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歌集「冬寂月」

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三十一




 櫻花

  春空に咲き

   散りゆくは

 思ひ叶わぬ

    戀にぞ似たり



 満開になろうかと思う桜の花…瞬く間に咲き、刹那に散りゆく…。

 春の空に恋をし…永久に叶わないと知って散りゆくようで…。


 まるで…叶わない恋に似ている花だと…そう思ってしまうのは私だけだろうか…。



 春宵の

  風に惑ふは

   沈丁花

 届かぬ月の

   光り差したる



 日も暮れて…緩な風に惑うかのように、沈丁花の香りが舞っている…。

 恋に暮れたあの春にも…風に香っていたどこか懐かしいような匂い…。

 見上げれば、空高く月は昇り…優しい光を放っている…。


 月に手は届かない…記憶の中だけで笑うあの人のように…優しい光だけを落とすだけ…。



 
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