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おぢばにおかえり

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64部分:第十話 登校その五


第十話 登校その五

「そういう問題じゃないんじゃないの?」
「何か今日結構機嫌悪い?」
「悪くしたの誰よ」
 また彼女に言い返します。
「参拝前からあれこれって。言われていたら誰だってね」
「はらだちは駄目じゃない」
「わかってるわよ」
 おみちの言葉を聞くとどうしても黙ってしまいます。そこが辛いところです。
「わかっているけれどね」
「どうしてもってことかしら」
「そうよ、いつもいつも」
 学校の中は外に比べて少し暗いです。前にもお話しましたけれど下駄箱はなくてそのまま靴で入ります。だからお掃除の時は砂や土が目立ちます。
「これもさっき言ったけれどね」
「じゃあ今日はこれまでにしておくから」
「ずっとにしてよね」
 また怒った調子で言い返します。
「冗談じゃないから」
「わかったわよ。ところでちっち」
「今度は何なの?」
 言葉の調子が変わってきていました。それで私も落ち着いて尋ねます。
「今度の教義の授業だけれどね」
「ええ」
 彼女の言葉に応えます。
「何下り目だったかしら」
「ええと、確か」
 それを言われて自分の中で記憶を辿ります。
「三下り目だったかしら」
「じゃあ扇必要よね」
「そうね」
 ておどりには扇を使う場所もあります。この三下り目と四下り目、あと最後の十二下り目なんかです。はっぴで練習する時は帯に挟んで、月次祭の時は着物の中に入れています。それを出して使うんです。扇はおぢばのお店で売っています。教会にもあります。
「じゃあそれも借りないと」
「持って来ていないの?」
「教室に置いてたらいいけれど」
 また首を捻って言ってきました。
「どうかしら」
「あまり教室に置いておくのよくないわよ」
 ちょっと先生みたいなことを言ってしまいました。
「二部の人だって教室使うんだし」
「わかってるけれどね」
 天理高校は一部と二部があります。一部はお昼で二部は夜間です。どちらも天理高校生なんですけれど二部の人は夜間ですからお昼はお仕事があります。おぢばの中で色々なお仕事をされています。天理高校は一つじゃなかったりするんです。
「それでもついつい」
「ずぼらっていうの、それって」
「そう言うのならそう言っていいけれど」
 何か開き直ってきました。
「ものぐさなのは本当だし」
「東寮ってそういうの厳しい筈よね」
 何でも私が今いる東寮は軍隊より凄いそうです。実際に毎朝起きるのは早いですし色々と決まりごとも一杯あります。少なくともお家にいるのとは全然違います。学校にいる時にやっと一息つけるって位物凄い一面があったりします。話には色々と聞いていましたけれど。
「それでどうして」
「気を抜くところで抜かないと」
「それが学校ってこと?」
「他に何処があるのよ」
 逆にこう言われました。
「それにちっちだって大丈夫なの?」
「私?何で?」
「だってちっちの部屋の三年生の人って」
 彼女の顔が怪訝なものになってきました。そうして言うのは。
 
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