ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル
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第30話 死闘の果てでの進化!イッセーVSGTロボ!!
前書き
この作品には悪魔が眷属を作る際の独自ルールがあるのでお願いします。
side:小猫
「……なるほど、それがグルメ細胞という物なんですね」
私と祐斗先輩は眠っている部長と朱乃先輩の様子を見ながらココさんと一緒に休息を取っていました。キッスが持ってきてくれた食材を食べながらココさんにサニーさんから聞いたグルメ細胞について話を聞いていました。
グルメ細胞を発見したのは美食神『アカシア』と呼ばれる伝説の美食屋。彼はこの世界の地球上を旅をして回り多くの食材を食べながら旅をしていたそうなんですが彼は深海でとんでもない発見をしてしまったそうなんです。
何がとんでもないかというと深海に生息していた魚を捕獲して食べてみると今まで食べたどんな食材よりも美味しくあまりの美味さに言葉を失ってしまったそうです。魚の細胞を調査していくうちにアカシアはある生き物を発見しました。それが後に『グルメクラゲ』と呼ばれることになったクラゲでした。
この生き物は他の生物に捕食されても形を変えながら再生する驚異の細胞を持っており更にその細胞を他の生物が取り入れると細胞が進化してより美味しくなることをアカシアは発見しました。そしてそのグルメクラゲから取られた細胞が『グルメ細胞』と呼ばれるようになったそうです。
「美食の神ですか……一体どんな人だったんでしょうね?」
「数百年も昔の話だからね、僕も実際にあった事はないけど書物によれば彼が残した所業に人間界で起こった戦争を食材を使う事によって止めてしまったという伝説があるんだ」
「戦争を止めてしまうなんて凄い人だ。きっと聖人のような素晴らしい人だったんだね」
ココさんの話に私と祐斗先輩は美食神アカシアがどのような人物だったのか想像してみます。ココさんの話では他にも貧困に苦しむ人々に食材を渡したりもしていたと聞いたので聖人のような心の広い人だったんでしょうか?
「でもグルメ細胞か……そんなものがあると僕たちの世界の人が知ったら欲しいと思う人は相当多そうだね」
「特に強欲な悪魔は絶対に何が何でも欲しがるでしょうね」
私は姉の件もあって部長たちや一部の悪魔の人達以外は傲慢な存在だと思っています。実際に悪魔が他の種族を眷属にする場合は本人の許可が無ければならないというルールがあるんですが殆どの上級悪魔はこれを守っていないそうで魔王様方も頭を抱えているくらいです。そんな悪魔がグルメ細胞を知ったりすれば必ず手に入れようとするでしょう。
「イッセーもその点については凄く慎重になっているんだ。本当は教えない方がいいんだけどサニーの奴め……いや所長がもらしたのが原因か……」
「ご、ごめんなさい。私たちが無理に聞いたりしたから……」
「いや、僕も君たちなら大丈夫だと判断はしてるからそこまで怒ってはないさ、イッセーだって君たちにはいずれ教えていただろうしね。ただ口外だけはしないでくれ」
「はい、絶対に言いません」
「僕も同じく」
ココさんの真剣な表情を見て私と祐斗先輩は頷きました。
「あ、でも部長と朱乃先輩には話してもいいですか?」
「ああ、いいよ。二人が起きたら話してあげて」
「分かりました」
ココさんと話をしているとリーガルマンモスが苦しそうにせき込み、口から何かを吐き出しました。猛獣や生物の骨の中にサニーさんが混じっていました。
「キッス、頼む!」
キッスは勢いよく飛び上がるとサニーさんを背中に連れてこちらに来ました。サニーさんは顔などに怪我をしていましたが無事のようで安心しました。でもサニーさんは何故か顔を隠して私たちには見せようとはしません。
「……サニーさん、どうして顔を隠しているんですか?」
「いいか、猫。俺は敵にやられたんじゃねえ。これはうっかり転んじまって出来た傷だ、いいな?」
「えっと……分かりました」
どうも敵に傷をつけられたのが嫌なのか転んで傷をつけたと主張しています。何だかサニーさんらしくて可愛いですね。
「でもサニーさん。どうしてあなただけがマンモスの口から出てきたんですか?」
「ん?ああ、俺が敵のGTロボを倒した時に強い突風が吹いてな、それに巻き込まれて気が付いたら外に放り出されていたんだ」
「恐らくマンモスが体内に入った異物を出すためにせき込んだんだろう。僕の毒も大分抜けてきたようだ」
「イッセー先輩たちは大丈夫でしょうか……」
私は今もマンモスの体内にいるイッセー先輩たちを想い両手を重ねて祈りました。また頭痛がしましたが私はかまわず先輩の事を想い続けます。
「イッセー先輩、頑張ってください……!」
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
side:イッセー
「ん、ここは……」
俺が目を覚ますと辺りが真っ暗な闇で覆われた場所に立っていた。アーシアやリン姉の姿が見えないが何があったんだ……?
「そうだ、俺はGTロボに……」
自分がGTロボにやられた事を思い出して俺は焦りだした。
「そうだ、こんな所で呑気にしてる場合じゃねえ。早くアーシアたちの元に行かねえと……でもここは何処なんだ?」
辺りを見渡すと真っ暗な空間の一部から何か音が聞こえてきた。
「うん?誰かいるのか?」
音がする方向に歩いていくと、次第に音が大きくなっていった。グジュグジュとまるで肉を食っているような音だ。
「な、なんだ?あれは……」
俺の目に移ったのは大きな赤い鬼が何かを食べている光景だった。しかも俺はその鬼が食っている物を見て驚いた。
「お、俺を食っている……」
そう、鬼が食っていたのは俺自身だった。鬼はこちらに振り向くと口についた血を手で拭いながら話しかけてきた。
『タイムリミットは5分だ。その間に急いで何かを口に入れろ、それもとびきり美味い物を……』
「美味い物……?」
『そうだ、それで細胞は進化する……』
「お前は一体……?」
『お前の中にいるのはあの赤い蜥蜴だけじゃない。それを忘れるな』
鬼がそう言うと辺りが急に眩く輝きだして俺の意識も薄れていった。
『イッセー!目を覚ますんだ!!』
「……ぐっ、ドライグ?」
俺が再び目を覚ますとそこはマンモスの体内だった。目の前には腹から血を流すリン姉と倒れているティナ、そしてアーシアに手を伸ばすGTロボの姿があった。
「ぐうあああぁぁぁぁ!!GTロボォォォォォォォ!!!」
俺は雄たけびを上げながら籠手を出してGTロボの顔を殴った。GTロボは大きく吹き飛んでいき肉の壁に埋まった。
「イ、イッセーさん!首の骨は大丈夫なんですか!?」
「正直、メチャクチャ痛ぇ。気力でどうにか動いている状態だ」
「なら早く回復を……」
「俺は後でいい、今はリン姉とティナを頼む」
「イッセーさん……」
「そんな顔をすんな、俺は必ず勝って見せるからよ」
俺はアーシアの頭を優しく撫でると吹き飛んでいったGTロボの元へ向かった。
『フム、首ノ骨ハ完全ニ折ッタハズダガ……ソレニコノ攻撃力……面白イ』
「GTロボォォォォ!!」
俺はGTロボに飛び掛かると顔面にフォークを当てる、貫通はしなかったものの前に戦ったGTロボには利かなかったチタン合金の顔に大きな凹みが出来ていた。
『フンッ!』
「ガハッ!」
GTロボがお返しにと放った一撃が腹部に炸裂した。俺は吐血しながらもナイフで再び顔を攻撃した。
『ッ!?』
「……5……6……!!」
俺は5連ではなく6連まで力を溜めて釘パンチを放った。それを受けたGTロボは体を大きく折り曲げながら吹き飛んでいった。
(なんだ、この力は……空腹だっていうのに力が溢れてくる……)
さっきまでとは違いGTロボに攻撃が効いている事に俺は戸惑いが隠せなかった。
『……間違イナイ、『オートファジー』ヲ発動サセテイル。ククッ、土壇場デ進化ノ前兆ヲ見セルトハ面白イ』
「オートファジー……?」
オートファジー(自食作用)……栄養飢餓状態に陥った生物が自らの細胞内のたんぱく質をアミノ酸に分解して一時的にエネルギーを得る仕組みの事だ。今の俺はその状態になっているって事なのか?
『イッセー、何があったんだ?お前の意識が途絶えたと思った瞬間体から凄い力が溢れてきているぞ?』
「ドライグ、俺もよく分かんねえんだ。確か俺は……」
『だがこの状態がいい訳じゃない。あくまでも一時的にエネルギーを作り出しただけでお前の体はもう既に瀕死の状態だ。もって5分が限界だろう』
「5分……」
俺はあの空間にいた鬼の言葉を思い出した。5分以内に何かを食えって言っていたが……
『とにかく急げ!お前には時間が残されてないぞ!!』
「ああ、まずはあいつを倒す!他の事は後回しだ!!」
俺は勝負を速攻で決めるために体の負担を無視してGTロボに攻撃を仕掛けた。
「フォーク!!」
フォークをGTロボの顔に放つがGTロボは首を動かしてそれをかわした。
『フンッ!』
「おらぁ!」
GTロボが攻撃しようと振るってきた右腕をナイフで防ぐ。すると今度はレーザーを放とうと顔を開いた。
「閉じていろ!」
俺は両手でGTロボの顔を無理やり閉じるとそこにヘッドパッドを叩き込んだ。
「うおおおりゃあああァァァァ!!」
そして顔を掴んだまま大きく振りかぶってGTロボを投げ飛ばした。
「す、凄い戦いです……!」
煙が晴れるとそこからは大したダメージも無さそうにしながらGTロボがゆっくりと立ち上がった。
『……困ッタモンダ。パワー、スピード……GTロボデハ俺ノ本気ハ再現出来ナイ』
「……」
……ハッタリじゃねえ、GTロボが操縦者自身の力を再現できていないんだ。もしGTロボがあいつの力を再現できていたら勝負なんて一瞬でついていた。
『コノボディガ粉々ニナリソウナ程ノパワー……美食屋イッセー、ソノ年デ大シタモノダ』
「……そりゃどうも」
『ダガソノパワーハアクマデモ一時的ナモノニ過ギナイ。後何分持ツノカナ?ソシテソノ間ニ俺ヲ倒セルノカ?』
「倒すさ、倒して見せるさ」
『無理ダナ』
なっ……!?速い!一瞬で俺の目の前に来やがった……!!
『ピーラーショット!!』
前に戦ったGTロボとは比べ物にならないほどの速い攻撃が俺の全身を切り刻んでいく。
「イッセーさん!?」
「ぐっ、おらぁ!!」
俺はナイフを放つがGTロボはそれを受け止めた。
『ミキサーパンチ!!』
回転したGTロボの腕が俺の腹部に深々と刺さった。
「がはぁ!?」
『ドウヤラココマデノヨウダナ。進化ハ無シダ』
GTロボは俺の腹から腕を引き抜くと顔を開いてレーザーを放とうとする。くそっ、体が動かない……
「俺は、死ぬわけには……」
『サラバ、美食屋イッセー!!』
GTロボが放ったレ-ザーは俺を肉の壁ごと吹き飛ばした。どこまで飛ばされたかは分からないが自分が死の淵に立っていることだけは理解できた。
(くそっ……俺は負けちまったのか……小猫ちゃんやアーシア、皆とジュエルミートを食うって約束したのに情けねえ……)
体はもう動かねえ。意識が今にも消えそうだ……これが死ぬって事なのか……
(……ごめんな、小猫……ちゃ……ん……ア……シア……)
「イッセー先輩、頑張ってください……!」
「イッセーさん、私、信じています……」
……っ!?今、小猫ちゃんとアーシアの声が聞こえた……!
「お、俺は……死ねない……死ぬわけにいくか……!!」
前までは野生の戦いで死ぬならそれも自然の摂理だと思っていた、でも俺にはもう死ねない理由が出来た。あの子たちを守るためにもここで死ぬわけにはいかねえ……
「諦めるもんか……俺は……生きる……!」
這ってでも動こうと口や鼻に溜まった血を出して大きく息を吸い込んだ。するとすぐ側で芳しい香りが俺の鼻に入ってきた。
「この匂いは……?」
ゆっくりと目を開けるとそこには光輝く肉の塊がぶら下がっていた。
「あれは、ジュエルミート……!?」
それを見た瞬間、さっきまで動かなかった体に力が入る。汗も血液も全て枯渇したはずの俺の口から涎が出てきた。瀕死の重傷のはずなのにそれが食べたくて仕方がねえ。俺は立ち上がるとフラフラとまるで光に誘われるようにジュエルミートに近づいていった。
う、美しい……サニー兄じゃねえがそう思っちまう。工芸品を思わせるような霜降り模様、滴る肉汁はまるで砂金のようだ……そして何よりも香り。高級フレグランス顔負けの気品あふれる芳醇さと本能を撃ち抜くような濃厚で原始的な肉の香りだ……
「この世の全ての食材に感謝を込めて、いただきます……!」
俺はジュエルミートの一部にナイフを当てて肉をはぎ取った。そしてそれを口に含みゆっくりと噛んでいく。なんてしっとりとした触感なんだ、柔らかくていつまでも噛んでいたくなるような感触なのに肉汁は止まる事を知らねえ……!!
「うめぇ、美味すぎる……!!」
俺は今度は直接ジュエルミートに噛みついて味わう。さっきまでとは違い今度は砂肝を噛んだような豪快な歯ごたえに肉汁の旨味とコクが口いっぱいに広がっていった。
「たまらねぇ……たまらねぇ!!」
涙を流しながらジュエルミートを食う俺の身体が光り始めた。
『な、なんだ?イッセーの身体の中にあるグルメ細胞と神器が混ざっていく?……凄い力だ、今ならあれが出来るかも知れん。イッセー!!』
「ああ、いくぞドライグ!!」
俺は赤龍帝の籠手を出して大きく頭上に突き上げた。
「禁手!!」
『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!!!』
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side:アーシア
「イ、イッセーさん……!!」
イッセーさんがGTロボから放たれたレーザーをまともに喰らい、肉の壁を突き破り吹き飛んでしまいました。
『……少シハ期待シタガコノ程度ダッタカ。残念ダ』
「あ、ああ……」
GTロボが私の傍に近づいてリンさんを見ると首を曲げた。
『ハテ、サッキ始末シタハズダガ傷ガ治ッテイル……?ソウカ。オ前ノ神器ノ力デ治シタノカ』
「えっ……?」
私はGTロボが神器と言った事に驚きを隠せませんでした。どうして私たちの世界の神器をこっちの世界の人が知っているんでしょうか?
「リ、リンさんたちはやらせません!」
私は勝ち目がないことは理解していましたがリンさんたちを守るためにGTロボの前に立ちふさがりました。
『止メテオケ、オ前ナド相手ニモナラン』
「そ、そんなことは分かっています!それでも私は逃げたりしません!」
『……フン』
「きゃあっ!?」
GTロボに蹴飛ばされた私は地面に倒れてしまいました。い、痛いです……
『オヤ、コレハ……』
GTロボは自分の足元に転がってきた包丁を興味深そうに見ていました。あれは小猫ちゃんから預かった大事な物……!
「返してください!それは私の大切な仲間から預かったものなんです!」
『イイ包丁ダ、名ノアル料理人ハ包丁ヲ見レバ分カルガオ前ノ仲間ニコレ程ノ包丁ヲ持ツ者ガイタノカ。興味深イナ』
「返してください!」
私はGTロボに飛び掛かりましたがGTロボは軽く避けてしまいました。
「うぅ……」
『……フム、小娘。一ツ取引ヲシナイカ?』
「と、取引……?」
『ソウダ、コノ包丁ヲ黙ッテ俺ニ譲ルナラオ前ハ見逃シテヤロウ。ドウダ、イイ取引ジャナイカ?』
「……」
『サア、答エヲ聞コウカ?』
「お断りです」
私はGTロボからの問いにきっぱりと答えました。
『……死ニ急グノカ?愚カナ選択ダゾ』
「死ぬのなんて怖くはありません!私だって覚悟をしてここに来たんです!それを返してください!!」
その瞬間、GTロボから凄まじい殺気が私に送られました。気が狂い心臓が止まってしまいそうな程の恐怖に襲われても私はGTロボを睨み続けました。
『コレハ驚イタ、覚悟ハ本物カ……』
「そう、覚悟が無いのは貴様だけだ。GTロボ……」
『ッ!?』
……ああ、やっぱり来てくれたんですね。この声を聴くだけで心から安心します。
「イッセーさん!!」
私は声がした方に視線を向けるとそこにいたのは赤い鎧を纏った人でした。でも声や雰囲気は私が知っているイッセーさんそのものでしたので直に分かりました。
「イッセーさん、その姿は……?」
「遅くなってごめんな、アーシア。危険だからリン姉たちの元に下がっていてくれ」
「は、はい!」
GTロボはイッセーさんに集中しているからなのか直に包丁を取り返すことが出来ました。私は包丁を取り返すと急いでリンさんとティナさんの元に向かいました。
「遅くなって悪かったな、GTロボ」
『貴様、生キテイタノカ。イヤ、ソレヨリモソノ姿ハ……』
「圧覚超過を解除しろ。打撃の信号を全て通すんだ、お前も死の覚悟を背負ってここに立て!」
『……イイダロウ』
イッセーさんはGTロボの前に立って睨みあいを始めました。
『オ望ミ通リ圧覚超過ハ解除シタ。コレデ打撃ノダメージハ100%俺ニ伝ワル』
「……名を教えてくれないか?」
『ソウイエバ名乗ッテハイナカッタナ。俺ノ名ハヴァーリダ』
「ヴァーリ……お前のその余裕はGTロボではお前の実力を引き出すことが出来ない強者故のものか?」
『自分デ言ウノモナンダガGTロボハ俺カラスレバ足手マトイデシカナイ。ソレニ圧覚超過ハ無イ方ガイイ、オ前ノ実力ガ直ニ感ジ取レルカラナ』
「そうか、ならたっぷりと味わえ。進化した俺の力を……」
イッセーさんとGTロボはお互いに構えると暫く硬直したように止まっていました。相手の出方を見ているのでしょうか?
『ミキサーパンチ!!』
最初に動いたのはGTロボでした。GTロボは腕を高速で回転させるとイッセーさんのお腹に強烈なパンチを放ちました。
『……ッ!?硬イ!傷スラツケラレントハ……!!』
GTロボが放った攻撃はイッセーさんを纏っている鎧に弾かれました。イッセーさんは弾いたGTロボの腕を掴むと勢いよく手刀を落としました。
「ナイフ!!」
『グガァ……ッ!』
GTロボの腕にナイフが当たると凄まじい金属音が辺りに響きました。たった一撃でGTロボの腕の一部が千切れてケーブルや機械が見えてしまうほどのダメージを与えました。
「ナイフ!ナイフ!ナァァイフ!!」
休む暇も与えずイッセーさんは連続してナイフを当てていきます。そして最後に渾身のナイフを当ててGTロボの腕をもぎ取ってしまいました。
『……ハッ』
GTロボの顔が開いてイッセーさんにレーザーを放とうとしました。でもイッセーさんはレーザーが放たれる前にフォークを開いた顔の内部に放ちレーザーを発射する部分を破壊しました。
「フォーク!!」
イッセーさんはなんと両手でフォークを放ちGTロボの全身に喰らわせました。さっきまでよりも遥かに威力が高くなったフォークはGTロボのボディに風穴を開けました。
『……ピーラー』
「遅ぇよ!!」
GTロボが攻撃を放ってくる前にイッセーさんが釘パンチを当てました。ボディを大きく曲げながらもGTロボは釘パンチの衝撃を受け流しました。
『……ココマデノヨウダナ』
でもGTロボは攻撃もしようとしないで止まってしまいました。何故ならばGTロボの目の前には既に拳を構えたイッセーさんが立っていたからです。
『マサカ『禁手』ニ至ルトハナ。体ノ細胞モ進化シテイルトコロヲ見ルトジュエルミートヲ食ベタノカ』
「お前、何者だ?神器を知っているのか?」
『俺モ食ベテミタカッタガソレハ次ノ機会ニシヨウ』
イッセーさんは黒いGTロボの操縦者が神器の事を話したので何者かと質問しましたが相手はイッセーさんの質問には答えませんでした。
『マタ会オウ、イッセー。今度ハ生身デナ』
「……ああ」
イッセーさんはGTロボの問いに頷くと拳をGTロボに叩きつけました。
「10連!釘パンチ!!」
イッセーさんの放った10連釘パンチを受けたGTロボはボディにヒビを入れながら辺りを跳ね回ります、そして……
「ごちそうさまでした」
イッセーさんが手を合わせるとGTロボは空中でバラバラに吹っ飛んでしまいました。イッセーさんは戦闘が終わると赤い鎧を消して私の方に駆け寄ってきました。
「アーシア!」
「イッセーさん!」
私は感極まってイッセーさんの胸に飛び込んでしまいました。
「イッセーさん!私、信じていました!イッセーさんは必ず来てくれるって……」
「怖い思いをさせちまってごめんな、アーシア」
「怖くなんてありませんでした、だって私にはイッセーさんがいますから……」
「アーシア……」
イッセーさんは私の顔に手を添えると顔を近づけてキスをしてくれました。イッセーさんの温もりを感じながら暫くお互いの唇の感触を感じあっていました。
「……ぷはぁ。イッセーさん、大胆です……」
「ごめんな、なんか急にしたくなって……そうだ、リン姉は?」
「リンさんの傷はもう塞ぎました。ティナさんは気絶しているだけで命に別状はありません」
「そうか、二人を守ってくれたんだな。ありがとう、アーシア」
「えへへ……」
その時でした、マンモスさんの体内に強い風が吹き出しました。
「おお、マンモスの奴め、いいタイミングだ」
「イッセーさん、これは……」
「マンモスが俺たちを吐き出そうとしているのさ……っと忘れてた、あれも一緒に持って帰らねえとな」
「あれ?」
イッセーさんはマンモスさんの体内の奥に行くと大きなお肉を持ってきました。
「イッセーさん、それってもしかしてジュエルミートですか?」
「ああ、こいつを食ったお陰で『禁手』に至れたんだ」
「さっきの鎧姿ですね。とってもかっこよかったです」
「ありがとうな。さて、俺は二人を運ぶからアーシアは背中に捕まってくれ」
「分かりました!」
私はイッセーさんの背中にしがみ付くとイッセーさんはリンさんとティナさんを担いでジュエルミートを持ったまま風にのって外に向かいました。暫くすると日の光が見えて私たちは外に放り出されました。
「イッセー先輩!アーシアさん!」
「小猫ちゃん、皆さん!」
外には小猫ちゃんたちがいて私たちを見つけると悪魔の羽根を生やしてこちらに飛んできました。見るとサニーさんもいたので無事にマンモスさんから脱出出来ていたようです。
「先輩!!アーシアさん!!」
「小猫ちゃん、祐斗、俺はいいから二人を頼む!」
「うん、任せて!」
イッセーさんはリンさんとティナさんを小猫ちゃんと祐斗さんに預けるとサニーさんに話しかけました。
「サニー兄!クッションを頼む!」
「よっしゃ!最高に優しくキャッチしてやるぜ!」
サニーさんが髪ネットを使って私とジュエルミートをキャッチしてくれましたがイッセーさんだけが落ちてしまいました。
「いってー!?おい、サニー兄!!俺も優しくキャッチしろよ!!」
「すげぇ、これがジュエルミート……なんて美しいんだ……」
「いや聞けよ!!」
イッセーさんはサニーさんと喧嘩を始めてしまいました。私はサニーさんの髪ネットにぶら下がったまま降りられなかったんですがココさんが下ろしてくれました。
「まったくあの二人は……大丈夫かい、アーシアちゃん?」
「はい、下ろしてくださってありがとうございます。あ、そうだ!ココさん、リンさんがGTロボにお腹を貫かれちゃったんです!私が傷を塞ぎましたが大丈夫でしょうか?」
「リンちゃんからは死相は見えない、今キッスが研究所から医療チームを呼んでいるから安心してくれ」
「そうですか、良かった……」
「それよりも僕としては君たちに何があったのか知りたい。僅かの間だけど誰かの電磁波が途絶えたから心配したんだ」
「分かりました、私が知っていることを全て話します」
私はマンモスさんの体内で何があったのかをココさんに話しました。
「……そうか、通りでイッセーの電磁波がさっきよりも強くなっていると思ったよ。イッセーは死相を乗り越えて死の淵から進化して戻ってきたんだ」
「はい、イッセーさんはすっごく強くなっていました!とってもかっこよかったです!」
私とココさんが話しているとイッセーさんとサニーさんがこっちに向かって歩いてきました。
「よう、アル。イッセーから聞いたぜ、お前がリンを救ってくれたんだってな」
「いえそんな……私もお役に立ててよかったです」
「本当にありがとうよ。あんなじゃじゃ馬でもたった一人の家族だからな、心から感謝してるぜ」
「ふふっ、そう言って貰えると嬉しいです」
サニーさんに頭を撫でられているとイッセーさんが何か不安そうな表情を浮かべているのが目に映りました。
「イッセーさん、どうかしたんですか?」
「あ、いやテリーがどうなったか心配でな」
「そういえばテリーちゃんは敵を足止めしに別れたんですよね」
「ああ、だがあのGTロボが来たってことはテリーはもう……」
「先輩!あれを見てください!」
上空にいた小猫ちゃんが何かを発見したようでそちらを見てみると大きな猛獣さんに乗ったテリーちゃんの姿が見えました。
「テリー!無事だったんだな!」
「バウッ!」
テリーちゃんは猛獣さんから降りるとイッセーさんに駆け寄りました。体はボロボロでしたが無事でいてくれて良かったです。
「ていうかテリー、お前ってばオブサウルスをしもべにしたのか!?」
「うわっ!なんだコイツ!キモー!」
この子はオブサウルスっていうんですね。しもべとはよく分かりませんがテリーちゃんのお友達なんでしょうか?
「皆、向こうからリーガルマンモスの子供とヘリコプターが来てるよ!」
「キッスが誘導してきてくれたんだね」
祐斗さんが指を刺した方角からリーガルマンモスの子供がこっちに向かっているのが見えました。
「良かった。これで親マンモスさんも安心ですね」
「ああ、本当に感謝しないといけないな。ありがとう、リーガルマンモス」
私とイッセーさんは親マンモスさんに感謝の印として頭を下げましたが親マンモスさんは前足を上げると私たちを踏みつぶそうと……ってええっ!?
「イッセーさん!!親マンモスさんご立腹のようです!!」
「うおォォォ!?コイツなんで怒ってんだ!?」
「そりゃ自分の子供誘拐されるわ、体内荒らされるわなんてされたら怒りますよ……」
「うわぁぁぁ!!イッセー君!部長や朱乃さんたちを運ぶの手伝ってー!」
「サニー、フライ返しだ!!」
「いやここはお前の毒の出番だろうが!!」
「と、とにかく逃げるぞ――――――っ!!!」
私たちは大慌てでその場を逃げるように立ち去りました。でも今回の旅も楽しかったです。後はジュエルミートを実食するだけですね。
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side:??
イッセーたちがリーガルマンモスから逃げている頃、研究所ではマンサム所長が誰かと会話をしていた。
「……そうか、イッセーたちはジュエルミートを捕獲できたか」
「ええ、かなりの傷を負ったようですが全員無事にこちらに向かっています」
マンサム所長に話しかけていたのは片目を瞑った男性だった。彼の名は茂松、IGO副会長を務める男で今回はある目的のために第1ビオトープ研究所に訪れていた。
「……ふむ、この酒は中々に美味いな」
「『ガラナウナギ』の焼酎漬けです。丸二年漬け込んでいます。アルコール度数65%。私の一押しです」
「虎の睾丸に似たクセのある味だ。それにわずかな薬草の苦み……全身の毛穴が一気に開き体が温まってきた、まるで漢方薬だ。うん、美味い」
「何故ゼブラの出所許可を出さなかったのですか?茂さん」
「あの問題児をそう簡単に出す訳にもいかんだろう。逮捕を決断したグラス局長の面子もある」
マンサム所長が話したゼブラとは四天王最後の一人であり実力は四天王内でも最強と言われている。だが性格に難があるうえ問題ばかり起こしたため今は刑務所に入れられているらしい。
「ゼブラがいればマンモスの捕獲もGTロボとの戦いも楽だったと思いますがなぁ」
「まあそう言うな、結果的にはイッセーたちがやってくれた。問題なのは自爆していないGTロボがあるということだ」
「……奴らが取り返しに来ると?」
「可能性は高い。恐らくは副料理長レベルの奴が来るだろう」
「となると来るとすれば『ヴァーリ』か『トミーロッド』かのどちら……はぁ、できれば来てほしくありませんな」
「どちらにせよ、後は俺たちの仕事だ」
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side:アーシア
研究所に戻った私たちは治療をしてもらい現在は研究所の屋上でジュエルミートが出てくるのを待っています。
「おまたせいたしました。『ジュエルミート』盛りでございます」
ジュエルミートが出てきた瞬間、辺りは夜で真っ暗なのにも関わらずにまるで昼間のような明るさになりました。
「うっひゃあ!来たァあ!!」
「こ、これがジュエルミート……!」
「なんて美しいお肉なんでしょう……」
「じゅるる……とってもいい匂いです」
「小猫ちゃん、よだれ出てるよ……でもこの食材を前にしたら無理もないよね」
「キャー♡ステキー♡」
「何て輝きだ……」
「う…う…(美しすぎて声が出ねえ……!!)」
「皆さん、見てください!これが古代の食宝ジュエルミートです……ってカメラ壊れてるしー!!」
上からイッセーさん、リアスさん、朱乃さん、小猫ちゃん、祐斗さん、リンさん、ココさん、サニーさん、ティナさんが目を輝かせて感想を言いました。
「さあ、皆!ジュエルミートを頂こうじゃねえか!!」
「「「おおっ―――――――――っ!!!」」」
私たちは手を合わせると「いただきます」と言いさっそくジュエルミートを頂くことにしました。
「はうぅ……なんて優しい光なんでしょうか」
ナイフで肉を切るとまるで肉汁が花火のように輝きながら吹き上がりました。
「あむ……ん~!おいひぃれふぅ!」
凄いです、見た目はこんなにも輝かしいのに飾り気のないお肉の旨味が口一杯に広がっていきます……あれ?触感が変わりました。さっきまで柔らかかったのに今はコリコリとした触感になりました。噛むたびに肉汁が溢れてきますがあっさりとしていて全然しつこくありません。
「ん……」
ゴクリとお肉を飲み込むと身体から光が出てきました。まるで細胞の一つ一つが喜んでいるみたいです。
「あむ、んん!?これは肝臓だ!レバ刺しの触感になった、でもクセや匂いは全くない!クリーミーな味わいだぜ!」
「あら、これはバラ肉かしら?お肉と脂の層が何重にも重なってそれが口の中でほどけるように旨味が溢れてきますわ」
「あ、サーロインかな?口に入れた途端に溶けてしまった、でもなめらかで全然しつこくない。凄く美味しいよ」
「このプリプリはホルモンでしょうか?まったく臭くないししつこくもないです!ああ、ご飯が欲しくなっちゃいます」
「そう言うと思って『極楽米』を用意しておいたぜ!!」
「ッ!?イッセー先輩、愛してますぅぅぅ♡」
色んなお肉の味や部位、そして触感まで楽しめてしまうなんてジュエルミートはまるでお肉のカーニバルみたいです。
「グワゥ!!」
「おお、テリーも美味いって思うだろ?」
「カァー!!」
「キッスも気に入ったようだね」
「バルァァァ!!」
「あら、オブちゃんも食べますか?」
テリーちゃんもキッスちゃんも美味しそうにジュエルミートを食べています。でも何でオブちゃんだけ朱乃さんから貰っているんでしょうか?
「ふぅ……こりゃ決まりだな」
ミネラルウォーターを飲んだイッセーさんが何かを呟きました。
「何が決まったんだ?イッセー」
「ん?ああ……ってサニー兄!めっちゃ輝いているぞ!?」
サニーさんはこの中でも一番光り輝いていました。
「これは……どうやらジュエルミートはサニーと相性が良かったようだ。細胞が一番進化している」
「まあな。んでイッセー、何が決まったって?」
「これだけの肉だ。俺のフルコースにいれてもいいかなって」
「イッセーさん、それって……!!」
「やったじゃない、イッセー!!」
「とうとう肉料理が埋まりますのね!!」
「イッセー先輩のフルコースがまた埋まるんですね!!」
私たちは全員でイッセーさんのフルコースの肉料理が埋まったことに喜んで「ちょっと待てーい!!」……ふえっ?サニーさん?
「なんだよ、サニー兄。今いい所だったんだぞ」
「なんだよじゃねーよ!イッセー、よーく俺を見てみろよ」
「うん?……めっちゃ光ってるな」
「だろう?こりゃジュエルミートは俺を選んだって事じゃないか?」
「選んだって……まさかサニー兄!?」
「ああ、こいつは俺のメインディッシュに入れる」
え、ええっ!?サニーさんもフルコースにジュエルミートを入れたいんですか?
「何でサニー兄のメインなんだよ!意味わかんねーし!!」
「俺が一番光ってるからに決まってんじゃねえか!!」
「光ってるのなんか関係ねーし!!」
「大体ジュエルミートを捕獲できたのは俺のお陰じゃなくね?少なくとも俺が倒したGTロボが一番強かったし!!」
「んなわきゃねぇだろうが!俺が倒したGTロボが一番ヤバかったぞ!!」
あ、あわわ!イッセーさんとサニーさんが喧嘩しだしちゃいましたぁ!!
「ね、ねえ二人とも?二人のフルコースにジュエルミートを入れたらいいんじゃないかしら?」
「それは駄目ですね」
「ならん!」
「えぇ!?どうしてなの?」
「いや、身内とフルコース被るのなんか嫌だからです」
「えぇ~……」
リアスさんがフォローに入りましたが二人はどちらも譲りませんでした。
「二人のフルコースにジュエルミートを入れたらいいじゃないの!」
「いや、ここは俺のプライドにかけて肉料理に!!」
「いや、俺のメインだ!!」
「あわわ、喧嘩は駄目ですよ~」
リアスさんが涙目で二人を止めようとしますがそこに小猫ちゃんがイッセーさんの傍にいきました。
「私はイッセー先輩の肉料理に一票入れますね♡」
「流石小猫ちゃんだぜ!どうだ、サニー兄!これで俺が一票だぜ!」
「おい、猫!お前色々と助けてやったじゃねえか!アルとユウは俺の味方だよな?」
「わ、私はそのイッセーさんがいいかと……」
「これは難しい選択だね……」
「なら私もイッセー君に……♡」
「こじれるから止めておきなさい……」
「四天王のフルコース争い……美味しいニュースね」
小猫ちゃんの発言でサニーさんは私と祐斗さんに声をかけてきたり朱乃さんがイッセーさんに抱き着こうとしてそれをココさんに止められたりと大騒ぎになりましたが結局はサニーさんのメインディッシュに決まりました。
「ちくしょう、あそこでグーを出しておけば……」
「よしよしです、イッセーさん」
後書き
リアスよ。ジュエルミートを手に入れてから3日が過ぎたんだけどテリーがご飯を食べないそうなの。このままじゃ死んでしまうかも知れないし何とかならないかしらね……えっ?人間界でグルメ界の食材を取れる場所があるですって?次回第31話『テリーのご飯はいずこへ?植物地獄、ウールジャングルに迎え!』で会いましょう。
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