転生とらぶる
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番外編074話 if ゲート編 10話
前書き
2000話突破記念の番外編、これで完結となります。
本当はハッキングの件からフレイヤ、今回の話と、もう少し詳しく書きたかったのですが、そうすると20話とかいきそうだったので。
まぁ、2000話突破記念なので、20話でもよかったのかもしれませんが。
ただ、そうなると3000話突破記念は30話とかになりそうですね。
ともあれ、また明日からペルソナ編に戻ります。
ペルソナ編もいよいよクライマックスに向かいつつあるので、よろしくお願いします。
無人島そのものを、文字通りの意味で消滅させたフレイヤの衝撃は、門世界の世界各国に広がっていった。
当然だろう。アウルがフレイヤを使った時、それを観測する為に多くの国が船や潜水艦を派遣していたのだから。
恐らく、観測しに来ていた連中は、無人島が大きな被害を受けるものの、それでもまだ残ると、そう思っていたのだろう。
だが、実際には無人島そのものが完全に消滅してしまった。
しかも放射能の類もないというのは、フレイヤの実験が終了した後で世界各国の研究者達が調べて、確認されている。
……当然、門世界の人間にしてみれば、放射能の類が存在しないフレイヤという戦略兵器の情報を欲したが……俺達がここでフレイヤを見せる事にした最大の理由は、フレイヤを作るにはサクラダイトが必須であり、そのサクラダイトはギアス世界にしか存在しないからだ。
つまり、この門世界でどう研究しても、フレイヤと全く同じ兵器を作る事は出来ない。
ちなみに、どこぞの国が『フレイヤという兵器は本来我が国で開発されていた技術であり、シャドウミラーはその技術を盗んで今回の実験を行った。謝罪と賠償を要求する』とか何とか声明を出したが……まぁ、あの国の事だからと、どの国もスルーしていたのは少し面白かった。
あの国だけはどこの世界でもそう変わらないんだな。
ともあれ、フレイヤの実験の後は最初アメリカ、ロシア、中国の3国の代表が不幸な行き違いがあった……とか何とか言い訳をしたが、それでも公の場でシャドウミラーに対して明確に自分の非を認めて謝罪したので、取りあえずその3国の国家機密を流すのはもう止めておく事にした。
何でも今回の一件でそれぞれの国が受けた被害額は、数億ドル……もしくはそれ以上の金額になったという話だが、それでも賠償金を支払うのは向こうの国々という事になっている。
もっとも、3国揃って賠償金の支払いについて相談したいので、交渉の席を用意して欲しいと言ってきたのは……うん、したたかと言ってもいいだろう。
ともあれ、別にこの世界から欲しい資源の類は存在しないしな。
レアメタル、レアアース、金、ダイヤ、石油……それ以外にも色々と資源は存在するのだが、それらはわざわざ貰わなくても、ホワイトスターにあるキブツで作る事が出来るしな。
そもそも、石油なんてホワイトスターでは全く使われていないので、貰ってもどうしようもない。
効果的な使い方としては……まだ石油を使っている世界に売るとかか?
それはそれで構わないが、その辺りの交渉についてはエザリア達政治班に任せるとしよう。
ともあれ、今の俺達は特に急いでやるべき事はない。
……ピニャとボーゼスの2人は、急いで帝都に戻っていったが……フレイヤの映像はショックが大きすぎたのか?
自衛隊の方は帝都に人を送り込んで色々とやってるみたいだが、俺達はこの世界の帝国とは何の関係もない。
その為、今は特にやるべき事もなく……メギロートや量産型Wの操るシャドウが捕らえてくるワイバーンを始めとする稀少なモンスターの収集に力を入れているだけだった。
だったのだが……
「アクセル! バッタが撃破された!」
「……バッタが? 今、地球にバッタは送ってないよな? つまり、この特地でバッタが撃破されたって事か?」
政治班から上がってきた書類を確認してサインをしていると、スレイが姿を現して、そう告げる。
「そうだ」
「けど……この世界に、バッタを撃破出来る相手がそういるとも思えないけどな」
ディストーションフィールドを持っているバッタは、その機動性もあってそう簡単に撃破されるような事はない。
となると、何かただごとではない事が起こったと、そういう事になるのだが……
「コーネリアが、現在バッタの撃破地点に他のバッタやメギロートを向かわせている。恐らく、すぐに追加の情報は入ると思う」
「分かった、なら俺もすぐに行く」
そう返事をすると、スレイは頷いて部屋を出ていく。
さて、一体何がどうなってこんな事になったのやら。
バッタをどうにか出来る戦力が、この世界に存在しない……という訳ではない。
だが、そこら中にそのような者や物が存在している訳でもない……というのも事実。
そうなると、考えられる可能性としては……
そんな風に思いつつ、コーネリアを始めとする実働班の集まっている場所に到着すると……
「ん? ああ、アクセル。来たのか。早かったな」
「……随分と緊張感がないな」
そう、俺の言葉通り、そこにいるコーネリア達を始めとする実働班の面々は、特に緊張した様子もなく……寧ろリラックスすらしていた。
「もう犯人を捕らえた以上、こっちで緊張する必要もないしな」
ムウの言葉に、リラックスしている理由は理解する。理解するが……
「随分とまぁ、早いな」
スレイからの報告があって、すぐに俺はやってきた。
だというのに、まさかこれ程の速度でこちらに攻撃してきた相手を捕らえる事が出来るというのは、予想外でしかない。
「シャドウミラーにとっては幸運な事に、ポチと同じ古代龍も何匹か確保出来たらしいぞ」
イザークのその言葉に、少し驚く。
ポチのような古代龍というのは、特地では災害と同じような扱いをされている存在だ。
それだけに、当然その数も決して多いという訳ではない。
そういう意味では、バッタを1機消耗しただけの価値はあったと言うべきか。
「だが……」
利益が大きかった。
そう思っていた俺だったが、イザークが何とも言いがたい微妙な表情をしているのに気が付く。
「どうした? まだ何かあったのか?」
「ああ。竜人……いや、龍人だったか? とにかく、そんな種族の女だが、どうやらそいつが古代龍を操っていたらしい」
「へぇ、興味深い奴だな。けど、何だってそんな奴がバッタを攻撃したんだ? もしかして、自分達以外が空を飛ぶのは許可出来ないとか、そういう事か?」
「いや、違う。奴の狙いはお前だよ、アクセル」
「……俺?」
イザークの口から出たのは、完全に予想外の言葉だった。
何故、ここで俺の名前が出る?
そんな疑問を抱いていると、イザークは若干面倒臭そうにしながらも、口を開く。
「お前が従えた炎龍がいただろう?」
「従えたって言うか、テイムな」
「呼び方はどっちでもいい。とにかく、その炎龍は元々その龍人……ジゼルとかいう名前らしいが、その女が従えていた奴らしい。それがお前に奪われたって事と……それと、アルヌスの丘に繋がっている門が目障りで、そこにいる俺達を古代龍の餌にするつもりだったらしい」
「……その言い方からすると、何だか一連の出来事について知ってるような気もするんだが……」
「正解だ。何でも、そのジゼルってのが仕えているハーディとかいう神が門を作ったららしいぞ」
「また、随分といい能力を持っている奴がいるな」
「そう? 向こうの様子を見る限りだと、別に自分の狙った世界に門を繋げる事は出来ないんでしょ? なら、それこそ私達が使っているゲートと、そう大差ないと思うけど」
レモンの言葉に、そう言われればそうかと、納得する。
ましてや、あの門は繋がったままだと悪影響が出るというのは、こことは別の門世界に繋がった時に判明してるしな。
ともあれ……そういう事なら、こっちも相応の対応をする必要があるな。
理由はともあれ、そしてこちらに利益しかもたらさなくても、こっちに攻撃してきたのは間違いない。
であれば、こちらも相応の対応をする必要がある。
「よし、ハーディがいる場所に向かうぞ。向こうが攻撃を仕掛けてきた以上、こっちも攻撃されっぱなしって訳にはいかないからな」
こうして、俺達はジゼルからハーディのいる場所がベルナーゴ神殿であるという情報を聞き出し、希望者のみで向こうに乗り込む事になるのだった。
もっとも……この世界では普通に魔法とかを使えるので、俺がいれば移動するのに殆ど苦労はなかったのだが。
『あら……貴方達は?』
ベルナーゴ神殿の奥で、影から姿を現した俺達を見て、空中に浮かんでいた女がそう尋ねてくる。
何人かはこの女の姿が見えていない奴もいるのだが……その辺は体質とか、修行不足とか、そういうのもあるのだろう。
ともあれ、目の前にいるのが誰なのかというのは、俺にも容易に理解出来た。
「お前がハーディか?」
『ええ。それで、貴方は? 私の神殿に、無断でこんな場所まで入ってくるような真似をするんだから、私の信者という訳ではないのよね?』
「正解だ。アルヌスの丘に出来た、もう1つの門の先にある世界の者、と言えば分かるか?」
そう尋ねながら、改めてハーディを見る。
まぁ、美女……と、そう表現しても間違いではない容姿をしているのだが、レモンを筆頭にして桁外れの美女ばかりを毎日見ている俺にしてみれば、美人は美人だが、そこそこの美人だな、といった感想しか持てない。
そんな俺の考えは表情に出てたのか、ハーディは不機嫌そうな表情をこちらに向けてくる。
『それで、私が開いた訳ではない門から出て来た人達が、一体何の用かしら?』
へぇ。どうやらホワイトスターと繋がった門は、ハーディが開いた門ではないらしい。
外見は地球と繋がっている門と同じような感じなので、てっきりあれもハーディの仕業だと思ってたんだが……まぁ、それはいい。
「何の用件? 俺達に攻撃を仕掛けておいて、その言い方はないんじゃないか? あの攻撃でこっちに被害が出ていたらどうするつもりだったんだ?」
『何を言ってるの? 世の中は弱肉強食よ。そうである以上、弱ければ殺されても当然でしょう?』
「ほう……」
ハーディのその言葉に、俺は一緒に来た面々に微かに合図をしながら、口を開く。
「世の中が弱肉強食か。それは間違っていない。だが……それを言ったという事は、お前が弱者になって強者に蹂躙されても、文句は言えないんだろう……な!」
そんな俺の言葉を合図として、一緒に来た面々が一斉に攻撃を放つ。
氷の矢、巨大な氷の塊、吹雪、魔法の矢、神鳴流の斬撃……それ以外にも、様々な攻撃がハーディに向かって放たれる。
攻撃の種類の中に氷系の魔法が多いのは……まぁ、実戦訓練や魔法の教師を誰がしているのかを考えれば、当然の話なのだろう。
だが……相手は仮にも神だ。
いや、この門世界においてはかなりの実力を持つ、極めて強力な神であると言ってもいい。
それだけに……
『……痛いわね』
ん? ハーディの表情が痛みや怒りで歪んでるな。
これは、予想よりも効いているのか?
そうか、相手は神とはいえ今は実体がない状況。つまり……
「ムラタ、お前の攻撃がかなり有効だ。他の連中は……」
『好きにやらせると思う? 私のコレクション、見せてあげる』
ハーディのその言葉に、見るからに強そうな男、美しい女、可愛らしい子供……そのような者達が次から次に姿を現しては、こちらに攻撃してくる。
コレクション、ね。つまり、この連中はハーディのお気に入りな訳か。
だが……肉体を持った状態で俺達の前に現れたのは、失敗だったな。
それに、ハーディの神官騎士? って言うのか? そういう連中もこっちに攻撃を仕掛けてきているが、そちらは普通にこちらの攻撃でダメージを負っている。
「さて、このままここにいても時間が無駄になるだけだし、そろそろ勝負を決めるとするか」
ムラタの攻撃は命中しているが、それでもハーディの顔を痛みに歪める事くらいしか出来ていない。
これは、ハーディが思ったよりも強力なのか、それともムラタが修行不足なのか……前者だと思いたいところだ。
そんな風に思いつつ、俺は溢れんばかりの魔力を込めて白炎を生み出す。
『っ!?』
ハーディも、白炎に込められた魔力の大きさには驚いたのだろう。息を呑む。
まぁ、俺の持つ魔力……SPの大部分を込めた白炎なのだから、そうなっても無理もない。
白炎には危機を感じたのか、ハーディがその場から逃げようとするが……
「神鳴流奥義、斬魔剣、弐の太刀!」
『きゃあああああああああああっ!』
ムラタから放たれた斬撃によりハーディの両足が切断され、痛みに悲鳴を上げ……次の瞬間、俺の放った白炎にハーディの身体が包まれる。
もっとも、ロウリィもそうだが、この世界の亜神や神といった類は、不老不死だ。
大きなダメージを与えても、そう遠くないうちに復活するのは間違いない。
そんな訳で……
「スライム」
その言葉と共に空間倉庫からスライムが姿を現し、ハーディを包み込み、消化していく。
『な、な、何を!? そんな、私が……』
神となった自分が何故、と。
信じられないような思いで呟くハーディに、俺は呆れたように呟く。
「お前は、自分で弱肉強食って言ってたんだろうが。つまり、より強い俺達に食われても納得してるんだろ?」
『そんな……そんな事……ありえ』
有り得ない、と言おうとしたのだろうが……最後にはスライムによってあっさりと吸収され、ハーディという神は門世界から姿を消す。
まぁ、冥府を司っていた神が消えたのを考えれば、色々とこの世界でも不味い事になりそうだが……その辺りは自然とどうこうなるだろう。
神もたくさんいて、ハーディの他にも死者の魂を導く役目を持った神がいるらしいし。
こうして、俺達はちょっかいをかけてきたハーディを倒し、アルヌスの丘に帰還する。
その後も帝国と自衛隊の間で起こった戦いにポチを始めとした古代龍を使ってちょっかいを出したり、帝都にメギロートを飛ばして王城を破壊したりするものの、こっちが手を出したのはそれくらいでしかなかった。
そうして最終的には、帝国と日本との間で講和――実質的な帝国の降伏――がなり……そして何故か、本当に何故かは分からないが、俺のベッドの上ではピニャとボーゼス、パナシュ、ヴィフィータといった面々が裸の状態で息も絶え絶えになっているのだった。
ちなみに、その後日本のジャーナリストだと名乗る古村崎とかいう男が無理矢理ホワイトスターに侵入しようとして、量産型Wに警告されたにも関わらず強引に門を通ろうとしたので、それを射殺したことにより日本と若干揉める事になるのだが……結局遺憾の意が表明されただけで、数日後にはすっかり忘れ去られる事になってしまった。
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