歌集「冬寂月」
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二十九
雨垂れは
遠き思ひぞ
うつものか
袖濡らせしは
露も涙も
戸を開いて雨垂れの音を聞いていると、不意に故郷のことが思い出され…そしてあの人のことさえも…。
どうしてこうも思い出させるのか…袖を濡らしているのは雨露だけではなく、また涙も同じなのだな…。
風やみて
ふるは氷雨か
春雨か
想い巡らむ
小夜の雨音
風がぴったりと止んで、雨音だけがやけに響く…。
降るのは…冷たい氷雨なのか、はたまた暖かな春雨なのか…。
こんな雨の夜は淋しさがのし掛かるものだ…故に、いつかの時を思い出しては…また淋しさが募る…。
そんな夜更けの雨音を聞きながら…一人…眠る…。
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