とある3年4組の卑怯者
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135 英吉利(イギリス)
前書き
28~29話以来の、リリィがメインで藤木が出てこないエピソードです。久々に44~48話に登場したあの子を再登場させたいと思います。
リリィは休日の間にイギリスに戻ろうとしており、両親と共に羽田空港からイギリス行きの飛行機に搭乗していた。日本に来た時も飛行機で来たが、今度は逆のパターンである。ただ、イギリスに戻るというケースは今回が初めてであった。
イギリスと日本は非常に遠い。地球の裏側に行くようなものだから就航時間もそれなりにかかる。それでは機内食が出たり、映画を上映しないと退屈である。リリィは時には寝てしまう時もあった。しかも、時差ボケにも耐えなければならなかった。
飛行機はやっとイギリスのロンドンに着陸した。そして、高速バスにタクシーを利用して、リリィは嘗て自分が住んでいた家へと戻ってきた。今はお手伝いに家の手入れをさせていたため、家の中は清潔に保たれていた。既に深夜の時間帯になったのでリリィはシャワーを浴びて寝てしまった。
翌日、イギリスの時間帯では日付を超える前の夜だったが、朝は8時頃に起きた。学校があるなら遅刻の部類だが・・・。朝食はお手伝いの人が用意してくれていた。リリィはそれを食べた。
「ごちそうさま」
「お嬢様」
お手伝いの初老の女性がリリィを呼んだ。
「はい?」
「日本にはコメとかミソスープとかを飲むと聞きましたが、美味しいものでしょうね?」
「うん、凄く美味しいわよ」
「そうですか、いつか日本の料理を作ってみたいものですね」
「ふふ。ママに聞いてみたらどうかしら?」
「エエ、しかし、コメとかミソはイギリスではとても高価ですからね・・・」
「そうね・・・」
リリィは食事後、家を出た。久々にイギリスの町並みを歩くと日本に来たばかりの時も彼女は感じてはいたが、日本とイギリスでは景色がかなり異なるものである。花輪などの日本の友達にも見せたいと思った。
(花輪クンってイギリスに行った事あるのかしら・・・?)
リリィは花輪は学校の休み期間はよく日本を出ると聞いていた。もしかしたらこのイギリスのどこかの地に立っているのかもしれない・・・。
リリィは一軒の家に到着し、インターホンを鳴らした。
『おはようございます』
「おはようございます。メイベルの友達のリリィてす」
『あら、リリィ、久しぶりね。今娘を呼ぶわね』
応答した人物は、インターホンを切った。少しして、一人の少女が玄関の戸を開けた。
「リリィ!ヒサシブリね」
リリィの旧友のメイベルであった。
「うん、久しぶり、メイベル・・・」
メイベルはリリィを家に入れた。そして、紅茶をご馳走となった。
「デ、日本の学校は楽しんでるの?」
「うん、他の組の友達も出来てね、それだけじゃなく違う学校の友達も出来たの!」
「ヘエ、そんなに友達が出来たの!日本に行ったばかりの頃はまだできてなくて淋しかったって行ってたけど、あの時とは凄い違うわね!」
「うん、今とっても楽しんでいるわ!!」
「ソウダ、前に私が日本に来た時泊めてくれた花輪クンって人は元気にしてるの?」
「うん」
「あの人ハンサムで素敵だったからまた会いたいわね」
メイベルは以前日本に行った時、花輪和彦というリリィの友達の家に泊まっていた。その影響もあるのか、花輪がやや好きになっていたのだった。
「そう、私もかっこいいと思うわ。そうそう、藤木君って覚えてる?」
「フジキ君って誰だっけ?」
メイベルは藤木の事を覚えていないようだった。
「ええと、背が高くてクチビルが紫の子よ」
「ア、そういえばその子リリィの事が好きなんだっけ?」
「う、うん。あと、氷滑りが得意な子よ」
「ソウイエバ、そんな事言ってたわね」
メイベルはやっと思い出せたようだった。花輪の事は覚えていたが、他の皆の事はコロリと忘れているなんて少しメイベルに手を焼いた感がリリィにはしていた。かくいう自分も藤木からラブレターを貰った時、彼の事を貝殻をくれた人と言う事以外はほぼ忘れていたのだが・・・。
「で、その藤木君が氷滑りの大会に出て、全国の大会にまで出たのよ!」
「スケートの大会!?凄いわね!応援しなきゃ!!」
「うん、それでその大会でも金勲章か銀、銅獲れば世界大会に出るのよ」
「ウワア、見たいわね!ソウイエバ、また来たらスケートしに行こうって私言ってたわね。ゴメンね、この冬は他の用があって・・・」
「ううん、大丈夫よ」
メイベルはかつてイギリスに帰る時、その藤木という少年にまた自分が日本に来たらスケートしに行こうと行った事を思い出した。
「ソレデ、その世界大会ってドコでやるの?」
「ええと、カナダだって言ってたわ」
「カナダか・・・。行けたらいいわね」
「そうね・・・」
「フフッ、そうそう、学校の友達もリリィに会いたいって言ってたから呼ぶ事にしたの」
「え、本当?ありがとう!」
リリィはメイベル以外にもイギリスの友達に再会できる事を喜んだ。メイベルに感謝をしない訳にはいかなかった。
その時、ベルが鳴った。
「ア、来た来た!」
メイベルは玄関に向かった。そして学校の友達が入ってきた。
「やあ、リリィ、久しぶりだな」
「元気そうね!」
「皆、ありがとう!」
リリィも嘗ての友達と会えて嬉しく感じた。女子のハンナにシャルロット、男子ではアーネスト、ハワードにレイモンドという名の旧友達だった。皆は談話室のような所のテーブルに集まった。
「ねえ、日本の生活って楽しいの?」
シャルロットが聞いた。
「うん、日本の友達はいい人が沢山いてね、私好きな人できたし、私を好きになってる人もいるのよ」
「へえ、もしかして両想い?」
「いや、好きな人もいるけど、私の事を好きになっている人は別の人よ!でもその人も優しくて・・・」
リリィは藤木の事を頭に浮かべながら言った。
「おいおい、もしかして君を好きになっているその男子も好きなのかい?」
ハワードが聞いた。
「う・・・。い、いや、その・・・」
「おい、リリィ、顔が赤いぞ!とにかく好きな人は一人に絞っとけ!」
アーネストがからかった。
「ちょっと、もう!やめてよ!!話替えましょう!!」
リリィは赤面してしまった。
「自分からその話をした癖に・・・」
とにかく話の話題を変えた。
後書き
次回:「日本文化」
リリィはイギリスの友達と日本について語り合う。そんな時、メイベルは皆に昼食をご馳走するといい、皆の前に出て来たものは・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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