歌集「冬寂月」
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三十四
散り急くは
忍びし心の
ありしやと
夜半に眺むる
花の愛しき
桜は散り…八重桜もまた、後を追うかのように散ってゆく…。
まるで叶わぬ想いを隠しているのか…そんな忍ぶ心を知られぬよう、散り急ぐのか…。
月明かりに舞い散る花弁…私には寂しくも愛しく思えて仕方ない…。
新緑に
思ひそ託し
花も散り
眺む空にぞ
月は残れり
梅、桃、桜…みな散っては若葉に場を明け渡し…。
花は何を思い散り…若葉にどんな思いを託したのだろう…。
朝焼けの中…木々の間から淡い月が見えた…。
私はあの人にとって…あの淡い月の様になれたのだろうか…。
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