おぢばにおかえり
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52部分:第八話 はじまってからその八
第八話 はじまってからその八
「そこは人それぞれなのよ」
「それぞれなんですか」
「そうなのよ。大きい方が好きな子もいれば」
「小さい方が好きな子もいますか」
「そういうこと。わかったかしら」
「ううん」
思わず首を傾げてしまいました。南礼拝堂の階段を登りながら。
「そうなんでしょうか」
「まあそれも何時かわかるわ」
先輩は首を捻る私に言いました。
「男の子も難しいものだってね」
「実は私」
ここで私は先輩に言いました。
「先輩は同級生とかが好きですよね」
「そうね、嫌いじゃないわね」
にこりと笑って私に言ってくれました。
「けれどそれがどうかしたの?」
「私、どういうわけか昔から年上の人が好きなんですよ」
「へえ、そうなの」
「はい」
そう先輩に答えました。そうして礼拝堂の中に入ります。あちこちで参拝して座りづとめをしている方がおられます。座りづとめというのは正座して手で行うもので天理教のお手振りの中で一番よくするものです。私達もそれをしに今ここに来たんです。
「俳優だったら竹之内豊さんとか」
「いいんじゃないの?」
「村上幸平さんとか天野浩成さんとか」
「背の高い人が好き?」
「それもあります」
それは本当です。だから特撮系の俳優さんが好きだったりします。皆さん顔やスタイルだけじゃなくて背も高いから。テレビで観る度にうらやましくて仕方ありません。
「けれど頼りになる人がやっぱり」
「ちっちはそうは見えないけれど」
適当な場所で正座しました。礼拝堂の中は柱が並んでいますがそこの一つのすぐ側に座りました。二人並んでです。
「見えないですか?」
「私の考えだけれどね」
「ええ」
何か凄い気になります。先輩の次の言葉が。それは。
「ちっちって年下の方が合うかも」
「そうですか!?」
それには正直頷けませんでした。
「私はそれは」
「何となくよ」
先輩はそう断ってきました。
「何となく。けれどね」
「はい」
「ちっちしっかりしてるし。面倒見いいし」
「面倒見いいですか?」
「いいじゃない」
今度はこう言われました。
「優しいし。それにお姉さんだったわよね」
「そうです」
先輩にはもう最初の顔合わせでお話しています。私が三人姉妹の長女だって。ですから将来は教会を継がないといけなかったりします。
「そういうのもあるから。年下の方がいいんじゃない?」
「私年下の子は」
正直好きにはなれません。やっぱり年上のしっかりした格好いい人が。そうそう、仮面ライダー龍騎に出ていらした時の黒田アーサーさんなんかも好きでした。
「頼りないし弟みたいだし」
「母性本能をくすぐるかも知れないじゃない」
「それはないです」
はっきり否定できました。
「お姉さんでも妹ばかりですよ。それでどうして弟なんて」
「嫌なのね」
「欲しいのはお兄さんです」
誤解招く言葉かも知れませんけれど。こう言いました。
「他はいらないです」
「あらあら、どうにも厳しいのね」
「別に私を好きでいてくれるんならそれが一番ですけれど」
不思議と昔からいざって時になると顔はいいって感じです。大切なのは性格なんだっていうのは子供の頃からお父さんとお母さんに言われています。ですから確かに好みのタイプはありますけれど私を好きでいてくれたら誰でもいいです。・・・・・・ただ、今まで告白とかしてくれる人はいなかったですけれど。
「そこもちっちらしいわね」
「そうなんですか」
「私なんてあれよ」
先輩はまた少し寂しい顔になりました。
「そんなのわからなかったから」
「わからなかったから」
「まあ。ここで言ったら駄目よね」
けれど途中でお話を止められました。
「ここではね。参拝するところだし」
「そうでした、参拝ですよね」
「ええ。まずは食べる前に」
「参拝を済ませてから」
「行きましょう。それでいいわね」
「はい、宜しく御願いします」
こうして座りづとめをしてから駅前に行きました。そうして二人でソフトとドーナツを食べました。けれど何か色々と先輩と二人でそれからもお話しました。
先輩は凄くいい人です。それでもそのいい人になるまでに何か色々とあったようです。辛かったことや後悔したことも。それを聞くつもりはありませんけれど先輩も凄く色々なものを持っていることに気付かされました。人は一日ではその人にはならないのですね。
第八話 完
2007・11・17
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