おぢばにおかえり
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92部分:第十三話 詰所へその六
第十三話 詰所へその六
「ちっちもその辺りはよく見ていてね。私は鈍いからそれで気付かなかったけれど」
「先輩は。そんな」
「私って駄目な人間よ」
急に寂しい笑みになられました。
「正直言って。意地悪だし」
「そんな。先輩は」
「嫌いな相手はとことんまで意地悪して虐めてだったし。だから」
「だから?」
「高校に入ってそのいんねんを見せて頂いたのよ」
商店街をまだ歩き続けます。二度目の信号も越えました。
「色々とね」
「そうだったんですか」
「皆。ここで見せて頂くのよ」
先輩はじっと前を見ておられます。そこに見ておられるのは何なのかしらと思うのですが先輩にしかわからないことだと思います。
「おぢばでね」
「私もですよね」
「勿論よ。美紀だってそうだったし」
「長池先輩も」
「一年の時。大変だったから」
また長池先輩のお話になりました。
「最初ね。付き合っていた男の子と喧嘩してね」
「はい」
「それで別れて。クラスで本当に大泣きして」
「先輩がですか」
「皆で必死に慰めたけれどそれでも泣き止んでくれなくて」
本当に凄かったみたいです。
「それで早退して寮でも泣いてばかりで。誰もどうしようもなかったのよ」
「あんな奇麗な人なのに」
「あのね、ちっち」
先輩の声が優しいですけれどとても悲しいものになりました。
「人って外見じゃないのよ」
「それはわかってるつもりですけれど」
「心なのよ」
先輩は私の顔を見てじっと言うのでした。
「大切なのは」
「ですよね」
「美紀って。実はね」
それでまた長池先輩のお話になります。
「すっごくきついところがあってね」
「それよく同級生から言われますけれど」
「そうでしょ?怖いとか言われない?」
「はい、そうです」
本当にその通りです。何で皆そう言うのかわからないですけれど。
「それ、本当によくわからないですけれど」
「優しいことは優しいのよ」
それははっきりと頷くことができます。長池先輩はとても優しい方です。
「けれどね。ちょっとしたことで怒って」
「そうなんですか」
「怒ったらまたきつくてその時間も長いのよ」
何か先輩の意外な一面です。そうしたところもあったんだと心の中で驚いていました。それでもその話を聞かずにはいられませんでした。
「それで一年の頃も」
「そうしたことになったんですね」
「他にもあったし」
「色々あったんですね」
「それは私もだけれど」
事情はかなり複雑みたいです。高井先輩も関わっておられたなんて。
「私も一緒に。そうしたことになったりしたわ」
「先輩まで」
「後になって気付くのよ。いつもね」
また悲しい顔になられます。とても奇麗な方なのにそんな顔をされたらって思うんですけれど。
「何でもそうだけれど」
「何でもですか」
「だからね、ちっち」
これ以上はないって位優しい声で私に語り掛けてくれました。
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