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蒼穹のカンヘル

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十八枚目

「あそこに居るのはリリンの孫なのだろう?
ならば奴がまたここに現れる可能性がある。
ちょうどいいエサになるだろう」

俺はその言葉の意味を理解し…激昂した。

「ふざけんじゃねぇぞ!
ヴァーリを囮にしようってか!
ヴァーリはまだ十歳だぞ!
テメェらの都合で!女の子を泣かせる気か!」

サーゼクスの言葉…それは俺を怒らせるのに十分な物だった。

「そうだ」

とサーゼクスは感情を感じさせずに答えた。

「貴様ぁ!」

アクセル…心の中で唱え、雷光を放つ準備をし…

ピッシャァァァン!!

俺はサーゼクスに雷光を放つが消滅の魔力に無効化された。

「ちょ、ちょっと!落ち着いてよ少年!
サーゼクスちゃんも言い方を考えてよ!」

セラフォルーが口を挟むがコレは男同士の話し合いなんだよ!

「女は黙ってろ!セラフォルーレヴィアタン!」

「な!?」

「テメェは家族を囮にされて平気でいられるか!?
リアスグレモリーやミリキャスグレモリーを…グレイフィアルキフグスを囮にされて平気でいられるのか!
答えろ!サーゼクスグレモリー!」

俺の詰問にサーゼクスは答えられなかった。

「サーゼクスちゃん…」

「セラ…帰ろう…少年…済まなかった…その紙は…もしもの保険に持っていてくれ…」

そして二人は冥界へ転移していった。

『魔王にあれだけの口を叩くか…将来は大物だな』

『ああ、そうかよ』

母さん達の所へ向かう。

半壊した家…その一室に母さん達はいた。

「母さん…姉さん、ヴァーリ、奴は…追っ払ったよ…
途中で助けも来てくれたよ」

魔王二人を助けと呼ぶのは癪に触るが、事実なのでそう伝えた。

「篝…ごめんなさい…私の…私のせいであなたは…」

泣きながら謝る母さんを抱き締めようとして…やめた。

今の俺が抱き締めたら、母さんを傷付けてしまう。

「いいんだ、コレで。ほら、カッコいいでしょ?」

そう言いながら腕を見せる。

鱗に覆われた鎧のような銀の腕。

人間を傷付ける腕。

「かがりぃ…」

ヴァーリが抱き付いてきた。

「ヴァーリ、危ないぞ?俺には触らない方がいい?」

「ありがとう…あの人が来たとき。
とっても怖かった。
だから、篝が助けてくれた時、嬉しかった…
だから、篝は危なくないよ…とっても安心する」

ヴァーリの言葉は俺の心を少しだけ軽くしてくれた。

「ありがとう…ヴァーリ。俺も、お前を護れて嬉しいよ」

俺は、生まれてからの今日までを災厄から家族を守る為に費やした。

そして俺は今日、一つの災厄を退けた。

俺の二度目の生は間違っていなかったんだ。

境内に二つの魔方陣が現れた。

俺がよく知る感じがした。

魔でも聖でもなく…光。

その魔方陣から現れたのは父さんとアザゼルだった。

二人は半壊した家に驚くが直ぐ様こっちに向かって来た。

「無事か!朱璃!朱乃!篝!ヴァーリ!」

あぁ…父さん達が来てくれた。

「父さん……」

安堵感で力が抜けそうになった。

「篝!?その姿は!?」

はは…やっぱり驚くよね…

「おれ…まもったよ…母さんとヴァーリと姉さんを…まもったんだ」

視界が揺れた。

「あ……れ?」

崩れ落ちる俺を、父さんが抱き止めた。

「よくやった!よく…家族を護った!」

だめだよ…父さん…いま…おれにさわったら…けがするよ…

心ではそんな事を思ったが、父さんの言葉には応えたかった。

「うん…まもったよ…」

そして俺は意識を失った。
 
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