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おぢばにおかえり

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121部分:第十六話 色々と大変ですその八


第十六話 色々と大変ですその八

「やっぱりそうだったわね」
「はい」 
 擦れ違った後で先輩に答えました。
「東北の方だったのね」
「最初はひょっとしてって思いましたけれど」
 話には聞いていましたけれどあそこまでなんて。物凄いずうずう弁でした。
「青森のあそこ辺りって本当にあんな方言なんですね」
「そうなのね。私もはじめて聞いたわ」
「あっ、先輩もなんですか」
 これは少し意外でした。もう二年もおぢばにおられるから。
「そうなのよ。実はね」
「はあ」
「だから驚いているのよ」
 驚きを隠せないのは私もですけれど。実は半分以上あの人達が何を話しているかわかりませんでした。本当に凄い方言でした。
「あれがあそこの言葉なのね」
「戦前に活躍したあの作家いましたね」
「自殺した人ね」
「ええ、その人です」
 教科書に必ず出て来る人です。それであまりにも有名です。
「あの人の故郷ですよね」
「そうだったかしら」
 あれ、習った筈じゃあ。
「覚えてないけれど」
「教科書に載っていませんでした?」
「テストが終わったら忘れたわ」
「そうですか」
 そういうことって多いですけれどそれでも実際にやるのは。私も数学とかはあまり得意じゃないんで数学の公式を忘れることは多いですけれど。
「そうなの。けれどそういえばそうね」
「でしたよね」
「方言って多いのよね、ここ」
 全国から人が集まりますから。
「凄くね」
「東北の言葉だけじゃないですよね」
「ええ、勿論」
 私だって神戸からですし。先輩だって。
「潤だって岡山じゃない」
「はい」
 高井先輩のことです。そういえば一緒の部屋の長池先輩は私と同じ兵庫です。
「九州の子も四国の子もいるし」
「名古屋の方も多いですよね」
「あちこちにあるのよ、教会は」
「でしたね」
 それこそ日本全国に津々浦々と。一万七千も教会があります。海外にもあるんでそれを抜いても本当に沢山の教会が日本にあります。
「だからそれだけ方言も」
「多いってことですね」
「一番凄いのはさっきの青森の言葉と」
「あとは?」
「鹿児島よ」
 確か鹿児島の方にも大教会がありました。
「特に昔の薩摩弁だけれど」
「どんなのですか?」
「全然わからないわ」
 こう言われました。
「何を話しているのか全然ね」
「全然ですか」
「そう、本当に凄いのよ」
 真剣な顔で私に説明してくれます。
日本語とは思えない位にね」
「日本語にはですか」
「そうした言葉もあるのよ。覚えておいたらいいかも」
「はあ」
 世の中って本当に広いんですね。そんな凄い言葉もあるなんて。さっきの青森の言葉だけじゃないっていうのも驚きですけれど。
「あとは。外国の人も」
「あっ、はい」
 色々な国から来られています。台湾や韓国といったかつて日本だったところの方も多いんです。
「ですよね。だから外国語も」
「私も考えているんだけれど」
 ここで先輩は首を捻って考えられます。
「海外布教部に入ろうかしら」
「海外ですか」
「ちょっとそんなことも考えたりね」
 天理教は海外布教も盛んであちこちに布教していますけれどこれはまた。先輩がそんなことを考えておられるというのも驚きでした。
「どうしようかしら」
「それで何処にですか?」
 私はそれが気になりました。先輩が何処に行かれるのか。
 
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