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ランス ~another story~ IF

作者:じーくw
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第2.5話 クルック―と謎の男

 
前書き
~一言~
メチャ短いです…… ゴメンナサイ……
前話に入れようと思って忘れちゃってた奴です。


                           じーくw 

 


~自由都市西部の村~





 一人前になった息子エールの後ろ姿を見送る母親クルック―。
 戸惑いつつも、最初の一歩を踏みしめて向かっていくその背中を見て嬉しく、時には寂しく、そして 誇らしく思う。

「……行った様だな」

 そんなクルック―の傍らには1人の男の姿があった。まるで そこにいるのが当たり前の様に、極自然にクルック―の隣に佇んでいた。

「はい。行きましたね」

 先程までエールと2人きりだった筈。家には2人しかいなかった筈。なのにクルック―は別に驚いた様子は見せず、淡々としていた。元々そう言う感性に乏しいから、と言う理由もあるかもしれないが。

「あの子の齢を考えると まだ時期尚早と見るのが妥当だろう。……だが」
「ええ。何も心配はしていません。……あの子なら、きっとやってくれます。冒険を心から楽しんでくれる筈です」
「……ふふ。そうだな。間違いない」

 男が言う様に、まだエールの歳は非常に若い。数要る冒険者たちの中でも圧倒的に若い年齢だ。

 RA2年に生を受け今日の誕生日を迎えてまだ13歳。元服も迎えていない幼い少年だ。そんな少年が魔王退治の旅に出る……普通に考えたらありえないどころか無茶苦茶も良い所だと言えるが、勿論これには訳がある。
 様々な訳が……。その内容は後々明らかになっていくだろう。

「さて、久しぶりに来たんです。夕食でも一緒にどうでしょうか? エールがいなくなり、1人になってしまいましたので」
「ああ。そうしたいのはやまやまだが……互いに忙しい身、だろう?」
「はいそうですね。貴方にはまだする事がありましたね」
「その表情を見るに、判ってて訊いたみたいだな。……やれやれ。気持ちの良い程 変わってなくて安心した」

 男から綻ばせる笑み、それを見たクルックーは同じく笑みを漏らした。
 何よりも楽しさを感じられたから。彼の隣にいる事に対して。

「そうでしょうか。……以前、貴方も……いえ、厳密には少し違いますが。私の事を変わった、と言ってくれましたよ」
「……ん。表情に出やすくなった事か。そう言えばそう言う話をしていたな」
「はい。……私から言わせれば、あなたも随分と変わりました。特に口調とか」
「んー…… まだまだ色々と駄目だしはされるのだが、な。難しいものだ」

 ぽりぽり、と頭を掻く男。その姿をまた微笑ましそうに見るクルック―。

「そうですか。……私はより貴方の事を好きになったと思います」
「それは光栄だな。……ふふ。もし 今のを聞かれていたら、他の者たちの視線が集まりそうだ。いや 視線だけではなく、実力行使もありうるか」
「そうでしょうね。それ位は私にも判ります。あれは恒例でしたから」

 クルック―は一枚の写真を手に取った。
 沢山の人が集まった写真。2人の男を中心におき……、いや 1人の男が一番目立っていると言い直そう。そんな写真。とても古い写真。もう色褪せてきているのがよく判る。それでも思い出だけは色褪せない、と言う様にクルック―は微笑んだ。

「エールの冒険。この冒険の先に……この写真の様な光景がきっと待っています。私はとても楽しみにしています」
「………ふっ」

 男は、そっと何かを手に持ち、クルック―を横切った。

「もう行くのですか?」
「ああ。……クルック―。エールに楽しめと伝えただろう?」
「はい。思う存分楽しんでほしいと。世界にはもっともっと楽しい事があるのだと」
「私もその最中だ。……今、初めてこの世界を。この物語を楽しもうと思う。……申し訳ない者達もいるが、今は判ってもらいたい。時が来れば……償いはする」

 すっと、手に持ったそれを顔に装着。顔の上部半分が隠れるそれは、緑色のマスク。

「………ぷっ」
「……別に 笑う所ではないのだが」
「すみません。そればかりは いつ見ても慣れません」
「むぅ。……今結構辛辣な意見を述べられているが、私は気に入っている」
「はい。本人が良いのであれば、良いと思います」
「何だか少々引っかかるコメントだが、……まぁ 良い。()も…… いや 私も存分に楽しもう」

 男は、家の扉を開いた。
 風になびく漆黒のマント。そして 朱い帽子。凄く目立つ容姿。
 だが、それに気にする様子は全く見せず、軈てピントがずれる様に その身体がボヤケ ゆっくりと消えていく。

「また、会えますか?」
「あぁ。勿論だ。……あまり長く同じ場所に留まっていると、(自称)この世界の覇王に居場所がバレてしまうかもしれんから 長居は出来んがな」
「ふふ。それはそうかもしれませんね。……では、また」

 次の瞬間には 男の姿は完全に消え去っていた。
 
「ふふ。……あぁ、忘れてました。貴方に会った時聞こうと思っていた事を」

 クルック―は にこっ と笑みの質を上げて呟く。

「今の名乗ってる その名(・・・)は、誰が考えたのですか? と。……教えてくれるとは思いませんが」

 彼を見送った後に クルック―も行動を開始する。


「さて、久しぶりに忙しくなりそうです」
 
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