エアツェルング・フォン・ザイン
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そのじゅうご
パチリ、と目を開ける。
目の前にフランの顔があってその後ろに天井が…
あれ?
「フラン、いつの間に交代したんだ?」
フランが寝た時は体勢が逆だったとおもうんだが?
「んーとね、30分前くらいから?」
「そうか…」
ムクリと起き上がる。
ん?ん~?あ!
「おい、フラン」
「なぁに?お兄様」
「お前…ちょっとでかくなってねぇか?」
具体的には身長伸びている…
自分を受け入れたからか?
妖怪は精神が主体だと聞く。
ならば自身を肯定し精神的に成長したのが肉体に現れた?
「わかんない、でも少し体がおかしいの」
おかしい?
「どんな風に?」
「気分が悪い訳じゃないのにフラフラするの」
あー、確定だな。一気に伸びたせいで重心がズレたのか。
そしてまだそれに慣れてない…と。
「重心がずれてるんだ。なに、そのうち慣れる」
くそう…デカくなりやがって…
一応俺は妖精というカテゴリーなので大抵の奴より小さい…
俺はだいたい100センチ。
無論、フランの方が身長が高い。
「さて…コレからどうしようか…」
「私外に行きたい」
「外?ああ、なるほど。OK、じゃぁ外行こうか」
もう、異変は解決されただろうからな。
霧は無くとも今は恐らく夜、彼女達の時間だ。
「でも…」
「でも?」
「出るなら、お姉様に聞かないと…」
レミリアにか…
「じゃぁ聞きに行こう」
「え?」
「だから、お姉様とやらに聞きに行くのさ。
なに、俺もついて行ってやる」
「でも…お姉様は私を恨んでるの」
恨んでる?レミリアが?
「どうして?」
「私が、私がここに居たから。お姉様はずっとこの館に縛られてるの…だから、きっと恨んでると思う…」
ふぅむ…あ、そうだ。
「なら、試してみるか?」
俺はある計画を思いついたのだった。
「何を?」
「お前の姉が、本当にお前を恨んでいるか…」
「どう…やって?」
「まぁまぁ、お兄ちゃんに任せなさい」
俺はストレージからあるアイテムを取り出す。
「これ、持ってろ」
「これ…何?」
「これはな…………」
俺は渡したアイテムの説明をした。
そして別のアイテムを取り出した。
そして諸々の準備を終わらせ…
「ああ、リボンを貸してくれ」
「これ?」
フランが指した頭のリボン。
「そう、それだ」
「はい、大事にしてね」
と渡された。
「じゃぁ、行ってくるよフラン、計画通りにな」
「うん!」
フランの笑顔を見て、俺は地下室を後にした。
姉と妹。
記憶を失い騎士となり、別の世界へ放り出されてしまった姉。
姉の帰りを、星の最も高い場所で待ち続けた妹。
あの二人は今、どこで何をしているのだろうか…
ガチャリ…数時間前、二人から逃げる為に通った大扉を開ける。
顔には骸骨のマスクをしている。
「ふむ、誰も居ないな」
俺はヴワル図書館の中央を堂々と横切ってエントランスホールへ向かう。
エントランスホールに行くとレミリア、咲夜、パチュリー、小悪魔がいた。
さらに霊夢、魔理沙もいる。
おいおい、美鈴は外に放置かよ…
まぁいい、レミリアが居れば事は済む。
「やぁやぁ!紅魔館の皆々様及びに今異変を解決した勇者よ!」
芝居がかった口調で言う。
「何者!?」
「まだ居たのか!?」
どうやら自機組は俺を紅魔館の住人と思ったようだ。
「ああ、博麗の巫女、及びに魔法使い殿、俺はここの住人ではないのだよ」
「本当かよ…レミリア?」
「ええ、あんな奴知らないわ」
だろうね…でも…
「そこの七曜の魔法使いは知ってるだろう?俺だよ俺…(スニーキング…)」
小声でスニーキングを発動する。
「あ、あなたは!?」
「ああ、さっきお前さんに見破られた魔法使いさ。いやー隠蔽の魔術を使ったせいでバレるとは皮肉が効いてるとはおもわんかね?」
「あなた…生きてたのね…」
うん、生きてますよ。
「生きてる?はっはっは!面白い事を言うじゃないか…
俺が死んだとでも思ったのかね?」
そこでレミリアが気付いたようだ…
「貴方まさか!」
「うーん?何の事かね?ああ、あの少女の事か?」
「フランに何をしたぁ!」
お、怒ってるって事はそういう事か?
まぁでももう少し付き合ってくれ。
「ふむ、あの少女は『フラン』と言うのかね?」
俺はポケットに手を突っ込み…
「彼女の形見だ」
フランに借りたリボンを見せた。
「…ま……きさま…貴様ァァァァァ!」
レミリアのプレッシャーが跳ね上がった。
「お、おい、無茶だぜレミリア、お前は…!」
「そうよ、貴方は満身創痍なのよ」
「うるさいうるさいうるさい!あいつだけは…あいつだけは殺す!」
自機組に止められるレミリアだがそれを振り切って立ち上がる。
「私の…私の愛するフランをぉ…よくも…よくもぉぉぉぉぉ!」
『お姉様…』
耳につけたインカムからフランの声が聞こえる。
「フラン、お前は愛されている…恨まれてなんかいなんだ…」
妹を憎む姉が、数百年も同じ家に住む訳、ねぇだろ…
「うあぁぁぁぁぁぁぁ‼」
深紅の槍を構えて突貫してくるレミリア…
「星騎士の忠誠剣!」
瞬時に生成した大剣で槍を受ける。
「そんなに彼女が大事だったかね?」
くっそ!これがグングニル…!北欧の主神の槍を模したレミリアの切り札…!
重い!重すぎる!キリトと同等くらいあるんじゃないのか!?
「殺す!お前だけは殺す!殺してやる!」
レミリアの目は怒りと悲しみに染まっていた。
その目に歓喜は無い。
やはり、彼女は愛する妹と共に居たいが為、この館に居続けたのだ。
「ぬるいな」
星騎士の忠誠剣を振り抜きレミリアを吹き飛ばす。
「怒りで攻撃が単調だ…」
だから辛うじて防げた。
更に煽ろうとした時…
「賢者の意志!」
見るとパチュリーの上に十数個の光る石が生成されていた。
その石は俺を取り囲み…
「マズイ!」
全ての石から魔法が放たれた。
威力からして多分切り札級、それも戦闘用だろう…
「剛気功‼」
自らの体を鋼鉄よりも硬いと世界に認識させ、全ての攻撃を耐える。
「くっそ…キツイなコレ…」
集中力を欠いたら一瞬で消し炭だな、文字通り跡形もなく吹っ飛ぶだろう。
何秒経ったかはわからない、しかし突然攻撃が止んだ。
恐らくパチュリーの魔力が切れたのだろう。
小悪魔に肩を借りている…
「どうしたその程度か七曜の魔法使い?
その程度で私に勝とうとは笑わせてくれる」
嘘だ、こっちももう余裕が無い。
「貴方は殺すわ…私の友人の…大切な妹を奪ったのだから…」
ぶっちゃけるぞ。これ収集着くのか?
まぁ、なんとかなるだろ。
いや、なんとかしないといけないのか。
「フラン…お前は姉だけじゃない…その友人にも好かれている…よかったな…」
『うん…!』
「そろそろフィナーレと行こうか…」
手に、妖力を集める。
大地から…林から…
周りの環境から少しずつ借りていく…
やがて莫大な力が集まった。
それをそらに浮かべ…
「光符…『ヘヴンリィ・スパーク』!」
力が爆ぜた。
「きゃぁ!」
「うわっ!」
光符ヘヴンリィ・スパーク、単純な目眩ましだ。
「ぐ…目…が…!」
俺はレミリアに近づく。
「レミリア・スカーレット」
「なんだ…」
「貴様の妹を返してやろう」
「貴様!ふざけるのも大概にしろ!」
「ふざけちゃいねぇよ…」
ポケットからクリスタルを取り出す。
さっき、フランの部屋で一度使った物を…
「コリドー!オープン!」
目の前に光の幕が現れる…
「フラン…そこを潜るんだ」
『うん!』
インカムからフランの声が聞こえた。
そして…
「お姉様!」
「ふ…らん…?」
「うん!」
あー、おわった…おわった…
俺は後ろ向きに倒れ混み…
「あー!おわったぁぁぁぁ!やっとおわったぁぁぁぁ!」
あー!もう、本当疲れたよ!まじで!
パチュリー全力攻撃とかグングニル(ガチ)とかシャレにならんわ!
マスクを収納して素顔を曝す。
「えっと…どういう事かしら?」
と霊夢に聞かれた。
「んー?誰に聞いとるのかね博麗の巫女」
「アンタに聞いてんのよ」
「あー?見て解らねぇのか?茶番だよ茶番」
「はぁ?どういう事よ?」
「だーかーらー、地下に幽閉されてたフランが『レミリアが自分恨んでる』なんて言うからよ。
だったら確かめようってなって、この茶番を起こしたのさ」
「な、な…アンタ…その為だけにレミリアを怒らせたって訳?」
「ああ、ちなみに今回の件、フランは詳しいことは知らずにただ聞いてただけだからな…フランを責めないでやってくれ…」
「なんで、あの子の為にそこまでしたのよ?下手したら死んでたのよ?」
「泣いてる子供を見棄てる訳にはいかんのさ…俺は先生だからな」
「はぁ?」
と、ここで魔理沙が気付いたようだ。
「あー!お前!寺子屋の妖精教師!」
寺子屋の妖精教師…俺の二つ名だ、縁起にもそう書かれている。
「おー?魔法使いのお嬢ちゃん、俺の事知ってるとはオジサン嬉しーねぇ…」
ああ、そうだ…
「レミリア・スカーレット、事の次第は以上だ…あぁ、フランの狂気はもう無いから安心しろぉ…」
あぁーもうダメだ、疲れた、起き上がれる気がしねぇ…
「フラン」
「なぁに?お兄様?」
「「「「お兄様!?」」」」
「俺はもう寝る、疲れた…今日はお姉様と沢山話せ…495年分な…」
「うん!わかった!」
「じゃぁ…おや…すみ…」
俺の意識はブラックアウトした。
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