NEIGHBOR EATER
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EATING 2
「なんだコレ?」
巨体の<死>から出てきた黒い板。
その板はとてもおぞましい雰囲気を漂わせていた。
形や大きさは他の物と同じだが、その色は恐怖を感じさせるほどおぞましい闇。
これは喰ってはいけない、本能に身を任せる中での理性が喰らう事を止める。
『喰らえ!力を!』
本能がこれを喰らえ、喰らえばもっと力が手に入ると囁く。
そして俺の理性は本能と好奇心と快感欲求の前に儚く崩れ落ちた。
黒い板を、口元に近づける。
理性が警鐘を鳴らす。
板を口に入れ、呑み込む。
ドクン!
「グゥッ!あぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"」
力が込み上げて来る!でも…多すぎる!
体が中から吹き飛びそうだ!
「あぁぁぁ!ぁぁぁ!」
ビキッ!ボキン!
「ぎ!ガァァァァァァァ!」
脚が、腕が、引き裂かれる。
全身の筋肉が、臓器が、骨が、神経が、ぐちゃぐちゃにされる。
ブチィ!ビキィ!
「あー!…あ、…ー…!ー!」
体がバラバラになるような痛みにのたうち周り、声を枯らし叫び続けた。
嫌だ!死にたくない!折角<死>から逃げたのに…
「死にたくない!」
そう叫んだ刹那、全身を蝕んでいた莫大な力が収まっていった。
「コヒュー…コヒュー…」
もう、全身が引き裂かれるような痛みは無い。
「あ"ー…生きてる…」
ムクリと起き上がる…
「はぁ…はぁ…さっきの黒いの…何だったんだろう…」
まぁ、いい。黒い板はこれ以上喰らえば死ぬかも知れないが、普通の板なら大丈夫だろう。
そう思い、すっくと立ち上がる、髪が靡いた。
髪?俺は短髪のはずだが…
うなじに手をやると長い髪が有った。
曇天の中、僅かな光を受け虹色に煌めく髪。
掴んだ手も雪のように白かった。
気になって崩壊したビルのガラスに身を写したら、
頭のうえに輪が、腰に翼が有った。
まるで天使だ。
さっきの黒い板のせいだろうか、そんな事を考えつつも次の獲物を狩るべく歩み出す。
虹色の髪?白い肌?天使の輪と翼?
どうでもいい、些細な事だ。
それよりも板だ、淡く光る六角形の板。
「もっと、喰いたい」
俺は知り得ぬはずの力を使い、蒼穹を飛ぶ。
遠くに見える五十階建のビルの高さを目標に上昇する。
チカッ!
視界の端で何かが光った。
キュイィン…バシュォォォォォォ!
「!」
振り向くと光の<死>が俺に向かい、光を放っていた。
咄嗟に手をクロスさせ、自らを翼で包み込む。
死をもたらす光の奔流に呑み込まれ、数秒。
何も感じない。
熱くもない、痛くもない。
光の奔流が止まった。
無傷、火傷も裂傷もない、服も燃えてない。
「ヒャハ!」
光の<死>に向け、手をかざす。
キュオォォォォォォォ………
溢れる力を、手に集める。
やがてビー玉くらいの大きさの珠ができた。
「死ねよ」
珠は俺の望んだ道筋を駆け抜けた。
ピチュン…
と、光の<死>の眼を貫き
ズドォォォォォォォッオオオオオン!!
大地を抉った。
「あはははは!すげー!楽しい!」
俺は崩れ落ちた光の<死>の下へ翔んだ。
巨体の<死>は粉々に吹き飛んでいた。
中の人?どうでもいい。
板は辛うじて残っていた。
でも今までの半分くらいだ。
半分は吹き飛んだか、そもそも持ってないか。
板を喰って、再び翔ぶ。
翔べば効率よく巨体の<死>を見つけられるからだ。
翔んでいると、二輪の<死>が群がって来た。
攻撃はして来ない。
ただ、口の中の眼がこちらをじっと見ていた。
鬱陶しくなってきた。
掌に力を集める。
さっきよりも多く、強く。
依然としてこちらを見ているだけの二輪の<死>達。
「墜ォォちろォォォォ!」
放たれた珠が一条の残像を残して、二輪の<死>達を貫いた。
地上に墜ちていく二輪の<死>達。
「ふふ、あはは、はは、はは!」
side out
side SHINODA
「林道さん!まだか!」
ジープの助手席から運転席に向かって叫んだ。
「今急いでんでしょ!」
クソッ!
私は心の中で悪態をつく。
これまで、ネイバーに対抗するために日夜訓練を積んで来た。
三門市にゲートが開き急行しているが、既に手遅れかもしれない。
こちらの世界にはネイバーに対抗する手段は無い。
トリオン兵に火砲は効かない。
同じトリオンによる攻撃でない限り戦車の砲も防ぐだろう。
「忍田さん!」
迅に呼ばれて顔を上げると街が見えた。
「コレは…酷いな」
街からは黒々とした煙が上がり、街が如何なる状態かを表していた。
「クソッ!遅かったか!」
「そんな事を言ってる場合じゃないだろう!飛ばすぞ!」
「ん?何だコイツ…」
後ろから声が聞こえた
「どうした、迅?」
「いや、なんか、なんて言うか…」
迅、コイツには未来が見える、と言っても自分が関わった人間の未来しか見えない。
「街で戦ってる奴が居る」
なんだと?
「どういう事だ」
「解らない、でも、バラバラになったネイバーのイメージが見えた」
「俺達以外の手でか?」
「たぶん」
ズドォォォォォォォッオオオオオン!!
「!」
何が起きた!?
前を向くと、巨大な爆発が見えた。
砲撃型でもあれ程の爆発は起こせない。
「いったいあの街で何が起こっている…?」
「ブラックトリガー…」
迅が呟いた。
「たまたまトリオン能力が高い者が居て、死に際に残した…」
「予知か?」
「いやいや、ただの仮説ですよ」
可能性は零ではないだろう、しかそうなると…
「厄介だな」
迅の仮説が正しかったとして、そのブラックトリガー使いが味方になるとは限らない。
我々はネイバーと同じ物で戦う、勘違いされて襲われる可能性だってある。
「ん?おい!迅!忍田さん!あれ!」
見ると先の爆心地から小さな光が昇っていった。
「まさか…アレか?」
「忍田さん、林道さん、イーグレット無い?」
確か林道さんが持っていた筈だが
「忍田さん、運転変わってくんないかな?」
「解った」
林道さんと席を代わる、その瞬間。
チカッ!
昇っていった光から別の光が迸った。
光が複雑な起動を描いたかと思うと、周りの偵察用飛行型トリオン兵が次々と墜ちていった。
ジャキン
林道さんがイーグレットを構えた。
「どうです?」
「少し待ってくれ」
光は空中を移動している。
「あ…あ、あぁ…」
林道さんがいきなりうめき声を上げた。
「どうした林道さん!」
「天使…」
天使?
「天使が、戦っている…」
「迅!」
私は呆けている林道さんを放って迅に声をかけた。
「はいはい」
チャキ…
迅がスコープを覗き込む。
「うっそだろ…マジかよ」
「どうした」
「子供が戦ってます、性別はわかりませんけど十歳…いや、それ以下…です」
「子供だと!?」
「天使みたいな格好してます」
子供…林道さんが呆けているのはそういう事か…
しかし何故?
「飛ばすぞ二人共!」
「忍田さん、援護しますか?」
「ダメだ、誤射はマズイ」
「了解」
子供が戦っている!俺達大人が、遅れる訳には行かない!
後書き
主人公の外見はグラデーション髪のショタフリューゲルです。
あと瞳に十字が入っています。
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