真田十勇士
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巻ノ百二十九 木村初陣その五
「確かに」
「そうであるがな」
「では右大臣様に言われて」
そしてというのだ。
「右大臣様からです」
「茶々様にか」
「言って頂いては、そして何よりも」
「有楽殿とご子息か」
「あのお二方は」
このことも言う木村だった。
「それがしが思いまするに」
「あのお二方は」
長曾我部も大野に有楽親子のことを話した。
「幕府と」
「つながっている」
「そうだと思いますが」
「このこと間違いありませぬ」
幸村も大野にこのことについて話した、彼は十勇士達の話から知っているし彼の忍の術からも察しているのだ。
「ですから」
「それでは」
「出て行ってもらっては」
木村が幸村に話した。
「そうしてもらっては」
「この城から」
「はい、そうしてもらっては」
「やはりつながっておられるか」
大野は唸った顔で木村に応えた。
「有楽殿達と幕府は」
「そうかと」
「わしもそう思っておったからな」
「ですから何とか」
「外の戦のこととじゃな」
「あのお二方のことは」
有楽親子のこともというのだ。
「右大臣様に申し上げ」
「そしてじゃな」
「茶々様にされては」
「そうするか」
「はい、ことは出来るだけ早くして」
大砲が何時城に来るかわからない、だからだというのだ。
「我等が勝てる様にしましょうぞ」
「そしてその為にか」
「拙者達がうって出まする」
後藤も大野に言った、それも強い声で。
「そして必ずです」
「勝って下さいますか」
「堤も守り」
「それでは」
「こちらはお任せあれ」
是非にと言う後藤だった、そしてだった。
後藤は木村と共に今福の堤の方にそれぞれの兵を率いて向かった、幸村も十勇士達を送って援軍とした。
その堤まで来るとだ、後藤はすぐにだった。
堤の三ヶ所を切って柵を四重に配した、そのうえで木村に言った。
「おそらく来るのは佐竹家の軍勢です」
「あの家のですか」
「はい、兵は多いです」
「ではこの度の戦は」
「油断出来ませぬ」
「左様ですか、それがし軍勢の戦ははじめて」
初陣、それだと言う木村だった。
「既に申し上げましたが」
「だからですな」
「後藤殿に何かとご教授を願いたいです」
「それがしでよければ」
後藤も受けた、こうしてだった。
二人は敵の軍勢を待ち受けた、すると佐竹家の旗を掲げた軍勢が実際に来た、その彼等を見てだった。
後藤と木村は兵達にだ、それぞれ命じた。
「よいか、柵は四重にある」
「それだけ守れる」
「一つ二つ破られても動じるな」
「四つ目まで凌いでじゃ」
そうしてというのだ。
「戦うのじゃ」
「余裕はある、安心して戦え」
こう言って彼等も槍を手にする、そうして戦うが。
ここでだ、猿飛が二人のところに来て言ってきた。
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