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真田十勇士

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巻ノ百二十九 木村初陣その一

               巻ノ百二十九  木村初陣
 真田丸の戦の後で家康は真田丸を攻めた諸将を己の本陣に呼んだ、そのうえで彼等から話を聞いてだ。
 そのうえでだ、彼は苦い顔で彼等に言った。
「真田の策にやられたのう」
「ではあれは」
「急に兵達が騒ぎ動きだしましたが」
「あれはですか」
「真田の策でしたか」
「真田家は家そのものが忍の者達でじゃ」
 家康は利常や己の孫である忠直達に話した。
「そしてじゃ」
「その忍の者達がですか」
「我等の陣に入り込み」
「惑わし煽り」
「そうして動かしたのですな」
「お主達も十勇士は知っていよう」
 真田の忍達の中で最も名の知られた彼等はというのだ。
「そうであろう」
「あの者達が、ですか」
「我等を乱し」
「そしてですか」
「真田丸を攻めさせたのですか」
「しかも既に待ち受けておった」
 真田丸の方はというのだ。
「それでお主達は散々に撃たれてな」
「敗れた」
「そうなったのですか」
「急に何処からか軍勢が出て来たとも聞いた」
 家康はこの話もした。
「それもおそらく十勇士達じゃ」
「あの者達は一騎当千と聞いていましたが」
 利常が言ってきた。
「では」
「その十人が一斉に動けばな」
「一騎当千の者が十人、まさに」
「それだけで一万じゃ」
「一万の軍勢に奇襲を受けたのですな」
「しかもあの十人が力を合わせて戦えばな」
 一騎当千の彼等がというのだ。
「一万どころかじゃ」
「それ以上の力になりますか」
「そうなる、この度のことは全く以てじゃ」 
 まさにと言う家康だった。
「真田にしてやられたわ」
「申し訳ありませぬ」
「我等の失態です」
「こうなってしまったのは」
「以後気をつけるのじゃ、わしもじゃ」
 家康自身もと言うのだった。
「抜かっておった、こうなってはじゃ」
「伊賀者、甲賀者達をですな」
「うむ、全て出してな」
 傍らにいた秀忠に述べた。
「そうしてじゃ」
「真田の忍達に備えますか」
「半蔵を出してな」
 その彼をというのだ。
「そうしようぞ」
「それでは」
「そしてな」
 また話した家康だった。
「もう十勇士達にはな」
「二度とですな」
「手出しはさせぬ、そして大砲をじゃ」
「それをですか」
「城に近付けてな」
 そのうえでというのだ。
「撃つぞ、昼も夜も」
「そうされるのですか」
「攻めるのは城ではない」
「といいますと」
「人じゃ」
 笑って秀忠に話した。
「茶々殿を攻めるのじゃ」
「お言葉ですが大坂の城は堀が広く」
「うむ、滅多な場所で撃ってもな」
「櫓に当たるのが精々で」
「本丸にはな」
「到底届きませぬが」
「ははは、しかしそれでもよいのじゃ」
 今度は笑って話す家康だった。 
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