FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
ゼーラ
前書き
最近仕事が変わったせいでストレスが半端じゃない・・・おかげで暁にほとんど入れない・・・
つまり・・・全く手が進まないということだ!!←自信満々に言うな
ゴゴゴゴゴ
倒れていたメイビスが壁の崩れ落ちる音で目を覚ます。そこには先程までいたはずのカナの姿が見当たらない。
「カナ!!カナ!!どこですかー!?」
彼女の名前を叫びながら立ち上がる。その足取りはおぼつかず、フラフラと蛇行していた。
「う・・・まだ体が思うように動かない」
それでも彼女は姿の見えないカナのことを探すべく叫び続ける。彼女は先にギルドに戻ったのかと考え、そちらに向かうために指を鳴らし服を作り出す。
「大丈夫。魔法は使える・・・幻の服ですが・・・」
ヨロヨロとギルドへの階段を昇っていくメイビス。やっとの想いでたどり着いたギルド。だが、そこには人っ子一人いなかった。
「ギルドに誰もいない・・・」
先程の光で何かが起きたのかと分析しようと頭をフル回転させるメイビス。しかし、その思考は目の前にいたある男により止まってしまった。
「ゼレフ」
妖精の尻尾の旗の前に座り足を組んでいるその人物。なぜ彼がそこにいるのか、少女には理解できない。
「メイビス」
「ギルドのみんなは・・・あなたが・・・!?」
「いいや・・・僕じゃないよ」
ギルドにいたはずの仲間たちが全員いなくなっているのが、ゼレフの仕業だと考えたメイビスだったが、ゼレフはそれをすぐさま否定する。
「実を言うと僕も困惑しているんだ、この状況に」
「なぜあなたがここに・・・」
「なぜ君は生きているんだ・・・」
事情を飲み込めない二人のキーマン。メイビスは敵の脅威が目の前にいることに、冷や汗が止まらなかった。
シリルside
「なんだ・・・今の光は・・・」
突如周囲が光だして目を閉じていた俺たち。ようやく光が弱まったのを感じたので目を開いていくと・・・
「え・・・どこ?ここ・・・」
俺たちの目の前には広大な砂漠が広がっていた。
「どうしたの・・・シリル・・・」
「あれ?ここどこよ・・・」
「まだ眠いよ~・・・」
俺のすぐ近くにいたのは眠っていたウェンディ、シャルルセシリーの三人。しかし、彼女たちの他に人影が見えない。
「いや・・・あれ?みんなは?」
意味がわからず首を傾げていることしかできない。さっきまで隣にいたはずのグレイさんもラクサスさんも姿が見えず、困惑していることしかできない。
「ねぇ、これってどういうこと?」
「いや・・・俺にもさっぱり・・・」
目覚めたばかりで事情を飲み込めないウェンディがそう訴えてくるが、それに俺は返答することができなかった。
第三者side
木々が生い茂るその場所で、黒装束に身を包んでいるこの男も困惑の表情を浮かべていた。
「今の魔法・・・あれがユニバースワンか・・・」
水色の髪を掻きながら周囲を見渡すティオス。彼の視界が届く範囲に、アクノロギアの姿も、ローグの姿も見えなくなっていた。
「大地全土に魔法を付加させ形を変える。さらに特定の人物を特定の場所へと配置し、その反作用で他の人間たちをランダムに新たな地に配置する魔法・・・か」
それだけではない。ユニバースワンの影響によりフィオーレの面積は大きく減少。その結果、アルバレス軍とフィオーレの魔導士たちの遭遇率は著しく上昇する。
「一番の狙いは黒魔導士と妖精の心臓を近付けること・・・そしてアクノロギアを遠くに・・・いや、違うな」
辺りを見回した彼はしばらくすると、一度目を閉じる。次にその目が開かれると、その瞳は青く変化していた。
「俺とアクノロギアを引き剥がしたかったのかな?」
そう言うと彼は一瞬のうちにその場から姿を消してしまう。何かを目指して瞬間移動したティオス。彼の狙いが、いまだに誰にも予想がつかなかった。
大きく人々が混乱の最中、一人の青年が目を覚ました。
「ゲホッ・・・ゲホゲホッ」
咳き込みながら体を起こすガジル。彼の目の前に広がるのは、地獄とも天国ともつかない平凡な大地だった。
「どこだ、ここは・・・俺は確か・・・死・・・」
ブラッドマンに道連れにされたと思っていたガジル。しかし、実際はそうではなかった。
彼はアイリーンが発動したユニバースワンにうまく拐われたかことにより、九死に一生を得ていたのである。
「!!」
そんなことなど知りもしない彼は後ろから感じられた人の気配に振り返る。
「何だお前、地獄の住人か?」
謎の影に問い掛けたガジルだったが、相手の声がうまく聞き取れない。最初はただの煙としか思えなかったそれは、次第に人の形へと変化していく。
「誰だ、お前・・・」
相手が何者なのかわからないガジルはそう問いかけることしかできない。やがてそこに現れたのは、メイビスと同じほどの背丈の少女だった。
「私はゼーラ。始まりの妖精の一人」
メイビスの一番の親友であったゼーラ。彼女の存在が、この戦争に新たな風を流し込む。
「今のがユニバースワン?じゃあ妖精の尻尾に向かった方がいいのかしら?」
その頃、上空を飛んでいたはずのヨザイネは自分が地上に落ちていることでアイリーンが例の魔法を使ったのだと理解していた。彼女はこれから目指すべき地点がどこにあるのかを知ろうと翼を広げると、目の前の茂みが小さく揺れる。
「誰?そこにいるのは」
広げた翼を閉じてその場所を睨む。そこから出てきたのは、アルバレス帝国の紋章が入った服を着ている黒髪の美女だった。
「ヤッホー、ヨザイネ」
「リュシー!!」
オーガストと共に行動をしていたリュシーだったが、ユニバースワンの影響により彼女は彼とはぐれ、この場所へと飛ばされて来ていた。ヨザイネは彼女だとわかると、嬉しそうに飛び付くが、簡単に回避されてしまう。
「どうなったの?ハルジオンの方は」
ハルジオン港から上陸したヨザイネに対してそう質問をしてみるリュシー。それを聞いた彼女は首を傾げながら答えた。
「さぁ?」
「さぁって・・・あんたハルジオンから攻めていったグループよね?」
どこかで作戦変更でもあったのかと確認してみるが、どうやらそんなこともなかったようでますます意味がわからなくなる。リュシーがさらに問い質してみると、彼女は悪怯れる様子もなく答えた。
「私、リュシーにお土産ができたからこっちに飛んできたのよ」
「お土産?」
彼女が何のことを言っているのかわからずにいると、ヨザイネはバッと手を彼女の前に突き出し・・・
「あれ?」
その手に何も握られていないことに呆然としていた。
「何?その手がどうかしたの?」
その瞬間リュシーの目付きが鋭くなったことを察した彼女は苦笑いをしてみせる。
「まさかこれは・・・闇の黒魔術!?」
「何が言いたいのかさっぱりわからないわ」
意味不明の発言をする彼女に対してリュシーが呆れたように肩を竦めると、ヨザイネは額に手を当てる。
「天界より追放されし我に、神はさらなる試練を与えるのね・・・下界の者へと見繕われたそれを、再びその手に納めよと!!」
「要するにどこかに落としたのね」
何となくだが彼女の言葉を理解したリュシーがそう言うと、正気になったヨザイネが口を尖らせる。
「落としたんじゃないわよ!!きっと・・・あれよ!!ユニバースワンのせいでどこかに行ったんだわ!!」
「はいはいそうですね」
疑いの視線を送る彼女に必死に説明するが全く聞き入れてもらえず地団駄を踏む。リュシーはそんな彼女を置いて歩き出そうとした。
「本当にホント!!リュシーもビックリの子を連れてきてたんだって!!」
「わかったわよ。ほら、早く行きましょう。妖精の心臓を奪いに」
どうでも良さそうなリュシーの気を引こうとするヨザイネは、彼女に詳細は話さないものの懸命に声をかける。彼女の行動がどういうものだったのか、リュシーが知る時はそう遠くなかった。
シリルside
見知らぬ土地にいる俺たち。俺とウェンディはこれからどうすればいいのか、悩んでいた。
「どうしよう?シリル」
心配そうな目でシャルルを抱き締めているウェンディ。俺もセシリーを抱えると、辺りを見回してみる。
(ハルジオン港が近いのかもわからないし・・・誰かの気配もしないんだよなぁ・・・)
俺たちがいたハルジオンの近くにこんな場所があった記憶がない。かといって周辺に人の気配もないし、そもそも見知った地ではないのだから土地勘もない。それでもこのままここで待っているだけでは何も始まらないわけで・・・
「でもむやみやたらに動くわけにもいかないわけで・・・」
どうすればいいのか考えが纏まらない。そんなこんなで悩み果てていると、突如脳内に不思議な声が聞こえてきた。
『ギルドはここから―――の方角』
「「「「!!」」」」
聞き覚えのない声に思わず周囲を見渡す。俺たちぐらいの少女の声と思われるそれに、俺たちは顔を見合わせた。
「何?この声・・・」
「頭の中に直接・・・」
「誰かの念話~?」
「でも一体・・・」
正体不明のその声に困惑することしかできない声。そんなことなどお構い無いのか、引き続き脳内に声が響いてくる。
『ギルドに向かってみんな集まりなさい!!敵の魔法でバラバラになっちゃったけど、一つになる時よ。メイビスがピンチなのよ!!あなたたちの母なる存在よ!!今すぐギルドに向かって!!
メイビスを守りなさい!!」
俺たちが出会うきっかけとなった妖精の尻尾の創設者である初代。彼女を狙ってアルバレスがギルドへと向かっているのなら・・・
「行くしかないよね」
「うん!!」
視線を合わせてうなずく俺とウェンディ。だが、約一名納得していない者もいるみたいで・・・
「待ちなさいよ。この声信じて大丈夫なの!?」
「でも他に手がかりもないよ~?」
この声の主の正体がわからない限り従うべきではないと言うシャルル。それには一律ある。もし敵の罠だった場合やられてしまうことになるわけだし・・・
『高圧的すぎるんだよ。もっと・・・こう愛らしい感じに言えねーのかよ。本当に初代の友達なのかよ』
その時少女の声と共に頭に響いてきたのはよく聞き慣れた仲間の声だった。
「ガジルさん!!」
「この声の人と一緒にいるってこと!?」
初代の友達って彼が言っているのなら、それは信じられることだろう。そう思いシャルルの方を見ると、彼女も納得したようで小さく頷いていた。
「行こう!!ギルドに!!」
「うん!!」
声を頼りに東へと進んでいく俺たち。みんなと合流するために、俺たちはその場から駆け出したのだった。
第三者side
「やはり殺せなかったか・・・ブラッドマン」
その頃森の中を歩いているティオスは、頭に響いてきたその会話に深いため息をついていた。
「やはり俺と天海以外にこの流れを変えれるものはいないのかもしれないな」
額に手を当てて意識を集中させるその口元は小さく笑っていた。
「あいつにさえ会わなければ、リュシーも戦力にはなったんだがな」
再度どこかへとテレポーテーションするティオス。彼がいなくなったその場所のすぐそばに横たわる男。
「ティオス・・・お前は何がしたいんだ・・・」
そう言い残して息絶えてしまったジェイコブ。その体には足が付いておらず、血の海に沈みながら動かなくなってしまっていた。
ゼーラの声により妖精の尻尾へと向かう面々。その中で、アイリーン隊のハイネとジュリエットと対峙していたミラは、予想外の出来事に言葉を失っていた。
「ありえない・・・そんな恐ろしい魔導士がいるなんて・・・」
彼女の目の前にあるもの・・それは二人の少女ではなく二本の剣。そう、ハイネとジュリエットは人間ではなかった。アイリーンの魔法により人格を付加された武具。そんなことができる強力な魔導士は、戦慄する少女の後ろへと現れていた。
「私の“子”たちをずいぶんと可愛がってくれたようね」
冷徹な声でそう告げるアイリーン。ミラはその魔力の高さに震え、後退りする。
そんな彼女に対しアイリーンは腕を振るうと、黒い剣からリボンが伸びてきてミラを拘束する。
さらに、白い剣からは粘液が溢れ出てきてミラの体に降りかかる。
「簡単には殺さぬぞ。まずはその美しい白い肌をボロ雑巾のように醜くしてやろう。目を背けたくなるような肉塊になるまでな」
悲痛な叫びを上げるミラ。アイリーンはその姿を笑みを浮かべて見つめていた。
「アイリーン」
「!!」
その時その場に現れたのは真っ赤な肌に変色したオーガストと口数がかなり少なくなってきているブランデッシュだった。
「あら、オーガスト様。ブランデッシュも一緒なのね」
「ども」
普段あまり接触することがないこともあり余所余所しい挨拶をするブランデッシュ。一方ミラは、16の中でも上位に入る実力者の二人の魔力にさらに震えが増していた。
「陛下の許可なくユニバースワンを使ったな」
「アクノロギアが目の前にいましたの。さすがの私も余裕がなかった。
アクノロギアは一時退けた、陛下は妖精の尻尾へ送った、責められる筋合いはありませんわ」
「今一度16は陛下の下に集まるのだ」
「イヤよ。私は自由に動かせてもらうわ」
「これはスプリガン16総長である私の決断だ」
魔力を高めて睨み合う二人。それにブランデッシュは生唾を飲み、ミラはさらに体を震わせている。
「わかりましたわ。ここはオーガスト様の顔を立てましょう」
しばしの睨み合いの中、手を引いたのは緋色の絶望。彼女は彼に武力で勝つことができないことは十分にわかっていた。だからこそ、ここは自らが断念することでこの場を乗り切ることにしたのだ。
「けど・・・私の“子”をキズつけたあの娘の始末だけは・・・」
そこまで言いかけた時、オーガストは彼女を指差す。その先端から魔力のレーザーが放たれ―――
バンッ
ミラの前に現れた、水髪の青年に阻まれた。
「え・・・」
自分の前に現れたその人物にミラは驚愕した。髪の色こそ違うが、彼は紛れもなく彼女の知る心強い魔導士なのだから。
「ティオス、なぜ邪魔をする」
ミラを仕留めようとしたオーガストだったがそれを邪魔され鋭い眼光を飛ばす。それに対しティオスはやれやれといった表情だ。
「邪魔をしている?それはこっちの台詞だよ、オーガスト」
「何?」
彼が何を言おうとしているのかわからないオーガストは口を閉じて次の言葉を待っている。
「やはり“母”の子は殺せないのか?心優しい息子で、両親もさぞ喜んでいるだろうね」
「・・・」
嫌らしい笑みを浮かべるティオス。オーガストはそれに押し黙り、アイリーン、ブランデッシュ、ミラは何のことかわからず呆然としている。
「いいか、オーガスト」
「よせ、ティオス」
縛り付けられ動けないミラの頭を掴むティオス。その瞬間ミラは何かを感じ、青年の目を見た。
「待って・・・どういうことなの・・・」
ミラの頭に手をかけたティオスはそこに魔力を込めていく。ミラは顔を真っ青にして、必死に叫んだ。
「やめて!!シ―――」
全てを言い切る前に強烈な破裂音が周囲を襲う。砂煙がやむと、悪魔の魂に愛された少女は跡形もなく粉々に砕け散っていた。
「残念だったな、ミラジェーン」
頬に付いた砂を払って三人へと視線を向ける。そのイカれた目付きにブランデッシュは体をビクつかせた。
「さぁ、行くか。妖精の尻尾に」
狂気に満ちた悪魔の行進。この男を止める者は、果たして現れるのだろうか。
後書き
いかがだったでしょうか。
この1話で相当進んだような気がします。
次はどこまで行けるかな?
ページ上へ戻る