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天体の観測者 - 凍結 -

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修行とはこういうものを言うのだ

 
前書き
修行Ⅰです
ではそうぞ 

 
「……3…2」

 瞳を閉じながらウィスは宙を駆ける。
 実に緩慢な動きでウィスは静かに眠るリアス達の頭上を浮遊していた。

「…1…、0。」

 ウィスが数えるはリアス達の目覚めの合図。
 そのカウントダウンは0になり、ウィスはその紅き瞳を見開く。




 途端、周囲に無数に浮遊していた砂時計が眩く発光した。

 そして爆発。
 爆発に次ぐ爆発。

 周囲には爆音が鳴り響き、爆煙が吹き荒れた。

「ヶホッ!ヶホッ!」
「い…今のは一体……?」
「ゲホッ、ゲホッ!」
「死…死ぬ……。」
「キュゥー。」
「ば…爆発……?」

 寝起きの時点でリアス達は瀕死一歩手前の状態。

 見れば一誠とアーシアの2人は真っ黒くろすけの状態であり、仲良く寝台の上でピクピクと痙攣している。
 リアスと朱乃、木場の3人は何とか爆発に耐え、小猫は戦車の耐久力の恩恵か比較的無事な様だ。

「皆さん、朝ですよ。起きてください。」

 宙へと浮遊しながらウィスはリアス達に起床の旨を伝える。

「ウィ、ウィス、今のは一体?」
「時限式爆発砂時計です。良い目覚ましになったでしょう?」

 絶句、リアス達は驚きの余り言葉が出てこなかった。
 ウィスは微笑しながら、手元の杖を軽く振るう。

 途端、リアス達の足元から円状の光が頭へと昇った。
 リアス達の怪我は瞬く間に回復し、五体満足の状態へと早変わりする。

「えっ、嘘っ……!?」
「傷が……?」
「何ともない……?」
「これも修行の一環ですよ。それでは本日の修行を始めましょうか?」

 今日もこうしてリアス達の修行が幕を開けた。







▽△▽△▽△▽△







「はぁっ!」
「シッ!」

 魔剣創造(ソード・バース)によって自身の手に創造した魔剣を勢い良く振り下ろす。
 騎士の特性である速度を活かし、木場は眼前のウィスへと接近する。

 対するようにウィスへと迫る小猫も手加減することなく全力の拳を打ち込む。
 戦車の特性を余すことなく利用した渾身の一撃を連打にてウィスへと馳走すべく拳を突き上げた。


 だが届かない。


 拳を、魔剣を木場と小猫の2人はウィスを殺すつもりで振るっているにも関わらずだ。

 見ればウィスは目を閉じたままその場から大して動いてさえいない。
 そう、ウィスは必要最低限の動きで2人の猛攻を躱しているのである。

 無論、本来ならば躱す必要もない。
 だがそれではリアス達の修行にならないだろう。
 故にウィスは2人の攻撃に躱すことで対処しているのだ。

 幾度も、何度も木場と小猫はウィスへと攻撃を届かせようと奮闘する。
 見れば既に2人は汗だくの状態であり、疲労困憊の様子だ。

 だが2人の必死の猛攻はウィスに掠りもしない。
 終始ウィスは瞳を閉じた状態にて木場と小猫の猛攻に対処しているのだ。

「喰らいなさい!」
「雷光よ!」

 そんなウィスに上空から攻撃するはリアスと朱乃の2人。
 彼女達は今や魔方陣を使用せずに魔力と光力の使用を可能としていた。
 以前のリアスと朱乃では不可能であった魔方陣を介しない大規模な魔力と光力の発動を可能としているのだ。

 これも全てウィスのスパルタの修行の恩恵である。

 彼女達からも木場と小猫の2人と同様にウィスへの攻撃に一切の容赦も感じられなかった。

「ほい。」

 だがウィスは軽くデコピンするだけで彼女達の攻撃を掻き消す。

「嘘っ!?」
「くっ…!流石ですわね…!?」

 リアスは予想外のウィスの対処の仕方に驚嘆する他ない。
 対する朱乃はリアス程ではないがウィスの圧倒的な力に驚いていた。

 見れば彼女達も汗だくの状態である。
 無理もない。
 リアスと朱乃の2人は今日の修行が開始されて以降ずっとウィスに対して力を行使し続けていたのだから。

 既に彼女達も限界の一歩手前。
 リアスと朱乃の2人は手を大きく震えさせ、肩を大きく上下させ、視界を曇らせていた。
 最早彼女達の目にはウィスの姿は霞んで見えている。

『……!?』

 次の瞬間、木場と小猫の2人と遭対していたウィスの姿が掻き消える。

 彼女達の背後へと高速移動したウィスはリアスと朱乃の首へと手刀を落とした。
 軽く一振り、それだけで彼女達の意識は昏睡する。

「部長、朱乃さん!?」
「くっ…!全く見えなかった……!」 

 リアスと朱乃の2人を両腕に抱え、ウィスは木場と小猫の前へと現れた。
 木場と小猫は再びウィスへと重い身体を引きずり、ウィスへと突貫する。

 身体は既に満身創痍の状態。
 だがそれでも2人はウィスへと突撃する。
 自身の限界を越えて。

「はぁっ!」
「シッ!」







「はい、ストップ、ストップ。」

 だがそんな2人の決死の攻撃はいとも簡単にウィスに受け止められていた。
 見れば左手の親指と人差し指を前へと突き出しているウィスの姿が。

 その様子からは全くもって自分達の攻撃が効いた様子は見受けられない。
 ウィスは変わらず朗らかな笑みを浮かべている。

 必死の思いを込めて放った自分達の渾身の一撃が指一本で受け止められたことに軽く自信喪失仕掛ける木場と小猫の2人。



 お願いだからウィスさん、少しは手加減してあげて。



「お2人とも以前と比べると良くなりましたがそれでも動きがまだまだですね。」

 汗だくの状態の木場と小猫の2人を優し気に諭すウィス。

「先ず木場さん、貴方は騎士の速度に頼り過ぎています。その速度にも磨きがかかってきていますがそれは至って直線的です。故に貴方の動きを読むのは容易なんです。加えて言わせてもらいますと貴方が魔剣創造(ソード・バース)によって創造した魔剣の構成は酷く脆い。まだまだ魔剣を創造するための創造力が足りていない証拠ですね。」

「次に小猫さん、貴方も木場さんと同じように戦車の力に頼り過ぎています。その攻撃も至って直線的でその拳もまだまだ未熟です。全身の力を満遍なく拳へと伝え切れていませんね。…それに塔城さん、貴方まだ隠している力がありますね?」

「……!?」

 此方の確信を突いた言葉に小猫は酷く狼狽した様子を見せる。
 この様子からしてやはり小猫は意図的に仙術を遣っていなかったようだ。
 となれば後は黒歌に任せよう。

「仙術を遣うのに躊躇しているのでしたら後は黒歌に任せましょうか。」
「何故、姉さんの名前を……!?」

 ウィスは杖を軽く地面に打ち鳴らし、驚いている小猫をとある場所へと転移させる。
 無論、小猫を転移させた場所は彼女の姉である黒歌の元だ。

 後は姉妹間で小猫が抱えている問題も解決されるだろう。

 無事小猫を送り届けたウィスは宙に浮遊させているリアスと朱乃を叩き起こした。

「あれ、私……?」
「……此処は?」

 重たげに瞼を開け、辺りを見回すリアスと朱乃の2人。

「これで今日の私との組手は終了です。皆さん、以前と比べてだいぶ動きが良くなっていますが、まだまだですね。ほら、皆さんの服にサインまで書けちゃいましたよ?」

 マジックペンを片手にウィスが笑いながらリアス達の胸元を指差す。
 見ればリアス達の胸元には渦巻き模様の面妖なサインが描かれていた。

『……ッ!?』

 皆一様に驚嘆を隠せない。
 一体何時、どのタイミングでウィスはマジックペンを用いたのだろうか。
 全く分からなかった。

「驚いているなか失礼しますが次の修行に移りますよ。」

 そう述べウィスは杖を地面に打ち鳴らした。







 景色が瞬く間に移り変わり、リアス達は気付けばこの惑星の端へと転移していた。

「此処は……?」 
「あれ、部長?」
「あらあら一誠君、此処で何を?」

 見れば一誠は汗だくの疲労困憊、全身草塗れの状態である。

「朱乃さん、ああ……、これはあの武舞台の周囲に生えている草の掃除とあの大樹の中の掃除を隈なくしていたからですね。」

 そう、一誠はこの5日間をひたすらアーシアと共に汗だくになりながら掃除をすることで体を動かしていたのだ。

 此処にアーシアの姿はない。
 彼女は今ウィスが創作した重力室にて2倍の重力に抗いながら、鍛錬に勤しんでいることであろう。

 彼女の神器の癒しの能力が優れているのは紛れもない事実であるが、彼女の身体能力は悪魔の恩恵を受けているとはいえそう高くはない。

 レーティングゲームでは最悪自身の身は自分で守れるレベルにまでこの修行期間で至らさなければならない。

 重力室での鍛錬の疲労は全てウィスが杖を一振りすることで即座に回復させる。その後は彼女の神器の能力のレベルを上げる修行を行わせている。

 これが一誠とアーシアのここ5日間の2人の修行のスケジュールである。





「それでは皆さん、次はこの星の周囲が修行場所です。前に進むにつれて重力が徐々に上がっていく仕組みとなっています。」

 リアス達のこの星の周囲は全てウィスの手により特殊な環境へと変貌を遂げていた。
 足を進める程に重力が2倍、3倍、4倍、そして最高5倍の重力へと設定されているのである。
 無論、リアス達の現状の状態を吟味した上での重力値であるが。 

「そのままこの星を一周走ってください。」

 そしてウィスの口から紡ぎ出される無理難題。
 満身創痍の状態のリアス達にはキツ過ぎる要求だ。

 だが取り組まないわけにはいかない。
 これも全て自分達のため、そしてライザーとのレーティングゲームに勝利するための修行だ。
 ならばこの無理難題も突破してみせようではないか。
 
 ウィスの指示に従いリアス達はその疲労困憊の身を動かす。

「この重力で……!?」
「体が重くて思い通りに動け…ないっ!?」
「くっ…ぅうぅ……!」
「くぅうぅぅっ……!」

 だがリアス達の足取りはとても遅く、緩慢なものであった。
 どうやら気持ちに反して体が付いて行っていないようだ。
 当然だ、彼女達はウィスの先程までの度重なる過酷な修行にて既にへとへとであったのだから。

「ほらほら、走らないと道が無くなってしまいますよ?」
「嘘……!?」
「重い……!」
「そ…そんな…!?」
「く…ぁあぁぁっ!」

 ウィスの言葉と共に足元の紫の結晶が消失されていく。

「道から落ちてしまうと異次元に放り出されて、二度と帰って来れなくなりますよ?」
「そんなっ!?」
「み……道が!?」

 そう、この場から落ちてしまうと二度と戻ってくることはできない。
 正に命懸けの修行である。

「ちょっとペースが早過ぎますかね?」

 リアス達の後方の足場は瞬く間に消え、異空間がその姿を現している。
 ウィスは宙に浮遊した状態で実に呑気なことを述べていた。

「くっ、体が重い……!」
「まさかこれ程とは……!」
「くっ……!」
「い、一誠……!?貴方この4日間の間こんなキツイ修行を行っていたの!?」
「はい、その通りです、部長……!ですが一番キツイのは次の修行である"あれ"なんです…!」
「"あれ"って何……!?」
「そ…そのうち分かりますよ、部長!」

 リアスと朱乃、木場の3人はこの修行を受けるのは初めてであるため、一誠の述べていることに理解を示せない。
 それに加えて先程までの修行で積み重なった度重なる疲労がリアス達の足を重くし、普段の思考を放棄させていた。

「思ったより頑張りますね?」

 そんなリアス達の背中を見据え、ウィスは感嘆の意を述べる。







「そろそろですね。では……」

 紅き瞳を細め、ウィスは杖を地面へと打ち鳴らす。
 



 途端、星を何とか一周し終えたリアス達の周囲が眩い光に包まれる。

 次の瞬間、リアス達は気付けば大樹の中へと転移していた。

「此処は……?」
「私達の寝室ですわね……?」

 思わず呆然とするリアス達の目に発光する砂時計の姿が映る。
 見れば周囲の全ての砂時計が淡く光り出していた。

 ただ一人一誠だけはこれから起こる事態を理解しているがゆえに顔を青ざめていたが。



 途端、リアス達を巻き込んだ爆発が起きる。
 大規模な爆発に伴う爆煙と爆音が周囲に鳴り響き、大樹全体を大きく揺らした。

 当然、訳も分からぬまま爆発の威力をその身に受けたリアス達は皆一様に崩壊した瓦礫の山に埋もれることになった。

「ヶホッ!ヶホッ……!」
「あらあら、これはまた……。」
「死、死ぬ……。」
「ゲホッ、ゲホッ!」

 見ればリアス達は全身ズタボロの状態で何とか生きていた。
 だが誰一人として起き上がる気力すら有していなかったが。
 






「辛うじて生きていましたか。良かったですね?今日の修行はこれまでです。」

 そんなリアス達の瀕死の様子を遠めに見据えていたウィスは本日の修行の終わりをリアス達へと告げるのであった。










─レーティングゲームまで残り5日─
 
 

 
後書き
修行とはこういうものを言うのです

High School D×Dの原作の修行をより修行らしく、ハードモードな修行に……
というかHigh School D×Dの"あれ"を修行とは言いません、断じて
あれで強くなれるならドラゴンボール時空の悟空達の修行とは何だったのか?

後悔?
後悔などしていない('ω') 
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