16の一人であるリュシー。その大きな魔力にカグラとラキは思わず硬直してしまった。
「え・・・」
その時、ソフィアは二人とは異なる反応を示していた。リュシーの顔を見た彼女はフラフラと前に歩き出したのだ。
「ちょっと!!あんた何してるの!?」
「ソフィア!!戻ってこい!!」
彼女が異常な行動をしていることは誰の目から見ても明らかだった。それにより冷静さを取り戻したラキとカグラは彼女を止めようとするが、ソフィアの足は止まらない。
「あら?あなたから始末してほしいのかしら?」
無防備な彼女を見て右手に魔力を溜めるリュシー。二人の距離は非常に近く、放たれたらいくらソフィアでも跳ね返せる保証はない。
「ねぇ・・・こんなところで何してるの?」
「・・・は?」
ソフィアの体を貫こうとしたリュシー。だが、顔を俯けている少女の突然の問いに彼女は訝しげな表情を浮かべる。
「やっぱりあの時生きてたんだね・・・」
体を小刻みに震えさせている目の前の少女に呆気に取られ、今にも放つ準備が出来ていた魔力を一度解放する。俯けていた顔を拭った少女は顔を上げると、その顔を見てリュシーの目から一粒の滴が溢れた。
「久しぶり、お姉ちゃん」
「ソ・・・ソフィ?」
悲しき別れを告げたはずの二人の姉妹。感動の再会を果たした彼女たちを待ち受けるのは感動か、絶望か・・・
後書き
いかがだったでしょうか。
オーガストvsギルダーツ&カナ、結末が原作と変わると思います。
そしてついに来ましたソフィアとリュシーの物語!!皆さんわかってたと思いますがうまく出せてよかったです。
次は彼女たちのストーリーがメインですね。ただ、感動の再会で喜んでいられる場面ではありませんがね・・・
ページ上へ戻る