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おぢばにおかえり

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106部分:第十四話 騒がしい中学生その十一


第十四話 騒がしい中学生その十一

「照らしてあげなさい。いわね」
「照らすのは男の子だけ?」
 ここで急にそれに気付きました。
「他の人はどうなのかしら」
「勿論他の人もよ」
 私の疑問にすぐに答えてくれました。
「照らすの。いいわね」
「お友達もなのね」
「そう。後輩にしろ家族にしろ」
 本当に誰でもみたいです。
「照らさないと駄目よ。わかったわね」
「わかったわ。そうなるわ」
「寮の先輩もそうじゃないかしら」
「あっ」
 言われるとすぐにピンときました。そうです、長池先輩です。
「千里も照らされてるんじゃないの?」
「うん、確かに」
 自分のことに置き換えて考えてみるとはっきりとわかりました。
「そうよね。言われてみれば」
「周りをよく見てね」
 今度はお説教めいた言葉でした。
「そうしたらそれも見えてくるわよ」
「そうよね。そうしたことも」
「わかったのならいいわ。ただ」
「ただ?」
 お母さんはまた私に言ってきました。
「日様は最初から輝けるわけじゃないのよ」
「どういうこと?」
「最初は。光なんてないのよ」
 また随分とおかしなことを言うのね、って思いました。太陽が輝かないで何が輝くんでしょう。お母さんの話の中でこれが一番わかりませんでした。
「けれどね。努力しているうちに」
「輝けるようになるの」
「そうよ。そういうことよ」
「そうだったの。じゃあ私も努力して」
「いい日様になりなさい」
 にこりと笑って私に言うのでした。
「皆を照らすようなね」
「ええ。そんな立派になれるかはわからないけれど」
 そこまで自信はありません。けれどやることはできますから。
「先輩みたいに。なりたいわ」
「あの先輩の人?」
 同じ部屋の長池先輩のことはもうお母さんに話しています。とても奇麗で優しくて素敵な人だって。女の子の私から見ても本当に素敵なんですから。
「ええ。あの人みたいにね」
「目標を持つことはいいことよ」
 今度の言葉はこうでした。
「目指していけばね。きっと」
「立派になれるのね」
「そうでもあるわ。だからね」
「ええ」
 お母さんの言葉ににこりと微笑んで頷きます。そして。
「いさんでいくわ」
「そういうこと。じゃあ東寮にも」
「それはちょっと」
 けれどここでは苦笑いになっちゃいました。あってあんまりにもきついんですから。一年生の時は何事もとても大変なんです。


第十四話   完


                  2008・2・14
 
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