ロボスの娘で行ってみよう!
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第13話 第8艦隊出撃
リーファ活躍か?
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第13話 第8艦隊出撃
宇宙暦788年5月13日
■自由惑星同盟 ポレヴィト星系
第784年度士官候補生を乗せた、第8艦隊は演習地であるポレヴィト星系に到着した。此処は無人の恒星系で4つのガス状惑星があるだけであるので、訓練にはもってこいの星系であった。士官候補生達は赤軍、青軍に分かれて訓練を開始し戦場の空気に近い感じに慣れさせようとしていた。司令官シトレ中将が士官学校前校長であるので、その教育方法は理にかなっていた。
ポレヴィト星系での訓練は5日間の予定で組まれていた、2日間は何も無く終わりをつげ、3日目は補給訓練である、リーファ自身参謀役ではあるが、補給も専攻である為にこの補給にも携わっていた。
補給作業を行いながら、リーファは、エル・ファシルの戦いが6月1日にリンチ司令が逃げ出したという事しか知らない為に5月の何時敵襲があるのかが判らない為、気が気でなかった。補給訓練中の15日午後2時過ぎに第8艦隊にも、エル・ファシルに帝国艦隊襲来の第一報がもたらされた。
「司令官閣下、宇宙艦隊司令部より入電です」
「読んでくれ」
「はっ、発、宇宙艦隊司令部、宛、第8艦隊司令官。
本文、エル・ファシルに敵艦隊襲来すれど、敵数1000現地司令部にて対処可能」
うむ、ロボス候補生の言っていた状態に近いようだな、後で呼んで意見を聞いてみるか。
2時間後、補給訓練を終えたリーファはシトレ司令官の元へ出頭を求められた。
「ロボス候補生、シトレ閣下がお呼びです、艦橋までお願いします」
その話に同期が話かけてくる。
「リーファーなんかドジやったの?」
「いやしてないと思うけど、行ってくるよ」
「いってらー」
リーファにしては、遂に来るべきモノが来たのかという感じであったが、
あくまでそしらぬ顔で向かうのであった。
「司令官閣下、ロボス候補生参りました」
「御苦労、先ほどエル・ファシルに敵艦隊襲来したそうだ」
「それは」
リーファは此処で驚いてみせる、何分にも演技は大事である。
「現在の所、現地で対処可能だそうだ、貴官の論文のような事が起こらない事を祈るだけだな」
「はっ」
「今のところは、それだけだ、エル・ファシルについては直ぐに艦内放送するので喋っても大丈夫だ」
「失礼いたします」
部屋に帰るリーファを見つめながら、シトレはエル・ファシル陥落は、まあ考え過ぎかと思うのである。
部屋に帰る途中、艦内放送でエル・ファシルに敵襲があったと伝えられたが、殆どの候補生は他人事に考えて夕食の話をしていたのである。リーファ1人は此からエル・ファシルまで向かうルートを検索し運行計画を立てていたのである、この技能はイブリンと親友になった為に教わったことであった。
翌16日早朝、エル・ファシルから最後の連絡が傍受された、敵艦隊に敗北し籠城中であると。それ以降敵の妨害電波の影響でエル・ファシルからのFTLも途絶えてしまったのである。
シトレ司令は考えながら最悪の事態が起こったことを知った。
昨日の杞憂が本当になったという事なのであると。
早速、参謀達に援軍が可能かを訪ねだしたが、帝国軍が300万人を連れ去るとして最低でも3週間はかかると計算が出たが、航海参謀の計算ではこの星系からだと最速でも24日は掛かり時間的に間に合わないと言う返答に艦橋内は絶望感に包まれた。
そこへ、間違いなくエル・ファシルはやばいのを知っている。リーファが資料を抱えてやって来て平参謀に挨拶を行う。
「ロボス候補生、司令官閣下にお話があって参りました」
「今、司令官閣下は忙しいのだから、帰りたまえ」
平参謀が独断でリーファを追い返そうとするが、シトレが呼ぶように言う。
「ロボス候補生、貴官の論文のようにエル・ファシルが危機だ」
「司令官閣下、意見具申をお願い致します」
「候補生風情が何を言うのか!」
頭の固いアラルコン中佐が馬鹿にしたように罵る。
「止めたまえ中佐、候補生にはなにか意見があるのか」
「はっ、本艦隊でエル・ファシルへ急行するべきであります」
「それは私も考えたが、此の位置からでは間に合わないのだよ」
「所詮は素人のしかも女の浅知恵だな、考えが幼稚すぎる、
此で学年3席とは士官学校も落ちたモノですな」
分艦隊司令官ムーア准将が馬鹿にした様に呟く。
艦橋内でも無理だからこうして頭を抱えていると言う顔でリーファをひよっこだと言う空気である。
「司令官閣下、その計算を見せて頂けますか」
「良かろう」
シトレはリーファをかっている為に直ぐに許可を出す。
航海参謀から計算をモニターで見せて貰った後、頷きながら顔を上げた。
「この計算だと、確かに時間がかかりすぎます」
それ見たことかという顔をして暴言を吐く、ムーアやアラルコン。
「やはり駄目ではないか。さっさと部屋に帰るんだな」
「止めたまえ」
シトレ中将も此奴等には苦労している様であり、次回の人事で飛ばそうと思うのであった。
「閣下、この資料を見て下さい」
リーファがディスクを入れて、モニターに表示が出る。
「「「「これは・・・・」」」」
リーファの出した資料には、ポレヴィト星系からエル・ファシルを僅か15日で走破する計画が映し出されたのである。
「ポレヴィトでありったけの補給を行い補給艦は後続させます。ポレヴィト星系を出たあと、ランテマリオ、ケリムを通らずに、直接リューカス星系へ向かい、トリプラ星系を通り、シャンプール星系で補給を受けて一気にエル・ファシルへ向かいます」
呆気に取られる司令部。しかしKYはいるのである。
「馬鹿な、そんな非常識な航路があるか!だいち補給艦を切り離したら後で大変だ!」
「ムーア准将閣下、シャンプールには補給敞があります。そこで補給艦を臨時に編入すれば良いだけのことではないでしょうか?」
「貴官は、軍隊というモノを知らんのか!軍隊とは規則で成り立っているのだ!それを補給艦を現地で編入だと、馬鹿も休み休みいえ!」
「クリスチアン大尉。仰る事は確かに重要ですが、今は戦時です。確かに補給艦を現地で編入するのは邪道です。しかしその為に助けられる者も助けられないのでは、軍隊の存在意義が無いのではないですか?」
その言葉に頭に来たのか、いきなりクリスチアン大尉がリーファの頬を拳骨でパンチした。響き渡る音と共によろけるリーファだが、倒れることなく両足で立ち続ける。
艦橋内が騒然としてくる、リーファは鼻血をだし口からも血がにじみ出ている、
そして頬にはクッキリとクリスチアン大尉の手の痕が真っ赤に残っている。
更に指輪で付いた裂傷も頬に出来ていて血が流れている。
自由に討論させるつもりであったが手を挙げるなど、流石にシトレ司令官が怒り出す。
「クリスチアン大尉、貴官を拘束するMP、大尉を連れいけ!」
クリスチアン大尉はわめき散らすが、そのままMPに連れられていった。
その衝撃から多くの者が我に帰ると、直ぐに軍医が呼ばれて、リーファの診断をし始めた。
「頬骨が骨折していますし、頬の裂傷もありますし、眼球も鬱血しています。直ぐに処置しないといけません」
「軍医殿、あとどの位待てますか?」
「待つって、放っておくと一生残る傷が出来ます!」
「少しで良いんです、お願いします」
そう言うとリーファはシトレ司令に話しかける。
「閣下、義を見てせざるは勇無き成りという諺があります。
行けるならば行くべきです、後悔をしたくはありませんから」
「ロボス候補生・・・・」
艦橋内の多くがロボスの勇気と根性に感動していた。
ムーアやアラルコンは別としてだが。
2人は女だてらにとむかついていたからである。
「閣下、この資料とデスクに航路データーがあります、此を使えば安全にシャンプール星系まで13日でたどり着けます、そこで最終補給を行いつつ休息も可能です、補給後最終的に15日でエル・ファシルにたどり着けます」
そう言うとリーファは脳震盪でも起こしたのか崩れるように倒れた。
軍医が衛生兵に医務室へと運ぶように命じる。
「ロボス候補生の状態はどうなのか?」
「閣下、脳震盪でしょうがCTを撮って検査します」
「頼んだぞ」
「はっ」
リーファを乗せた、ストレッチャーと軍医が去ると、シトレは参謀連中にリーファプランの最終確認をさせた。その結果、可能性が大であると出た為、この作戦で行くことを決めるのである。
「ロボス候補生のプランに沿って作戦を行う、各員準備せよ!」
司令官が言い始めると文句も言わずに動く出すモノである。
補給艦から緊急に艦に詰める限りありったけのエネルギーと物資を積み込みを始める。
作戦参謀はリーファのプランを清書して宇宙艦隊司令部へとFTLの高速暗号通信で通信をおくるが、リーファの負傷については事態が切迫していた為に報告されなかった。一度動き出せば艦隊全体が有機的稼働を始めた。
候補生達は、補給艦に移動を命じられ、順次移動を始めている。
「おいなんでこんな時間に移動なんだろう?」
「しるかよ、取りあえず物資の輸送の抜き打ちテストじゃねーのか?」
「そうかもな」
リーファのみ、病室から移送は軍医が認めなかった為に旗艦ヘクトルのICUに入院していた。
艦隊が発進準備を終える寸前に総司令部から、第8艦隊のエル・ファシル救援が正式に命令として発令された。そして候補生はリーファ・ロボス候補生以外を補給艦と護衛を残してハイネセンへ向かわせろと連絡が有り、シャンプール星系での補給艦編入も認められた。
シトレにしては、怪我人のリーファも帰還させたかったが、総司令部の命令もある事と一時的に気がついたリーファが残りたいと言った為に残す事にした。
16日午後11時、艦隊は補給艦と護衛の巡航艦や駆逐艦50隻を残してポレヴィト星系を出発した。候補生達にはエル・ファシル救援に向かったことを教えたあとで、ハイネセンへ帰投する事に成ったと教えると、残念がる者達は僅かしか居らず、大半は帰投できるのをホッとした表情であった。
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