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ロボスの娘で行ってみよう!

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第26話 第5次イゼルローン要塞攻略戦会議


イゼルローン要塞攻撃の前の話です。
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第26話 第5次イゼルローン要塞攻略戦会議

宇宙暦792年1月6日

■自由惑星同盟 アルレスハイム星系

790年より同盟軍ではティアマト、ヴァンフリート、アルレスハイム星系を正規艦隊で順次ローテーションを持って哨戒活動を行っていた。練度を保つ為に第一艦隊から第十二艦隊まで全艦隊がローテーションを組んで哨戒するのである。

それは、近頃帝国軍が数千隻の艦隊をイゼルローン要塞より同盟側宙域に侵攻させているのが判ったからである。その為千隻程度の辺境警備艦隊ぐらいでは歯が立たないために、正規艦隊による演習目的の哨戒活動が許可されたのである。

シャンプール星系を泊地として利用し順次哨戒を行うのである。1クールは四ヶ月で790年1月から第一艦隊から始めて、792年1月現在は第九艦隊がローテーションにはいっている。

艦隊がアルレスハイム星系に差し掛かったとき、小惑星帯から奇襲攻撃を仕掛けようとしていたカイザーリング艦隊がサイオキシン麻薬の影響で狂乱の末無謀な攻撃を仕掛けた来た。結果はカイザーリング艦隊は実に6割もの損耗率をうけ大敗に終わり。アルレスハイム星域会戦と呼ばれる戦いは幕を閉じた。

宇宙暦792年1月7日 

■自由惑星同盟首都星ハイネセン 統合作戦本部

アルレスハイムでの勝利が伝えられると、本部内は歓声に包まれた。実に3年ぶりの勝利である。只予定の行動であったリーファにしてみれば、薬中艦隊なんぞに後れを取る事がないように、確り哨戒作戦案を作り配布してあるのであるから、なんの事もない勝利であった。

それよりも、カプチェランカ基地の再建が遅れた結果、ラインハルト捕殺の最大のチャンスが無くなり、カール・マチウス・フォン・フォルゲンの生死も判らない状態あった。

更に頭を悩ませているのが、最高評議会からのイゼルローン要塞攻略出兵案である。此は3年前の大敗以来低下してきた支持率のアップさせるためだけに、最高評議会で決まったモノであるが、既に決定したために従わざるを得ない状態であったため、本部長から作戦案の提出を求められていた。

攻撃時期は792年5月からか、あと5ヶ月弱しかないじゃないか。もう少し早く決めるなら決めて欲しいモノだ!実質移動時間を計算したら4ヶ月弱か、後方勤務本部とすりあわせも必要だし困ったものだ。宇宙艦隊司令部とも話し合いが必要だし。

「イブリン、ちょっと来て」
「なんでしょうか?」
「ハイネセンからシャンプール星系までの最短ルートと時間を計算して」
「了解しました」

「スーン、ちょっと来て」
「少佐お呼びですか?」
「同盟軍と星間パトロールとかから廃棄寸前の老朽艦や修理不能損傷艦がどれだけ集められるか調べて」

「老朽艦と損傷艦ですか?」
「そう、廃艦でも何でも良いから出来るだけ多く、あと旗艦級戦艦の廃艦もお願い」
「了解しました」

そのやり取りを本部長以下部員が興味深そうに見ている。
本部長がリーファの所へやって来て訪ねた。
「少佐、今のも作戦案の一環かね?」

「そうです本部長、此が作戦案ですが、完璧を期する為に、宇宙艦隊司令長官との摺り合わせをお願いしたいのですが」
「少佐、判った日程を調整しよう」
「よろしくお願いします」

■後方勤務本部

アンドリュー・フォークが兵站課で腐っていた、自らが天才と自称するナルシストである彼がこんな薄暗い部屋で黙々と書類整理をしなければならないなど我慢の限界であった。しかし彼にも光明が現れたと勘違いしたのである。それはサンフォード議員から聞いた第5次イゼルローン要塞攻略作戦が最高評議会で可決されたとの事であった。

彼は此こそ自分の全知全能をかける仕事だと勝手に考えて、本来の仕事をそっちのけで事細かく作戦案を作成して、後方勤務本部長室へ持参したのである。それは完全に職責を無視した行為であったが、受け付けた副官の中佐がフォークの中学校の先輩であったために受け取ったあとで、本部長に作戦案として提示されたのであった。

宇宙暦792年1月9日

■自由惑星同盟首都星ハイネセン 統合作戦本部

この日、統合作戦本部及び宇宙艦隊司令部及び後方勤務本部と各艦隊司令官と参謀長が集結して第5次イゼルローン要塞攻略作戦に対する作戦会議が開かれた。ローテーション中の第九艦隊司令官は参加できなかったが、それは仕方のない事であった。

統合作戦本部長が作戦について話し始める。
「さて、今回のイゼルローン要塞攻略作戦だが、統合作戦本部と宇宙艦総司令部と何故か後方勤務本部からも作戦案が来ているが、後方勤務本部長はご存じなのかね?」
「我々も対案が必要と思い出したのだが、いけなかったかね?」

「そうは、言っていないが。この作戦案を読めば判るが、あまりにも投機的で希望的観測に満ちあふれ、すべてが同盟軍に有利になる状態で帝国軍がすべて不利になる状況を考えて書かれているのだが、しかも物資の補給計画が後方勤務本部が作ったにしては、どんぶり勘定で、いい加減すぎるのだが、本部長はこの案を読んだのね?」

そう言われて後方勤務本部長はしどろもどろに成った。
「部下が良いと言ってきたから、持ってきたのであって・・・・・」
「後方勤務本部長には悪いが、この案は却下する」

「仕方が無かろう、元々自分の案では無いから」
「失礼ですがどなたの案でしょうか?」
リーファとしては、誰が出してきたか大体想像は付くが取りあえずは聞いておく。

「アンドリュー・フォーク中尉だが」
フォークの名前を聞いた、シトレ宇宙艦隊司令長官が渋い顔で話し出す。
「後方勤務本部長。そのフォーク中尉は、士官学校でも教科書通りにしか作戦が立てられず、それゆえ作戦家としては無能だと、既にレッテルが貼られた男だ。デスクワークには力を発揮するのでそちらへ配属したのだが、まさか職責を無視するとは思わなかった」

それを聞いた、後方勤務本部長は納得したと頷いた。
それから統合作戦本部長が仕切り直した。
「宇宙艦隊総司令部からの作戦案はよくできているが説明をしてくれ」

その言葉にヤンとワイドボーンが立ち上がり説明を始める。
「今回の戦法はトールハンマーの射程距離ギリギリで機動を行い敵艦隊を引きずり出しますが、しかしそれ自体は囮です。その間に回廊の危険宙域ギリギリをミサイル艦で進行し要塞にミサイル攻撃を行い要塞の外壁の破壊を行います」

リーファレポートを読んでいた参謀達から、危険ではないかの声が上がる。
「ミサイル艦の防御は弱い、敵艦隊二千隻程度が攻撃してきただけで、作戦は瓦解するのでは無いか」
「その点におきましては、装甲の厚い戦艦を数百隻同行させれば良いと思います」

何故か今回のヤンとワイドボーンの作戦案と説明は精彩にかけるモノであった。
「宇宙艦隊の作戦案は判った、両名ともご苦労。続いて統合作戦本部案だが、ロボス少佐説明を」
「はっ、今回の作戦案は宇宙艦隊とほぼ同じD線上のワルツです」

その言葉に全員から同じなのかとの顔が見られたが、よく見ると一部の者は演技をしているだけであった。

結果的に第5次イゼルローン要塞攻略作戦は、D線上のワルツ案で行う事に決定した。
会議終了後にシトレ宇宙艦隊司令長官、エーデルガルト統合作戦本部長、ヤン、ワイドボーン、リーファの5人が居残り、密かに話していた。

「参加者全員をだますとは、人が悪いなロボス少佐は」
「本部長、司令長官、こうでもしないと、情報がもれる可能性が有りますから」
「今回は並行追撃も行いますが、最初の一歩はD線上のワルツをおこない、それ相応の対処を敵がしてきた場合、情報漏洩の可能性が有るという訳か」

「そうです、その為に情報部へ調査依頼をしていただいたのですから」
「それでグリーンヒル中将が太鼓判を押すバクダッシュ大尉か」
「ロボス少佐は士官学校時代から謀略の冴えは素晴らしかったからね」

「今回のイゼルローン要塞攻略作戦自体を囮に使うとは」
「ヤン、ワイドボーン両少佐にもご協力感謝しています」
「罠は張った、後は獲物が架かるのを待つだけか」

「そうなります、此所でスパイ網を潰しておけば後々に多いなる遺産となるでしょう」
「やるしかないですな、本部長」
「ああ、そうだな」

 
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