楽園の御業を使う者
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CAST 26
着信音で目が覚めた。
「………………………………」
"なんでもひっくり返す程度の能力"
枕元のスマホを取る。
「もひもひ…白夜です」
7月も終わろうという頃、真夜さんから電話がかかってきた。
現在七時半。
『朝早くにごめんなさいね白夜君。
九校戦一緒に見に行かないかしら?』
収録は入ってないからフリーだ。
「喜んで」
『なら明日迎えに来てくださらない?』
前日いきなりの提案、そして常識人の真夜さんがこの時間帯にわざわざかけてくる理由…
「また無断ですか? そろそろ深夜さんキレますよ?」
〔御忍び〕の他にないだろう。
『いいのよ。師族会議だって最近は深夜に行って貰っているもの』
まぁ、確かにあそこまで若返ったのなら同一人物と見られないよなぁ…
「わかりました。何時頃ですか?」
『朝の七時でいいかしら?』
「構いませんよ」
『宜しく頼むわ』
スマホを置く。
「真夜様ですか?」
水波が耳元で囁く。
さっきので水波も起きたらしい。
「うん。明日からね。
九校戦が明後日からだから全日に入るつもりみたい」
「旅支度はされますか?」
「スキマがあるからいいや」
「わかりました…
白夜様。もう少しくっついてもいいですよ?」
「いや、いいよ…てか当たってる」
「当ててますから」
お腹の前で組まれた腕が俺を抱き寄せる。
「てかいつ俺のベッドに入って来やがった」
「いいじゃないですか」
もういいや…
「所で白夜様」
「なにかな」
「あさだ…」
「うんSAOのスナイパーがどうかした?」
水波の手が俺の下腹部に伸びる。
「………」
「どうした水波」
「なんで女になってるんですか」
「悪戯されそうだったからな。
起きてお前が居るとわかった瞬間性別をひっくり返した」
すると水波に一際強く抱き締められた。
「貴女なんて達也様に組み伏せられて犯されてアヘ顔ダブルピースきめればいいんですよ」
「やめろ縁起でもない」
もし仮にそんな事が起これば達也諸とも氷漬けにされてしまう。
「というかその場合お前の先輩である達也に『ロリコン』のレッテルが貼られるぞ」
「貼られればいいじゃないですか。
学校で毎日毎日毎日毎日兄妹でイチャイチャしやがってあのヤロー共ですよ」
「おーい。キャラぶれてんぞ」
いやまぁ、その気持ちもわからなくもないんだけどね…
「白夜ちゃん」
「今度はなんだよ…」
「私実は女同士の方が萌える口なんですよ」
「やめなさい」
「いいじゃないですか…。白夜様って童貞かつ処女ですよね?
童貞はともかく処女は私にくださいよ…」
何言ってんだこいつ。
「白夜様のパンツに手を突っ込んでもいいですか」
「やってもいいけどやった瞬間スキマ開いて水波のパンツの中に繋げるよ?」
「チッ…」
「こらこら。女の子だろ」
「まぁ、いいです。そろそろ起きますか?
二度寝しますか?」
今日は何もないな…
「二度寝しよう」
「わかりました。白夜様こっち向いてください」
「んー?」
寝返りを打つと、ギュッと抱き締められた。
「白夜様」
「なに?」
唐突に顎先を触られた。
クイと上を向かされ…
「んむっ!?」
え、嘘?なんで?訳がわからない。
なんでこうなってるの?おかしくない?
「私のファーストキスです。
白夜様の事はこの命に代えても御守りします」
え?何言ってんの?
「ではおやすみなさい」
side out
二度寝した水波が目を覚ますと、ベッドに腰かけた白夜がぶつぶつ呟いていた。
「おはようございます白夜様」
「ふぇ!?あ、うんおはよぅ!?」
「どうしました?」
「どうって、いや、おま、さっきの…」
「特に深い意味はありませんよ」
「いや、ファーストキスだったんだろ?」
「白夜様が童貞も処女もダメと仰るので。
こちらのファーストキスを差し出しただけですが?」
「いや、そんなかんたんに…」
「私が好きなのは白夜ちゃんです。
私百合だって言いましたよね?」
「あぁ、そ、うん。じゃぁ男に戻るから」
「どうぞ御好きに」
白夜が能力で再び性別をひっくり返した。
「白夜様」
「何?」
「朝食を作りますので少々お待ち下さい」
水波はベッドから抜け出し、白夜の私室から出る。
「この朴念仁…男でも女でも容姿変わらないんだから気付きなさいよ…」
その声はドアに阻まれ、白夜の耳に入る事は無かった。
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