歌集「冬寂月」
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三十二
空に添ふ
白木蓮の
春の香の
風に惑ひし
夕月夜かな
美しい白木蓮の花…春空に寄り添うように咲き誇る…。
どこか懐かしい匂い…その白木蓮の香りが風に惑わされたかのように、私の元へと香る…。
ふと見上げれば夕月夜…思い出すのは、いつか見た夢…。
月影に
雪と紛ふは
櫻花
儚く散りては
ものをこそ思へ
月明かりに映える夜桜…風もないのにはらはらと散りゆくは、まるで白雪のようで…。
そう急いて散らなくとも良いものを…儚く散りゆく桜は、私を長々と物思いに耽らせるのだ…。
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