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奇麗な爪

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第一章

                奇麗な爪
 新深江友美の爪はいつも短い、ただその爪を見てある日友人の一人が友美にこんなことを言ってきた。
「友美ちゃん爪絶対に伸ばさないわね」
「ええ、爪を伸ばすことはね」
 どうしてもとだ、友美はその友人に答えた。
「私嫌いなの」
「そうみたいね」
「だってね」
 友美は友人にこう言った。
「伸ばしてるとペンとか書きにくいし」
「爪が引っ掛かって」
「それで家事してる時とか何か持った時にね」
 そうした何でもない時にというのだ。
「引っ掛けてね」
「はがれたりするから」
「そうなったら痛いと思うから」
 それでというのだ。
「私伸ばさないの」
「そうなのね」
「というか爪伸ばす人って」
 今度は友美から言ってきた、微妙な顔になって。
「怪我しないの?」
「どうかしらね」 
 見ればその友人も爪は短い、奇麗に切ってある。
「やっぱり何かと作業しにくいでしょ」
「そうよね、爪が長いと」
「部活でも何か持つじゃない」
「どんな部活でもね」
「そうした時にね」
 部活の準備等ごく有り触れた作業の時でもというのだ。
「本当にね」
「引っ掛けたりして」
「怪我するから」
 だからだというのだ、友人も。
「私も切ってるしね」
「そうでしょ、というか伸ばしてはがしたら」
 またこう言う友美だった。
「怖いからね」
「絶対になのね」
「私は伸ばさないわ」
 爪はというのだ、だからギャル風の派手な外見でも爪は伸ばさないのだった。だがある日登校の時電車に乗っている時に。
 たまたま隣に立っていた女の人の爪が見えた、その爪はかなり伸びていて奇麗に紅のマニキュアが塗られていた。
 その爪を見てだ、友美は学校に来てからクラスの友人達にその人のマニキュアの話をしたのだった。
 そうしてだ、こう言った。
「爪伸ばしてマニキュア塗ってたけれど」
「そりゃそうした人もいるでしょ」
「ファッションでね」
「中にはネイルアートする人もいるし」
「それ位普通でしょ」
「ああした人見る度に思うけれど」
 正確に言えばその人の爪である。
「はがしたりしないかしら。それにマニキュア塗ってもね」
「マニキュア?」
「マニキュアがどうかしたの?」
「色がはがれたりしない?あと乾くまで何も出来ないし」
 爪に塗ってからというのだ。
「そうなるから」
「大変じゃないか」
「そう言うのね」
「ええ、爪伸ばして塗って」
 そこまでしてというのだ。
「するものかしら」
「だからそれは人それぞれでしょ」
「塗る人も塗らない人もね」
「人好き好きで」
「爪伸ばしたい人もいて」
「マニキュア塗りたい人もいるでしょ」
「そうなのね。どうしてもね」
 友美は首を捻ってこうも言った。
「私にはね」
「縁がないことっていうのね」
「爪を伸ばしたりマニキュアを塗ることは」
「どうしても」
「ええ」
 その通りだというのだ。 
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