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ドリトル先生と奈良の三山

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第十一幕その十一

「ですから」
「そう言ってくれるんだね」
「はい、それでは」
「うん、あのマスコットについてはね」
「先生のお考え承りました」
 こう先生に言うのでした。
「その様に」
「それじゃあね」
「我々としましては、ですが」
「どうしてもだね」
「他にいいものはなかったかと」
「今も思っているんだね」
「何しろ奈良県の県庁に正式に採用されています」
 つまり公式マスコットになっているというのです。
「恐ろしいことに」
「それないよね」
「普通にね」
「あれで正式採用って」
「何か職員さん扱いなのよね」
「奈良県の」
「全く以て理解に苦しみます」
 まだ言う白鹿でした。
「奈良県には他にもマスコットがあるのですが」
「あのマスコットが顔になってるね」
「グッズも一杯あるしね」
「持ったら呪われるかもね」
「あの外見だとね」
「嘆かわしいことです」
 白鹿の言葉は続きます。
「あのマスコットだけはどうにかならないのか」
「奈良県はいい場所だけれど」
「マスコットには恵まれていないのかしら」
「というかあのマスコットが顔になっている」
「それが嫌なのね」
「妖怪よりも怖いからね」
「奈良県も妖怪が多いですが」
 白鹿はこのことも知っています、古くから人がいて自然も豊かなので人と自然と共にある妖怪達も多いのです。
「その妖怪達よりもです」
「あのマスコット怖いね」
「とてもね」
「そうとしか見えないよね」
「どうにも」
「あのマスコットについては」
 どうにもというのです。
「そう思うばかりです」
「難しい問題だね」
「奈良県にとっては」
「県民の人達にとっても神仏にとっても」
「そして神仏の使いにとっても」
「私も角がありますが」
 鹿だからです、見れば確かに鹿の角があります。
「あのマスコットにも角がありますね」
「うん、しっかりとね」
「あの角は御仏としてはおかしいですから」
「そうそう、仏教では頭に角があるとね」
「鬼ですから」
「よくないんだよね」
「そこも気になりますし」
 神様の使いとしてもです、仏教ともお付き合いが深いので。
「どうしたものか」
「とにかくあのマスコットはだね」
「どうしても抵抗があります」
 そうだというのです、こうしたお話をしてからです。
 白鹿はあらためてです、先生達にお話しました。
「では下らないお話をもしてしまいましたが」
「あと一日だね」
「奈良をお楽しみ下さい、そして」
「まただね」
「いらして下さい」
 長谷寺でこう言うのでした、そうしてでした。
 白鹿と別れた先生は長谷寺の他の場所も巡ってそのうえで長谷寺を後にしました。そのうえでこの日もゆっくりと休みました。 
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