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真田十勇士

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巻ノ百二十九 木村初陣その九

 槍で次々と薙ぎ倒していく、そこに木村も二人が率いる兵達も続いてだった。
 上杉の軍勢を押し返した、景勝はそれを見て言った。
「頃合いじゃ」
「では今は」
「下がりますか」
「そうしますか」
「そうせよ」
 こう言って実際にだった、彼は兵を退けさせた。それを見た後藤は木村に笑って話した。
「ではな」
「はい、これよりですな」
「勝ち鬨じゃ」
 それを挙げる時だというのだ。
「そうしようぞ」
「初陣で勝てるとは」
 木村はその白い顔を紅潮させて後藤に応えた。
「思いも寄りませんでした」
「ははは、戦に勝敗は付きものじゃ」
「だからですか」
「勝ち鬨もそこまで喜ばれることもない」
「左様ですか」
「我等は大坂より幕府の兵を退けてな」
 そうしてというのだ。
「やがては幕府を倒し」
「そうしてですな」
「再び天下人となるのじゃからな」
「だからですか」
「今の勝ちは嬉しくともな」
「過度に驚くことはない」
「そうじゃ、最高の勝ち鬨は江戸で挙げようぞ」
 こうも言った後藤だった。
「それからじゃ」
「さすれば今は」
「本丸に聞こえるまでの勝ち鬨じゃ」
 茶々に聞こえるまでのというのだ。
「今はそれを挙げようぞ」
「わかりました」
 木村は後藤に確かな笑みで頷いた、そうしてだった。
 彼等は実際に大きな声で勝ち鬨を挙げた、この声は間違いなく茶々の耳にも届いた。このことを受けてだった。 
 幸村は戦が終わり真田丸に戻って来た十勇士達に話した。
「では明日諸将で軍議を開き」
「そして、ですな」
「そのうえで、ですな」
「茶々殿にお話をされますな」
「出陣のことを」
「そうする、今日の勝ちは大きい」
 二度目の勝ちがというのだ。
「そしてじゃ」
「あの勝ち鬨は、ですな」
「茶々様のお耳に届いていますな」
「ならばですな」
「ここからですな」
「一気に」
「外での戦にもっていく」
 茶々を説得してというのだ。
「そうするからな」
「はい、それでは」
「そうしましょう」
「そしてですな」
「大御所殿の首を狙うのですな」
「四方を囲む敵軍を退けてもよい、とかく囲みをな」
 幕府のそれをというのだ。
「何とかじゃ」
「はい、退け」
「そうしてですな」
「大砲を撃たせぬ」
「そうするのですな」
「そうする、大御所殿の首を取れれば特に大きい」
 家康、彼のというのだ。
「しかしそうでなくとも外で戦うことが出来れば」
「外に領地も広げられますし」
「そのうえで力をつけていけますな」
「大和に播磨等も手に入れる」
「そうしたことが出来ますな」
「そう考えているからじゃ」
 それでというのだ。 
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