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歌集「冬寂月」

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二十八




 音もなく

  侘しき野辺の

   月影に

 想い虚しく

   溜め息ぞつく



 風のない静かな宵…傍ら広がる野原には月明かりが射し、無性に侘しさが増す…。

 もう知ることのないあの人の道…忘れようにも忘れられない恋しさ…。

 意味を為さないこの虚しい想いは…また偽りの中へと落ちゆくのだろう…。

 月明かりの中、ただ一つ…溜め息をつく…。



 流れゆく

  風の行方を

   たれそ知る

 虚しく老いし

    身の行く末も



 吹き抜けるこの風の行方を、一体誰が知っていると言うのだろう…。

 そんなものは誰も知らないし、知ろうとも思いはすまい…。

 虚しく老いてゆくだけの、この私の行く末も同じことなのだ…。


 全く…詮ないことだな…。



 
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