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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第六十七話 何進、陥れられるのことその五

「そんなことを知らないでのう」
「では。あの方が戻られたら」
「そうされますか」
「ではな」
 こんな話をしながらだ。宮廷に着いてだ。そしてだ。
 その巨大な門の前に兵士達を待たせてだ。そのうえでだった。
 何進は車から出て一人で宮廷に入る。程なくしてだ。
 不意にだ。周囲にだった。
 兵士達が来た。そのうえで彼女を取り囲んだ。
「むっ、何じゃ御主達は」
「逆賊、覚悟するのだ」
「神妙にしろ」
「わらわが逆賊だと!?」
 その言葉にだ。何進はその目をきっとさせた。
 そしてそのうえで彼等に言い返す。威圧感も出してだ。
「わらわを誰と思うておる」
 こう言い返すのだった。
「大将軍にして先帝の義兄にあたる者ぞ。そのわらわを逆賊と言うか」
「その通りだよ」
 その何進の目の前にだった。
 白い、丈の長い法衣を思わせる服に薄紫のショートヘアの小柄な者が来た。
 その服は白だけでなく胸や腹の辺りは赤井。スカートもだ。
 目は赤く瞳は小さい。少女にも見え少年にも見える。そうした顔だ。
 その顔の者が来てだ。こう彼女に言うのだった。
「君は逆賊だよ」
「張譲、御主か」
「そうだよ。一人になったのが運の尽きだね」
 その者張譲は残忍そうな笑みを浮かべて何進に話す。
「ここでこうして」
「わらわを殺すつもりか」
「殺す?ただ殺すなんて面白くないじゃないか」
 こう言う張譲だった。
「それよりも」
「嬲り殺しにするつもりか」
「それも好きだけれど。君とは色々あったからね」
 政敵同士としてだ。いがみ合ってきたのだ。
 それを踏まえてだ。今張譲は話すのだった。
「だから殺しはしないよ」
「殺さないというのか」
「そうじゃ。それはしないよ」
 張譲の言葉が続く。
「ただ。君は猫が嫌いだったね」
「わらわは犬派じゃ」
 そちらだというのである。
「猫なぞ。見るのも嫌じゃ」
「そうだね。だから」
「だからだと?」
「これを飲ませてあげるよ」
 笑みの残忍さが一層深くなった。そしてだ。
 兵士達にだ。こう命じた。
「捕まえるんだ」
「はっ、わかりました」
「それでは」
 兵士達が彼の言葉に頷きだ。そうしてだった。
 何進は捕らえられだ。そのうえで。
 張譲は彼女の口を強引に開けさせ何か黒く丸いものを入れさせ飲ませた。それ以降何進を見た者はいない。
 新帝が即位した。しかしだ。
 大将軍何進の姿は見えずだ。逆賊として処刑されたと公表された。
 彼に従う朝廷の官吏達は全員追放された。そしてさらにだ。
 擁州の牧である董卓がその家臣達や兵士達と共に洛陽に入れられだ。彼女が相国となった。彼女の家臣達も国の要職を占めた。
 ここまで瞬く間であった。これに対してだ。
 各州の牧達も驚きを隠せなかった。それは曹操も同じだった。
 彼女は腹心達を集めてだ。こう彼女達に言うのだった。
「まさかとは思ったけれどね」
「はい、確かに」
「この事態はです」
 まずは夏侯姉妹が述べた。
「張譲が動くとは」
「危惧はしていましたが」
「正直なところね」
 曹操もだ。己の席からだ。考える顔で述べた。 
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