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英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇

作者:sorano
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異伝~終焉に諍う英雄達の来訪~第4話

~遊撃士協会・クロスベル支部~



「――――以上が私達がこちらの世界に迷い込んだ”事情”ですわ。」

「「「………………………」」」

ミュゼが全ての説明を終えるとミシェル達はそれぞれ厳しい表情を浮かべて黙り込み

「………参ったわね…………絶対に未然に防ぐべき大事件がいくつもあるけど、どう考えても遊撃士協会(アタシ達)や七耀教会だけじゃ、未然に防ぐ事ができないわね……」

「そうね……帝都(ヘイムダル)での夏至祭までに起こった大事件に関しては実際の被害は大した事なかったみたいだし、一応解決はしているみたいだから、そちらに関してはリィン君達に任せても構わないとは思うんだけど………」

「………問題は夏至祭でのバルヘイム宮で起こったユーゲント皇帝への銃撃事件で、その事件によってエレボニア帝国とカルバード共和国―――いや、メンフィル・クロスベル連合軍との戦争勃発、そして”鉄血宰相”達の目的――――”巨イナル黄昏”とやらを利用して1200年前からエレボニア帝国内で存在した”至宝”によって生まれた”呪い”を完成させる事、そしてオリヴァルト皇子達が乗ったカレイジャスが爆破される事だね………」

我に返ったミシェルは疲れた表情で大きな溜息を吐き、エオリアは複雑そうな表情で呟き、リンは真剣な表情で考え込みながら呟いた。

「………せめて、こちらの世界のわたし達もそうですがリィン教官もわたし達の世界のリィン教官のようになって欲しくないんです………それに………ミリアムさんも………」

「アルティナさん………」

「アルティナの言う通りだ………例え世界が違えど、こちらの世界の僕達を……教官達やオリヴァルト殿下達が今の僕達の世界のようになって欲しくない気持ちは僕達も同じだ。」

「そうね……あたし達もこの世界のあたし達が今のあたし達にならないように、何とかする事が絶対あるはずよ……!」

辛そうな表情で呟いたアルティナの様子をミュゼは心配そうな表情で見つめ、クルトとユウナは決意の表情を浮かべた。

「う、う~ん……決意を改めている所に水を差すようで悪いけど正直他の人物達の件はともかく、こっちの世界の灰色の騎士の坊やの事はあまり心配する必要はないと思うわよ?」

「へ……ど、どうしてですか?」

ミシェルから意外な指摘を受けたユウナは困惑の表情で訊ねた。

「……それは灰色の騎士の坊やの8人の婚約者の内、何人かがとんでもない存在――――異世界に存在している異種族の中でもトップクラスの存在だからよ。」

「教官の婚約者達の何人かがとんでもない存在って、一体その人達はどんな存在なんですか?」

「まあ、簡単に説明すると精霊の女王に竜族の姫君、後は魔王と女神よ。」

ミシェルの答えを聞いて新たなる質問をしてきたユウナの質問にエオリアが苦笑しながら答えるとユウナ達は石化したかのように固まり

「えええええええええええええええっ!?な、なななななな、何なんですか、その滅茶苦茶な婚約者の人達は~~~~!?」

「精霊の女王や竜族の姫君を婚約者にする事自体が信じられないのに、魔王と女神を同時に婚約者にするとかこの世界のリィン教官は一体どうなっているんだ……?」

「……というかその教官の婚約者達がいれば”黒キ星杯”でわたし達の前を阻んだ人達全員を無力化できる上”黒き聖獣”やエレボニアの”呪い”も何とかできるような気がするのですが。」

「クスクス、そのような超越した存在に愛されるなんてどうやらこの世界のリィン教官は殿方としてとても魅力的な方なのでしょうね♪」

我に返ったユウナは驚きの声を上げ、クルトは疲れた表情で呟き、アルティナはジト目で推測し、ミュゼは小悪魔な笑みを浮かべた。



「話を戻すけど………問題はさっきリンが言っていた帝都での夏至祭以降に次々に起こる大事件を何とかする事でしょうね。そしてそれらの大事件を未然に防ぐ為にはどう考えても、メンフィル帝国の協力が鍵になってくるわ。」

「”メンフィル帝国”……エレボニアを2度も敗戦させ、こちらの世界の教官の祖国でもある異世界の大国ですか。何故、そのメンフィル帝国という国の協力が鍵となってくるのでしょうか?」

ミシェルの話を聞いてある事が気になったクルトはミシェルに訊ねた。

「さっきも説明したように異世界―――”ディル=リフィーナ”はゼムリア大陸にとって空想上の存在がいる事もそうだけど、実際に”ディル=リフィーナ”に行ったことがあるゼムリア大陸出身の人達の情報から推測すると”ディル=リフィーナ”は科学技術が発達しているゼムリア大陸と違って、魔法技術の方が発達しているっぽいなのよ。」

「当然魔法技術の中には”魔術”――――戦術オーブメントを使わずに魔法(アーツ)を放つ技術もあるよ。星見の塔でもエオリアがあんた達と一緒に戦った手配魔獣に止めを刺す前に放っていただろう?」

「あ……っ!」

「あの時の頭上から光を降り注がせる魔法(アーツ)か……確かにあのような魔法(アーツ)は少なくてもARCUSⅡでは存在していないな……」

「という事はエオリアさんはエマさんや”蒼の深淵”のような事ができるのでしょうか?」

「う~ん……私達はその人達の魔術を見た事がないから何とも言えないけど、少なくても魔術の体系は異なるはずよ。異世界の魔法なんだから。」

ミシェルとリンの話を聞いて星見の塔での戦いを思い出したユウナは声を上げ、クルトは静かな表情で呟き、アルティナに訊ねられたエオリアは苦笑しながら答えた。



「魔法技術が発展している………――なるほど。もしかしたら、”国と言う規模”で魔法技術を扱っているメンフィル帝国ならば、”大イナル黄昏”への対抗策や無力化する方法、エレボニア帝国に根付いている”呪い”を何とかする方法を知っている、もしくは開発する事も可能だとミシェルさん達は予想していらっしゃっているのですね?」

「ええ。そこに加えてメンフィルは”全ての種族との共存”を目指す事を公言しているだけあって、様々な異種族がメンフィル帝国に住んでいたり、協力関係を結んでいるわ。例えばゼムリア大陸にとっては空想上の存在であるエルフや妖精、獣人や悪魔、それに天使とかね。」

「そんなにも多くの異種族達が”メンフィル帝国”という国によって、共存しているのですか………」

「エルフや妖精、獣人とかはまだわかるけど、普通に考えたら争う関係の悪魔と天使が共存しているってどうなっているのよ……」

「ですが、様々な異種族達が協力関係を結んでいるのですから、”呪い”の類への対抗策等もありそうですね。」

ミュゼの推測に頷いて説明したミシェルの答えを聞いたクルトは驚き、ユウナは疲れた表情で呟き、アルティナは真剣な表情で呟いた。

「更にメンフィルの使い手達の中には当然魔術関係に秀でている使い手もいて、その中には魔術一つで”軍”を壊滅に陥らせる程の被害を与える”戦略級魔術”や”神”を戦場に召喚して、その召喚した”神”に自分達の敵全てを殲滅できるような使い手もいると聞いているわ。」

「ええっ!?魔術一つで軍を壊滅に陥らせるどころか、神様を戦場に召喚して神様の力で殲滅するって……!」

「……少なくてもローゼリアさんやクロチルダさんをも遥かに超える魔道の使い手なのでしょうね、そのメンフィルの魔道の使い手の方々は。」

ミシェルの説明を補足したエオリアの話を聞いたユウナは驚き、ミュゼは真剣な表情で呟いた。

「魔法技術の件で気づいた事があるけど……メンフィルは自分達の世界とこのゼムリア大陸を繋ぐ転移門を管理しているらしいから、それを考えると、あんた達が自分達の世界に帰還する為にはメンフィルの協力も必要になってくると思うよ。」

「あ………」

「なるほど……世界間の移動を既にしているから、可能性はありそうですね。問題はその技術が並行世界への移動かつ時間移動にも応用できるか、か……」

リンの推測を聞いたアルティナは呆け、クルトは真剣な表情で頷いた後考え込んだ。

「その件だけど………並行世界はわからないけど、時間移動だったら”時”を自由自在に操れる上過去、未来と言った”世界の時間移動”までできる能力を持つ人物が実は遊撃士協会に所属しているから、時間移動に関してはその人物に頼めばいいだけだからアタシ達はあんまり問題にしていないのよねぇ……」

「ええっ!?と、”時”を自由自在に操れる上”時間移動”までできる人物が遊撃士協会に所属しているって……!」

「ふふっ、まさに”遊撃士協会の人脈恐るべし”、と言った所でしょうか。」

「いや、それでも限度があるだろう………」

「何にしても、その人物もわたし達が自分達の世界に帰還する為に必須となる人物になるでしょうね。」

苦笑しながら答えたミシェルの説明を聞いたユウナは信じられない表情で声を上げ、微笑みながら答えたミュゼにクルトは呆れた表情で指摘し、アルティナは静かな表情で推測した。



「話をメンフィルの件に戻すけど………メンフィルはエレボニアを2度も敗戦させた程の強国だけあって軍は精鋭揃いの上特に皇族や将軍クラスに関してはとんでもない使い手ばかりで、前皇帝の”英雄王”リウイ・マーシルン前皇帝は強者揃いのメンフィルでもトップクラスの実力を持っているだけあって”七日戦役”で”結社最強の”執行者”――――No.Ⅰ”劫焔のマクバーン”を無傷で討ち取ったらしいのよ。」

「それと1年半前の時点で”英雄王”を含めたメンフィルの精鋭部隊によって結社の”盟主”や”蛇の使徒”の約半数が討ち取られた事で、トップや最高幹部の半数を失った今の結社は”残党”と化した事で”裏”の勢力としてはかなり衰退していると推測されているわ。」

「更に補足すると”西風の旅団”、”赤い星座”も過去結社に雇われた事でメンフィル軍とぶつかり合った事によって両団長を討ち取られた事に加えてかなりの数の死者を出したことで、双方の猟兵団が衰退したのもメンフィルが原因と言っても過言ではないね。」

「な――――――」

「あの”劫焔”を無傷で………」

「し、しかもあの結社や”西風の旅団”、それに”赤い星座”が衰退するって、どれだけ滅茶苦茶強いのよ、そのメンフィルって国は………」

「なるほど……戦力面に関してもそのメンフィル帝国の協力があれば、全ての敵勢力が連合を組んだ宰相側への対抗策になるでしょうね。」

ミシェル達の話を聞き、メンフィル帝国の凄まじき強さを知ったクルトは絶句し、アルティナとユウナは信じられない表情をし、ミュゼは静かな表情で呟いた。

「しかもそこに加えて、メンフィルには様々な理由によって結社の使い手達の一部も結社から寝返ってメンフィルに所属していて、その使い手の中には”劫焔”と並ぶもう一人の”結社最強”であるあの”鋼の聖女”アリアンロードもいるのよ?」

「えええええええええええええええっ!?」

「一体何があって、あの”鋼の聖女”が結社を寝返って別の組織―――いや、”国”に転属したんだ……?」

「というか今までの話から判断すると現時点で、”結社”に関しては相当戦力が低下している気がするのですが。」

「ふふっ、よりにもよって”結社最強”である二人の人物が味方の勢力に寝返っている、もしくは既に死亡していますものね。」

エオリアの話を聞いて更なる驚愕の事実を知ったユウナは驚きの声を上げ、クルトは疲れた表情で呟き、ジト目で呟いたアルティナの推測にミュゼは苦笑しながら同意した。



「ちなみにその”鋼の聖女”なんだけど、あたし達の世界ではあんた達の学校の”分校長”を務めているらしいよ。」

「………………………」

「あの”鋼の聖女”が第Ⅱ分校の”分校長”に………」

「レンさんの件といい、こちらの世界の第Ⅱ分校の教官陣は相当カオスな事になっていそうですね。」

「ふふっ、そうですわね。ちなみに私達の世界の分校長はオーレリア将軍閣下ですが……こちらの世界の将軍はどのような立場なのでしょうか?」

リンの話を聞いたユウナは驚きのあまり口をパクパクさせ、クルトは信じられない表情をし、アルティナはジト目で呟き、ある事が気になったミュゼはミシェル達に訊ねた。

「あら、そちらの世界の”黄金の羅刹”はそんな事になっていたの…………アタシ達の世界の”黄金の羅刹”は既に”戦死”―――死亡しているわ。それも”七日戦役”でのメンフィル帝国との戦闘によってね。」

「な―――――」

「ええっ!?あ、あの分校長が”戦死”!?」

「それも、”七日戦役”でのメンフィル帝国軍との戦闘によって、ですか。」

「あの化物を殺せるなんて、正直信じられないのですが………」

ミシェルの話を聞いたクルトとユウナは驚き、ミュゼは真剣な表情で呟き、アルティナは困惑の表情を浮かべた。

「その”化物”の上を行く”化物以上の存在”がゴロゴロいるのがメンフィル―――いえ、異世界なのよね………ちなみに、これは余談だけどその”七日戦役”で”英雄王”の右腕にしてメンフィル帝国の古参の将軍――――”空の覇者”ファーミシルス大将軍が貴族連合軍側に協力していた”騎神”を生身かつ単独で撃退した事がある上、最近では昨日行われた結社によるハーメル村での”実験”の際に灰色の騎士の坊やを含めたメンフィルの使い手達があの血染め―――いえ、”紅の戦鬼”シャーリィ・オルランドを討ち取ったわ。」

「え……………」

「ええっ!?き、教官があの”紅の戦鬼”を……!?……………」

「しかもその”空の覇者”という人物は生身かつ単独で”騎神”を撃退できるほど戦闘能力が高いのですか………」

「それに”昨日行われたハーメル村での実験”という事はこちらの世界の”今”は、最初の”特別演習”の最終日だったのか………ユウナ?どうかしたのか?」

疲れた表情で溜息を吐いた後説明をしたミシェルの説明を聞いたアルティナは呆け、ユウナは驚きの声を上げた後複雑そうな表情をし、ミュゼと共に真剣な表情を浮かべたクルトは複雑そうな表情を浮かべたユウナに気づいてユウナに声をかけた。



「あ、うん……………例え世界は違っても、教官が敵―――”人”を殺している事にちょっとショックを受けちゃって………」

「それは…………」

「ユウナさん…………」

「……………こちらの世界の教官は元々メンフィル帝国の”軍人”だったとの事ですから、既にそう言った経験があってもおかしくはないかと。ちなみに先程”七日戦役”が両帝国による和解という形で終結したのは、リィン教官が”七日戦役”で大きな手柄―――戦功を立て、その戦功を評したメンフィル帝国が教官の要望であるエレボニア帝国との和解に応じたとの事ですが、その戦功の内容とはどのようなものなのでしょうか?」

複雑そうな表情で呟いたユウナの言葉を聞いたクルトとアルティナが辛そうな表情をしている中静かな表情で呟いたミュゼはミシェル達に訊ねた。

「えっと確か………”バリアハート制圧作戦”ではユミル襲撃の元凶のアルバレア公爵の討伐並びに”光の剣匠”を含めたアルバレアの次男の救出に来た旧Ⅶ組とその協力者達の撃退、”パンダグリュエル制圧作戦”では貴族連合軍の総参謀のルーファス・アルバレアの討伐が灰色の騎士の坊やの”七日戦役”での戦功よ。」

「まあ、旧Ⅶ組撃退に関しては”灰色の騎士”一人だけの力じゃなくて、”灰色の騎士”と一緒に作戦活動を行っていたメンフィル帝国軍の小部隊の隊員達や”灰色の騎士”の婚約者達の協力もあって、撃退できたらしいけどね。」

「ええっ!?という事はユーシスさんのお父さんどころか、ユーシスさんのお兄さんのルーファス総督まで教官が……!?」

「という事はこの世界ではアルバレア公に加えて”鉄血の子供達(アイアンブリード)”の”筆頭”であるルーファス総督も既に亡くなっているという事ですか………」

「しかもユーシスさんを救出に来た旧Ⅶ組の皆さんを撃退したという事は、こちらの世界のリィン教官は”七日戦役”で旧Ⅶ組とは”敵対関係”だったのですか………」

「更にその旧Ⅶ組の協力者の中には子爵閣下も含まれていたという事は、こちらの世界の教官は仲間の協力があったとはいえ旧Ⅶ組に加えてエレボニアで5本の指に入る帝国最高の剣士の一人にして”アルゼイド流”の師範である子爵閣下をも撃退できるほどの戦闘能力が高いのですか………」

ミシェルとリンの話を聞いたユウナは驚き、ミュゼは真剣な表情で呟き、アルティナは複雑そうな表情を浮かべ、クルトは重々しい様子を纏って呟いた。



「そちらの世界のリィン君の戦闘能力はどれ程かわからないけど、こちらの世界のリィン君は”八葉一刀流”の現在の伝位は”中伝”らしいけど、それはあくまで彼の師である”剣仙”ユン・カーファイが最近のリィン君と会う機会が無いからその伝位の状態の話なだけで、実際のリィン君の実力は”鬼の力”無しでも”皆伝”――――”剣聖”クラスと同等よ。」

「きょ、教官があのアリオスさん―――”風の剣聖”と同じくらいの強さって……!」

「しかも”鬼の力”も使わずにそのレベルという事は”鬼の力”を解放すれば一体どれ程の戦闘能力になるんだ……?」

「ふふっ、こちらの世界の教官は更に魅力が増していますから、ますますこちらの世界の私が羨ましいですわ♪」

「ミュゼさん、論点がズレていますよ。………それにしても、”七日戦役”での教官の戦功の件を聞いて疑問が出て来たのですが……教官と旧Ⅶ組は敵対関係だったにも関わらず、何故旧Ⅶ組のメンバーであるアリサさんと教官は婚約関係を結んでいるのでしょうか?」

異なる世界のリィンの強さが自分達が知るリィンより遥かに強い事にユウナとクルトは信じられない表情をし、異なる世界の自分を羨ましがっているミュゼに呆れた表情で指摘したアルティナはある事を思い出して戸惑いの表情で訊ねた。

「アタシ達も詳しい経緯は知らないけど、さっき説明した”七日戦役”での和解条約によって灰色の騎士の坊やを含めたエレボニアの内戦に介入して内戦を終結させる為にメンフィル帝国が結成した精鋭部隊――――”特務部隊”が旧Ⅶ組と一緒に内戦終結の為に約2週間くらい一緒に行動していたから、その間に仲良くなったのじゃないかしら?何せ灰色の騎士の坊やの”たらし”な性格に関してはそちらの世界の灰色の騎士の坊やと同じだと思うしね。」

「………確かに、教官の”あの性格”を考えれば納得ですね。」

「というか特に”そっちの方面”に関してはとんでもない無自覚かつ鈍感で、そんな性格でありながら二人も恋人がいる事自体が”奇蹟”のような状況なのに、たった2週間で敵対関係だったアリサさんを落として婚約関係にまで発展するって、こっちの世界の教官はあたし達が知っている教官の予想斜め上な性格をしているのかもしれないわね。」

「ふふっ、それと罪深い性格をしていらっしゃっている所に関しては私達がよく知っている教官と同じみたいですわね♪」

「ふう……少なくても、今までの話から推測するとこちらの世界の教官は良くも悪くも”あらゆる意味”で僕達の世界の教官より”上”である事はよくわかったな……」

苦笑しながら答えたミシェルの答えを聞いた瞬間冷や汗をかいて脱力したユウナとアルティナはジト目でリィンの顔を思い浮かべ、ミュゼは小悪魔な笑みを浮かべ、クルトは呆れた表情で溜息を吐いた。



「何だか色々と話が逸れちゃったから話をメンフィル帝国の件に戻すけど………メンフィル帝国を介さないと”匠王”達やセリカ達に協力を頼む事も厳しいのよね。」

「その方達は一体どのような方達なのでしょうか?」

溜息を吐いて呟いたミシェルの説明が気になったクルトはミシェルに訊ねた。

「まず”匠王”についてだけど……”匠王”ウィルフレド・ディオンはメンフィル帝国と親交がある異世界にある工匠都市―――”ユイドラ”の領主で、ゼムリア大陸では最高峰の技術者と謳われているわ。」

「ちなみに”工匠”って言うのは”あらゆる分野の技術者”の事よ。それとこれは余談になるけど”匠王”の娘達―――セティちゃん達も”特務支援課”に所属していた事もあったわ。」

「ええっ!?リィン教官に加えてその”匠王”って人の娘さん達も”特務支援課”に所属していた事があるんですか……!?」

ミシェルとエオリアの話を聞いたユウナは驚き

「”あらゆる分野の技術者”という事は例えば、武具の技術だけでなく薬等の他の技術も同時に修めているという事でしょうか?」

「ええ。実際D∴G教団事件ではグノーシスの解毒薬もセティちゃん達が作った事がある上ロイド君達の武装も作った事があるし、アルティナちゃんの傀儡―――クラウ=ソラスだっけ?アルティナちゃんがリィン君達に引き取られて以降、クラウ=ソラスのメンテナンスはセティちゃん達が担当している話を聞いた事があるわ。」

「クラウ=ソラスの………」

「し、しかもあの”グノーシス”の解毒薬を作ったって……!」

「”工匠”という存在はとてつもない技術者である事は間違いないようだな。」

ミュゼの疑問に答えたエオリアの説明を聞いたアルティナとユウナがそれぞれ驚いている中、クルトは真剣な表情で呟いた。

「それとこれは余談だけどこっちの世界のアルティナちゃんはセティちゃん達が作った”成長促進剤”のお陰で身体が普通の人間のように成長しているらしいわよ♪」

人造人間(ホムンクルス)のわたしがユウナさん達のように身体的な成長を………あの。その”成長促進剤”とやらを開発した方々は今、どちらにいらっしゃるのでしょうか?できれば、わたしもその”成長促進剤”を入手したいのですが……」

「君な……今はそんな事を聞いている場合じゃないぞ……」

「ふふ、特殊な事情をお持ちの為今後の身体的な成長を期待する事が厳しいアルティナさんがこちらの世界で実際に身体的な成長をしているのですから、自分も身体的な成長をする為に手に入れたくなる事は乙女として当然の事かと♪」

エオリアの話を聞いて驚いた後興味ありげな様子で聞いてい来たアルティナの行動に冷や汗をかいて脱力したクルトは呆れた表情で指摘し、ミュゼはからかいの表情で答えた。



「ハハ、幸い”匠王”の娘達は今もこのクロスベルにいるから、時間が出来た時に会いに行けばいいんじゃないかい?あの娘達だったら、事情を話せば販売してくれると思うよ。」

「へ………その、”匠王”っていう存在の娘さん達は今もクロスベルにいるんですか?」

「いるもなにも今のあの娘達はこのクロスベルの”工匠特区”の開発顧問として、クロスベルにとっての重要人物達よ?」

苦笑しながら答えたリンの話を聞いて訊ねてきたユウナの質問にミシェルはユウナ達にとって驚きの情報を口にした。

「”工匠特区”、ですか……?」

「その方達が”開発顧問”と呼ばれている事からして、恐らくクロスベルのどこかの区域をその”工匠”という存在が集中している区域へと開発しているのでしょうか?」

「あら、中々察しがいいわね。――――”工匠特区”は”工匠”をゼムリア大陸にも広げる為に作られた開発区域の事でその区域は旧市街に当たる場所なんだけど、旧市街の人達は”匠王”の娘達が設立した会社―――”インフィニティ”とあの娘達の故郷である”工匠都市ユイドラ”の援助や教育のお陰で”工匠”になる事で、以前とは比べものにならないくらい豊かな暮らしをしているわ。」

「まあ、そもそも”工匠”自身、セティ達を除けばゼムリア大陸に存在しなかったからね。その事から、ゼムリア大陸で唯一の”工匠”達が集まっている区域としても有名な場所で、その”工匠”達が作った商品を目的にした各国の商人達がクロスベルを訪れている影響でかつてクロスベル政府の頭を悩ましていた旧市街は今じゃクロスベルの発展や経済の一端を担う区域へと成長しているのさ。」

「………………………」

”工匠特区”の事を知り、クルト達と共に冷や汗をかいて表情を引き攣らせたユウナは驚きのあまり口をパクパクさせ

「今までの話を聞いて改めて思ったがエレボニアもそうだが、こちらの世界ではクロスベルが一番状況が変わっている気がするな………」

「ふふっ、まず”自治州”だったクロスベルが独立をするどころかエレボニアをも超える大国へと成りあがるなんて、普通は誰も想像できませんもの。」

我に返って疲れた表情で溜息を吐いたクルトにミュゼは苦笑しながら指摘した。



「ちなみにユイドラはメンフィルのように様々な種族が協力して成り立っている都市でもあってね………ユイドラがそうなったのも領主である”匠王”が領主になるまでの間に数多くの異種族達と親交を深めた事のお陰らしいわ。その証拠に”匠王”の伴侶の大半は異種族で、さっきの話に出て来た”匠王”の娘達はそれぞれエルフ族に天使族、そして睡魔族……と言ってもわからないでしょうから簡単に説明すれば悪魔の一種の種族の母親から生まれた人間と異種族のハーフの子供達よ。」

「クロスベルは光と闇が混在している事から”魔都”とも呼ばれていたそうですが………その時以上のカオスな状況になっているのではないでしょうか?」

「ああ………まさにその名の通り”光と闇の帝都”だな。」

ミシェルの話を聞いてユウナ達と共に冷や汗をかいたアルティナはジト目で呟き、クルトは疲れた表情で呟いた。

「話が色々と逸れてしまいましたが……話に聞く所、その”工匠”という存在は相当幅広い分野に通じている事から推測すると、その方達もメンフィル帝国同様、”大イナル黄昏”への対抗策となる物の開発の可能性もある為その方達の協力も必要との事でしょうか?」

「ええ。それどころか、”工匠”達ならその”大イナル黄昏”の原因となる”黒き聖獣”とやらを”呪い”ごと、消滅させるような武器も作れる気がするわ。」

「ええっ!?」

「という事はゼムリアストーン製を遥かに超える武装をその”工匠”達ならば作成が可能……という事か。」

「しかも異世界ですから、異世界にしか存在しない鉱石を始めとした材料等も考えるとそれこそ古代遺物(アーティファクト)―――いえ、下手をすれば”至宝”と同等の存在をも作る事ができるかもしれませんね。」

ミュゼの推測に頷いたエオリアの説明を聞いたユウナは驚きの声を上げ、クルトとミュゼは真剣な表情で推測した。

「さすがに”古代遺物(アーティファクト)”や”至宝”と同等の物を開発するような非常識な技術力はないのでは?」

「ア、アハハ……アルティナちゃんの推測は普通に考えればその通りなんだけど、それがそうでもないのよね……」

「へ……それって、どういう意味ですか?」

「だって、セティちゃん達もそうだけど”匠王”も既に古代遺物(アーティファクト)クラスどころか、”神剣”のような”神器”クラスの武装を開発した事があるもの。」

アルティナの推測を苦笑しながら否定した自分に訊ねたユウナの質問にエオリアが答えるとユウナ達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「何か……色々な意味で非常識な職人みたいね、その”工匠”って。」

「はい。まさに”職人版の化物”ですね、その”工匠”という人物達は。」

「ふふっ、そのようですわね。ですが、少なくてもかの”黒の工房”をも遥かに超える技術者達である事は間違いないでしょうね。」

「ああ…………少なくても今の話でその”匠王”やそのご息女である人物達も、宰相達の野望を阻止する為に必要な人物達である事は理解できるな………ちなみに、もう片方―――”セリカ”という人物やその仲間と思われる人物達はどのような存在なのでしょうか?」

我に返ってジト目で呟いたユウナとアルティナの推測に苦笑しながら同意したミュゼは気を取り直して表情を引き締めて呟き、ミュゼの意見に頷いたクルトは新たな質問をした。

「――――セリカ・シルフィル。アタシ達の世界では”嵐の剣神”なんて異名で呼ばれているけど、本来の異名は”神殺し”って異名で呼ばれている”双界最強の剣士”と言っても過言ではない超が付く凄腕の剣士―――いえ、魔法剣士よ。」

「か、”神殺し”……っ!?何なんですか、その滅茶苦茶物騒な異名は……!?」

「今までの話に出て来た異世界の使い手達を考えると推測通り……いえ、それ以上の非常識な存在が出てきましたね。」

「ふふっ、普通に考えたらその異名通り”神”を”殺した”人物のように聞こえますが………」

「しかも”双界最強の剣士”と言われるほどの魔法剣士という事は魔術の使い手でありながら、相当な腕前の剣士でもあるのか………一体、どれ程の使い手だ……?」

ある人物の説明をミシェルから受けたユウナは信じられない表情で声を上げ、アルティナは疲れた表情で呟き、ミュゼは苦笑し、クルトは興味ありげな表情を浮かべた。



「ちなみにその”嵐の剣神”―――セリカさんは1年半前様々な経緯によってこのクロスベル支部にサポーターとして協力してくれた上D∴教団事件やクロスベル動乱の解決にも力を貸してくれたんだけど………その際に、色々あってそこのエオリアはそのセリカさんのハーレムの一員になったのさ。」

「ちょっと、リン?他にも言い方があるでしょう?せめて、メイドって言ってよ。私は”レシェンテちゃん達と同じ存在”になっているのだから。」

「えええええええええええええええっ!?凄い美人で性格もかなり良くてその事からたくさんの男の人達からモテているのに、ティオ先輩みたいな可愛い女の子しか興味がない事から若干”百合”方面なんじゃないかって思っていた残念美人のエオリアさんに恋人……しかも、教官やロイド先輩みたいに複数の女性を恋人にしている人の恋人~~~!?」

リンに指を刺されたエオリアがジト目で反論したその時、ユウナは驚きの声を上げた。

「”百合方面”とはどの方面の事を言うのでしょうか……?」

「ふふっ、それもまた”乙女の嗜み”―――いえ、この場合”殿方の嗜み”と言った方がいいでしょうか♪」

「いや、僕も意味がわからないんだが………」

ユウナの話を聞いてある事がわからないアルティナの質問に微笑みを浮かべて誤魔化したミュゼに視線を向けられたクルトは疲れた表情で答え

「へ、へえ?ユウナちゃんったら、私の事をそんな風に見ていたんだ?という事はこの世界のユウナちゃんも、私の事をそんな風に見ているという事になるわよね……?」

「あ”。」

「ハア………そんな事を言われて気にするくらいなら、その悪癖を人前で出さなければいいだけの話じゃない………」

「まあ、エオリアには一生無理だろうねぇ………」

顔に青筋を立てて威圧を纏った笑顔を浮かべたエオリアに見つめられたユウナは失言を口にしてしまった事に気づいて冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、その様子を見守っていたミシェルとリンは呆れた表情で溜息を吐いた。



「ハア……まあ、エオリアの件云々については一端置いて………”神殺し”という異名で呼ばれている事からセリカも”神”と同等の存在らしいわ。しかもセリカの仲間達もみんなとんでもない使い手ばかりで、その仲間の中には女神や魔王の一柱、教会の”聖典”や伝承で出てくるような”戦乙女(ヴァルキリー)”を召喚して使役する仲間もいるから、ぶっちゃけセリカ達がいれば、アナタ達の説明にあった”巨イナル黄昏”やらエレボニア帝国の”呪い”やらも全部”力技”――――要するに神やら魔王の力で”全て消し飛ばす事”で解決できるのじゃないかしらと思っているわ。」

「ち、”力技”で全部解決って………」

「確かに話から推測すると非常識過ぎる存在の集団のようですから、冗談抜きで”力技”で何とかできそうですね。」

「今までの話を総合すると、”ディル=リフィーナ”という異世界はゼムリア大陸にとってはとんでもない”魔境”のようだな……」

「フフ、逆に考えれば黒の工房や結社―――宰相達の”力”すらも通じないような凄まじい存在が多数存在しているようですから、そのような方々の協力を取り付ける事ができれば、宰相達の野望を確実に阻止できるかと。――――ですが、問題は”こちらの世界のリィン教官の嘆願がなければエレボニア帝国を滅ぼしていた可能性があるメンフィル帝国に戦争相手であったエレボニア帝国が原因で起こりうるであろう大事件を阻止する為にどう協力を取り付けるか”、ですか。」

ミシェルの説明を聞いたユウナは表情を引き攣らせ、アルティナとクルトは疲れた表情で呟き、ミュゼは微笑みながら指摘した後表情を引き締めてある問題を口にした―――――
 
 

 
後書き
メンフィルの話になった際のBGMは幻燐2の”荒野をわたりて”かVERITAの”覇道”、神採りの話になった際のBGMは神採りの”Ars Magna Ver.L”か”Ars Magna Ver.L”、戦女神の話になった際のBGMはLadiaの”La erteno”か”戦女神 Second half Loop”だとおもってください。 
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