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とある3年4組の卑怯者

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132 決意

 
前書き
 119~125話ではいじめを、126話~今回では校内テロを描きましたが、読者の皆さんはこのような事はあくまでも作品の演出なので、絶対に真似しないでください。 

 
 笹山が搬送された総合病院に到着した。藤木と花輪、ヒデじいは笹山がいる病室へと急いだ。その場には戸川先生と笹山の母がいた。
「あれ、藤木君に花輪クンじゃないですか」
 戸川先生が驚いた。
「笹山さんは・・・?手術は成功したんですか!?」
 藤木が聞いた。
「まあまあ、藤木君、落ち着いてください。大丈夫ですよ、笹山さんは重傷でしたが、命は取り留めました。
「よかった・・・。お、おばさん、本当にごめんなさい」
 藤木は兎に角笹山の母に泣きながら謝った。
「え?」
「僕が笹山さんから庇って貰ってそれで助けに行かなかったのが悪いんです。だから笹山さんがこんな目に・・・。悪いのは全部自分なんです!!本当にごめんなさい!!」
「そんな、藤木君、顔を上げて。事情は戸川先生から聞いているから大丈夫よ」
「は、はい、すみません・・・」
 藤木はベッドに寝ている笹山の方へと向いた。頭に包帯を巻かれ、鼻にはガーゼが貼られていた。
「笹山さん・・・。ゴメンよ、本当に・・・!!」
 しかし、笹山は起きない。
「藤木君、笹山さんは寝ていますので、今は無理に起こさないほうがいいですよ」
「は、はい・・・」
「それじゃあ、失礼しようか、藤木クン」
「うん、そうだね・・・」
 藤木は花輪、ヒデじいと共に病院を後にした。藤木はヒデじいの車で家まで送ってもらった。

 しかし、その後も藤木は笹山の重傷に自分に罪があると感じ続けていた。自分はリリィに引き留められていたとはいえ、たかしや鹿沼達各クラスの学級委員、そしてまる子の姉らに助けに行かせた事が確かに永沢の言う通り卑怯だと思った。自分はいつまでたっても卑怯のままだ。情けなさ過ぎてしょうがないと藤木は自分を責めていた。


 翌日、藤木は丸尾から声を掛けられた。
「藤木君、昨日は大変でしたね。笹山さんは大丈夫でしたか?」
「丸尾君・・・。うん、命は大丈夫だってさ・・・」
「そうでしたか。ズバリ、今日はクラスの皆で笹山さんのお見舞いに行きたいのですが、藤木君も如何でしょうか?」
「う、うん、僕も行くよ・・・」
「分かりました。ズバリ、笹山さんも喜ぶでしょう!」
 丸尾は自分の机に戻って行った。

 放課後、クラスの皆で(城ヶ崎など一部の人間は習い事の関係で不在だったが)笹山が入院している病院へ向かった。
「笹山さん、助けに行かなかった僕の事、怒ってるだろうな・・・」
「藤木、自分を責めるなよ」
 はまじが励まそうとする。
「あの時は山根を助けてたんだし、笹山も先に行けって言ってたんだから仕方ねーよ」
「で、でも、僕があの時笹山さんを守っていれば・・・」
「でも笹山も山根を運ぶよう言っていたじゃねーか・・・」
「その笹山さんの言う事を鵜呑みしたのが行けなかったんだ・・・。これじゃあ僕は本物の卑怯者じゃないか!!」
「そんなの皆前から知っているさ。今更何言ってるんだい?」
 永沢が口を挟んだ。
「永沢!!お前酷い事ゆーなよ!!」
「でも本当の事じゃないか?藤木君が卑怯者だって事」
「永沢!お前はなんでそういう事言うんだよ!」
「そうだぞ、お前調子に乗るなよ!」
 大野と杉山に文句言われ、永沢は何も言えなくなった。
「べ、別に調子に乗ってなんかいないさ・・・」
「み、皆さん、ズバリ、喧嘩はやめるでしょう!!」
 丸尾が慌てて抑えようとした。

 一行は病院へと到着した。そして笹山のいる病室へと入った。
「笹山さん、ズバリ、皆でお見舞いに来たでしょう!」
「皆、ありがとう・・・」
 丸尾は持っていた花束を差し出した。
「笹山さん、皆待ってるよ」
 たまえが笹山を元気にさせようとした。
「Hey、君の回復をお祈りしているよ、baby」
 花輪が高級な菓子を差し出しながら言った。
「うん、ありがとう・・・」
 藤木は笹山と顔を合わせる事が怖くてできなかった。笹山はたかしの顔を見た。
「西村君、あの時、私を助けに来てくれてありがとう・・・」
「うん、僕は藤木君が凄く君の事を心配していたから代わりに助けに行こうとしたんだよ。藤木君はスケートの大会があったし、堀内にも怨みがあったからね」
「そう・・・。私も藤木君に怪我して欲しくなかったら堀内を止めようとしてたけど、藤木君が無事でよかったわ・・・」
「うん、そうだね」
「わ、ワタクシも助けに行ったでしょう!!」
 しかし、藤木は自分を守ろうとして笹山が怪我したため、喜べなかった。
「藤木君も笹山さんに何か声かけたら?」
 リリィが催促した。
「え・・・?う、うん・・・。さ、笹山さん・・・!!」
「何?」
「ご、ごめんよ、僕を守ってこんな目に遭わせて、しかも西村君達に助けに行かせるなんて・・・。僕は君と卑怯を治すって約束したのに破ってしまった・・・。僕は、最低だ!!」
「藤木君・・・」
「僕は君を見捨て、傷つけた。それなのに呑気にスケートなんかできないよ!僕は・・・、全国大会は、辞退するよ・・・!!」
 藤木の発言に皆が「ええ!?」と驚いた。
「藤木君、本気なの!?」
 リリィが聞いた。
「だって、僕は笹山さんをこんな目に遭わせたんだぞ!なのに出る資格なんて・・・!」
「だ、だめ、そんなの!!」
 笹山が無理に体を起こして叫んだ。
「え?」
「私、藤木君に大会に出てほしいから藤木君達に先に行かせたの。だから藤木君は約束を破ってないし、私が怪我したのは藤木君のせいじゃないわ!だから私の事でやめるなんて言わないで・・・。お願いだから大会に出て・・・!やめる方が私もっと悲しい・・・」
 そう言う笹山は泣いていた。藤木は切なく思えた。リリィが話しかけた。
「藤木君、笹山さんも応援しているんだから、大会頑張ろうよ・・・」
「うん、そうだね・・・」
 藤木は笹山がそれだけ自分のスケートを応援している事が分かった。ならやめるわけに行かなかった。
 
 やがて皆は病院を後にした。藤木は笹山の気持ちに応えるために、一度決意した大会の辞退を撤回する事にしたのだった。 
 

 
後書き
次回:「心境」
 入江小学校の校内テロのニュースは広まり、片山の耳にも届いていた。藤木は全国大会に向けて練習している所で片山と出会い、今までの心境を語り出す・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・ 
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