レーヴァティン
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第五十話 今度は南へその四
「神話や伝承にある限りはね」
「そういえばセイレーンって」
源三は彼が中学の時に読んだギリシア神話の本の知識から話した、そこにセイレーンのことも書かれていたのだ。
「ただ歌ってね」
「船乗りの人達をだよね」
「魅了して自分達の島に留まらせるだけで」
「悪意でやってないよね」
「そうした風には見えなかったよ」
彼が読んだ本を読む限りではだ。
「あの神話結構酷い悪人も出るけれど」
「サイコ殺人鬼みたいなのが出ているな」
正はギリシア神話の悪人達について現代風の表現で述べた。
「どうもな」
「そうだよね」
「何か洒落になっていない奴が多いな」
「殺し方も殺す理由もね」
「無茶苦茶な奴がな」
テーセウスが旅の途中で遭ってきた悪者達なりだ、そうした悪人達が何故かギリシア神話にはわりかしいる。
「普通に頭に血が登って殺す奴なりな」
「いるよね」
「そうしたのを見るとな」
「どうしてもだね」
「セイレーンなんてな」
魔物である筈の彼女達はというのだ。
「可愛いものだよな」
「そうだよね」
「普通の奴が衝動的にやらかす世界だからな」
怒りのあまり人を殺す、襲うなぞ日常的にあると言っていい。それは人だけでなくニンフや神も同じだ。
「それじゃあな」
「本当にね」
「セイレーンなんてな」
「可愛いものだよ」
源三もこう言った。
「本当にね、けれどね」
「それでもだよな」
「そう、人が川や湖を安全に進めないから」
「どうにかしないといけないか」
「ローレライもね」
彼等が起きている世界ではライン川にいたというこの妖精もというのだ。
「いたらね」
「その時はな」
「何とかしないといけないよ」
倒すなり立ち去ってもらってだ。
「どうしてもね」
「そうだよな」
「災害の様なものですね」
順一は達観した感じで仲間達に話した。
「そうしたモンスターは」
「災害でござるか」
「はい、災害は心がなく当然悪意もありませんね」
「それでもでござるな」
進太は順一のその言葉に頷いて話した。
「何とかしなければ」
「人は安全には暮らせません」
「だから何とかしなければならない」
「そしてそうしたモンスター達もです」
悪意がない彼等もというのだ、そうしたモンスター達も。
「人々の暮らしの為にです」
「何とかしなければならないでござるか」
「必要とあれば戦う倒すことも」
そうした手荒とも思える手段を用いてもというのだ。
「しなければならないこともです」
「有り得るでござるな」
「そうです」
「それが人間なんだろうな」
芳直は少し先を見る感じの目で話した。
「自分達の為にな」
「他の生きものを害する」
「そうなんだろ」
こう言うのだった。
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