ロボスの娘で行ってみよう!
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第12話 エル・ファシル攻防戦
リンチ司令が漢です。
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第12話 エル・ファシル攻防戦
宇宙暦788年5月2日
■自由惑星同盟 エル・ファシル 司令官官舎 アーサー・リンチ
今日も平穏無事に1日が終わったな。まあ今日は、士官学校の論文の研究で来たヤン中尉が来たんだが、ラップ中尉の同期で親友だそうだからな、今頃飲み歩いているのかもしれないな。グリーンヒル先輩からの預かり物かなんだろうか?開けてみるか。
おー懐かしいな。ハイネセンサブレに、グエン・キム・ホア饅頭かそれにアッシュビービールもあるぞ、先輩ゴチになります。おっ此は娘からの手紙だ、此は妻からの手編みのセーターか。しかしもう夏だぞ何時から作ったんだか、編み目が隙間だらけじゃないか、相変わらずぶきっちょだな。
娘もFTLではそれほど話せないから、恥ずかしそうに書いてきたんだな嬉し事だ。
ふむふむ【お父さん元気ですか、私は小学6年生になりました。お父さんが遠くでお仕事しているので、あえないのが辛いですけど、みんなの為に頑張っているお父さんは私の自慢のお父さんです。未だあえるのが先になるそうですけど、頑張って下さいね。大好きなお父さんへ。アンナより】
嬉しいな、もう娘に2年も会ってないからな、こういう手紙を貰うと泣けてくるよ。
ん?手紙の中にペンダントが入っているな。
【お父さん、私が作ったお守りです】
アンナ、泣けてきてしまった。男が泣くのはみっともないが今は泣かせてくれても良いよな。妻からの手紙も泣けてきたな。
【貴方、変わりはないですか。もう二年ですね、去年から編み始めたセーターが完成したので送ります、宇宙は寒いそうなので着て下さい、マイナス250度ぐらいですってね。無事のご帰還をお祈りします】
おいおい、艦内は温度を調整してるから寒くないし、だいち真空中じゃ死ぬって。こういう所が抜けてるんだよな、そこがまあ妻の良いところだがな。
あーあと1年か早く帰りたいな。いかんいかん明日もまた確り仕事をせんとな。
サブレとビールがまた合うんだよなー。
宇宙暦788年5月15日
ヤンがラップとエル・ファシルの色々なことを調べている最中のこの日、エル・ファシル星系に帝国軍の艦隊が襲来してきた。ラップは地上基地向かうがヤンは官舎でゴロゴロしていた。
リンチ司令官は、自ら率いるエル・ファシル警備艦隊旗艦グメイヤに乗り1000隻の艦隊と共に迎撃に出た。
「敵艦隊、凡そ1000隻、距離11光秒、有効射程です」
「よし砲撃開始」
同盟艦隊、帝国艦隊からビームとミサイルの雨の応酬が続く。
撃破される艦、爆沈する艦、シールドでビームをはじく艦、ビームが飛び宇宙空間に大輪の花が咲くその花が咲く度に数百の命が消え去る。
数時間の小競り合いの末、同盟帝国とも200隻ほどの損害を出して帝国艦隊が後退していった。破壊された艦から脱出した兵達を収容し終わる。
「ふう、敵は去ったか。帰還するぞ」
「方位変更180度回頭、エル・ファシルへ帰投する」
ホッとする、リンチ少将。
次々に艦首を回頭し帰還を始める、同盟艦隊凡そ800隻。
その時である、一旦帰投したと思われた帝国艦隊が急回頭の上追撃してきた。
後方からのいきなりの攻撃で隊列が乱れ始める。
「敵艦隊、急襲してきますーーーーー」
オペレーターの急報で慌てる艦橋内。
「閣下、回頭して迎撃しましょう」
参謀長が慌てて進言してくる。
リンチ少将は家族の事を思い出しながら、腹に力を入れる。
「慌てるな。回頭して戦闘などしては愚の骨頂だ、このまま急進して射程外へ逃れてから反撃するぞ」
司令の指示をオペレーターが艦隊に連絡するが、パニックに陥った艦隊が勝手に逃げ出した。各艦にしてみれば、背中を撃たれたままの状態では心理的に堪えられないのであろう。
多くの艦が射程外へ逃れて反撃すると言う命令から、反撃をあえて忘れ去って射程外へ逃げるだけを実行したのである。また一部の艦は背中を撃たれたままでは堪らないと反撃の為に回頭中に砲撃を受けて撃沈された。
「閣下、旗下の艦隊の内かなりの数が星系外で逃走を始めています」
「なんだと!」
リンチ少将の旗艦グメイヤに付き従う艦は凡そ200隻だけに成ってた。
他の艦は撃沈された艦200隻ほど、捕獲された艦20隻ほど、星系外へ逃亡した艦400隻弱。
敵前逃亡艦300隻ほどがエルゴン星系へ逃げ込むのだが、彼等が命令無視と敵前逃亡の罪に問われるのは今暫く後の事であった。さらに到着せず行方不明と思われた100隻前後が、そのまま宇宙海賊に成ったと判るのは後の話である。
「閣下。どうなさいますか、このままでは」
「参謀長、俺のミスだ。一旦地上で増援を待つしかない」
リンチ少将は、血がにじむほどに唇を噛んでいる。
その頃、地上司令部で戦況を見ていた、ラップは今回の戦闘がリーファの危惧していた論文のパターンにソックリである事を知り慌ててヤンの部屋へ連絡し論文を持って司令部へ来る様に連絡をしたが、ヤンは未だ寝ていて、ベットでうだうだしている。
「ヤン。起きろー!!!」
「ああ、ラップか、今日は休日なんだからもう少し寝かしてくれよ」
「寝てる場合じゃない!、帝国軍に艦隊が負けた!!」
「なんだって、何処が負けたんだ?」
「エル・ファシル警備艦隊が負けたんだよ、帝国軍が包囲をしようとしている!」
慌てて飛び起きるヤン。
「ラップ、本当かい?」
「冗談で言う事じゃないからな」
「うちらは、残存が200ほどだ、敵は700強」
「それは難しいな」
「リーファの論文に同じようなパターンがあったろ、だからそれを持ってきてくれ!」
「リンチ司令官は無事なのかい?」
「ああ、最後まで留まって残兵収容を終え次第降りてくるそうだ」
「無事で何よりだな。しかしリーファは酷いところへ私を送り込んだものだ」
「仕方がないだろう、リーファだってこうなるなんて知らないわけだし、一定のパターンを示していただけだし、以前もあった人狩りを二度と起こさない為に書いたんだからね」
「わかったよ、直ぐに向かおう」
「ヤン、俺の部屋にある資料も頼むよ。金庫に入っているから。
部屋の暗唱はJE6SS1I3C7Aだ、金庫は逆だ」
「おいおいJessicaかい」
ヤンに指摘されてラップは、恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「まあ早く頼む」
「判った」
ヤンは早速、着替えて資料を持ちラップの部屋からも資料を持って官舎から走り出す。
普段のヤンとは違い、勤勉さが見える状態であったとか。
宇宙暦788年5月16日
■自由惑星同盟 首都星ハイネセン 統合作戦本部
統合作戦本部と宇宙艦隊司令部にエル・ファシルにて同盟軍警備艦隊が大敗北して艦隊が四散状態になり残存艦隊が僅か200隻で残存兵5万人で籠城状態であると緊急情報が入った。
統合作戦本部と宇宙艦隊司令部では直ぐさま増援の話し合いがもたれたが、至近の星域駐留軍では戦力不足である事と敵の増援が予想された為に、ハイネセンより緊急に正規艦隊を出そうにも国防委員会の予算措置が会議の空転で降り無い事と時間的に間に合わないことが、エル・ファシル救援は絶望的な状態であると考えられており、会議中にもかかわらず暗い雰囲気が流れていた。
そこへ緊急伝を通信参謀が持ってきた。
「本部長閣下、司令長官閣下、第8艦隊から入電です」
「「なんだね?」」
「発。第8艦隊司令官、宛宇宙艦隊司令長官。
本文、第8艦隊はエル・ファシル救援に向う、指示を求む」
「本部長、このまま行かせるのが良いのでは?」
「長官、時間的にはどうなのだね?」
「航海参謀、時間的に間に合うか?」
航海参謀が直ぐさま計算を始める為に航路図室へ走り去った。
イライラする数分が過ぎ航海参謀が帰ってきた。
「閣下、この状態で行けば間に合う可能性があります」
「うむー行かせた方が良いので無いか?」
「閣下、あの艦隊は遠洋航海中で候補生が乗船しています、
彼等を降ろすしかありませんが」
「候補生はポレヴィトから輸送艦で帰還させるしかないな」
「本部長それしかありませんな」
「長官、その様にしよう」
「グリーンヒル参謀、第8艦隊には、あのレポートの候補生がいたな」
「ロボス候補生の事でありますか」
「彼女の作戦能力を試す機会だ、そのままロボス候補生は乗せていくようにさせよう」
「了解しました、早速シトレ司令官にその旨の連絡を入れます」
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