銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません
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第九十九話 そうだ幼年学校へ行こう 後編
大変お待たせしました。金赤コンビが思うように動いてくれません。
結局8日もかかってしまいました。
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第九十九話 そうだ幼年学校へ行こう 後編
帝国暦481年4月10日
■オーディン 帝国軍幼年学校 ラインハルト・フォン・シェーンヴァルト
不快だ、何故私が茶番に付き合わされなければいけないのだ!授業とは言え、あの女の見ている前で原始人の娘と格闘だと!馬鹿にするのもいい加減にしろ!女と決闘させて、俺が完膚無きまで叩きのめせば良いのだろうか、それとも手加減をするのか、いや俺の主義に合わないな。やはり徹底的に戦かうしかないのか。その場合は姉上に迷惑が掛かるかもしれない。
■オーディン 帝国軍幼年学校 ジークフリート・フォン・キルヒアイス
ラインハルト様とフロイライン・オフレッサーの試合とは、殿下も何を考えて居るのやら、普通であればオフレッサー大将が止めに入るはずだが、逆に勧めているのであるから、何を考えているのであろうか?ラインハルト様が負けるとは思わないが、女性を殴り倒すという不名誉を負わされるのでは無かろうか。
■オーディン 帝国軍幼年学校
よーい、かかれ!
審判役の教官の合図でラインハルトとズザンナが獲物を手にして対峙する。
両者ともプロテクターを付けて、演習用戦斧にで戦闘である。
ラインハルトもズザンヌも間合いを計りながらジリジリと近寄りつつある。
ラインハルトが走り込んで戦斧を振り上げ袈裟切りを仕掛けるが、寸前に避けられてしまう。避けたズザンナが振り向きざまに胴を払うように戦斧を動かすが、ラインハルトはしゃがんで避ける。しゃがんだラインハルトが足を払う為に戦斧を払うが、ズザンナが前方へジャンプしながら躱しまくる。
数分間同じような戦いが続く、最初は余裕を見せていたラインハルトが次第に焦りが見え始める。
「オフレッサー、この死合いどう見るかの?」
「そうですな、実戦経験の差が出てきています」
「なるほどね、彼方は学校での喧嘩がメイン、ズザンナは装甲擲弾兵仕込みであの事件で実戦経験者だからじゃな」
「御意」
両者の一進一退の試合を見ている幼年学校生は一言も喋れずに真剣に観戦しているのは、喋ろうとするとオフレッサーが一睨みするからであった。
試合が進むにつれてラインハルトは次第に焦りを感じ始めて居た、どうやっても当たらないのであるからその焦りは段々と手元の乱れに現れていくのである。
逆にズザンナは時間が経つにつれて、バイザーの下で不敵な笑みを浮かべながら段々とラインハルトを追い詰めていくのである。
両者とも何発かの被弾を経て居るが、明らかにラインハルトの分が悪いのである、やはり実戦経験の差がモロに出てしまうのである。
余りの激しさに時間が経ったために、両者引き分けに終わらせるという結果になったが、ラインハルトは納得のいかない顔で、ズザンナはすっきりとした笑顔でバイザーを上げて、テレーゼに礼を行う。
「ズザンナ、シェーンヴァルト、両者見事な死合いであったな、大儀である」
「御意」
「御意・・」
テレーゼは満面の笑みで2人を賞める。ズザンナは神妙に最敬礼をし、ラインハルトは納得出来ない顔で敬礼をおざなりに行う。
それぞれが、待機場所へ向かい話し始めた。
テレーゼの元にズザンナが帰ってくると、テレーゼがズザンナを称えた。
「ズザンナ、良くやった。流石オフレッサーの娘じゃ」
「御意、ありがたき幸せ」
ズザンナ側は和気藹々の感じである。
ラインハルト側では、憮然としているラインハルトをキルヒアイスが宥めていたのである。その後に、オフレッサーとキルヒアイスの試合が行われる為に準備を始めた。
「オフレッサー、恐らくお前と同じで赤毛は強いはずじゃ」
「御意」
キルヒアイス、オフレッサー両者の試合は両者とも礼に始まる。
「キルヒアイス候補生、行くぞ」
「はい」
ラインハルトと違いキルヒアイスは礼儀正しく戦闘を始める。
オフレッサーが戦斧を振れば、キルヒアイスが避ける、逆もしかり。
双方が、一進一退の攻防を行う、キルヒアイスは身の軽さを生かして一撃離脱を行いながら戦い、オフレッサーはその筋力を生かした豪快な攻撃を行う、今回は双方の攻撃の度に歓声が上がる。
オフレッサーは出来るなと関心しながら、加減をしながらの戦闘であり。
キルヒアイスは、全力を出しつつオフレッサーの恐ろしい力を間近に感じて戦っていた。
終盤にキルヒヒアイスの戦斧が弾き飛ばされて、オフレッサーの勝利になった。
その後テレーゼが両者を褒め称えた、手加減は判っていたが、あえてラインハルトとの違いを大げさに褒め称えたうえで、数日前に幼年学校へ行くので、幼なじみになにか無いですかとアンネローゼから貰っておいたアンネローゼお手製刺繍入りハンカチを、キルヒアイスに下賜するのである。当日は陛下も間に入り、弟のような存在の者にもなにか上げなさいと勧めたのである。
「オフレッサー、ご苦労じゃ」
「御意」
「キルヒアイスは如何であった」
とことんキルヒアイスだけを褒め称える様にしていく。
「はっ、見事なスピード、切り返し、戦術眼を見ても一流の戦士と言えましょう」
「末が楽しみというわけじゃな」
「御意」
「キルヒアイス、見事な戦いであった、オフレッサーと互角の戦いをするとは、幼なじみのアンネローゼ殿も聞けばお喜びになるじゃろう」
アンネローゼの名前に動揺するキルイアイスとラインハルト、そこへ追い打ちをかける。
「キルヒアイス見事であるので、褒美を遣わす」
そう言って、見事なプラチナ先端の万年筆のセットが下賜された。無論盗聴器などは仕掛けられていない純然たる品であるが、下手な解体をすると直せなくなる作りであり、2人が怪しんで解体すると、専門業者にしか修理出来ないので、次に万年筆の話をされた時にどう言いつくろうかを楽しみにしているのである。そして更にたたみかける。
「そうじゃ、先だってアンネローゼ殿より、お手製の刺繍ハンカチを預かって来たので此と共に下賜する」
「御意。ありがたき幸せ」
キルヒアイスは、アンネローゼのお手製と聞いて、明らかに嬉しそうな顔になるが、ラインハルトはキルヒアイスだけに何故なんだとすねた風である。
そうして、4年の参観が終わると昼食時間になった為に、食堂で生徒と共に昼食を取ることになった。
先日から、確りと監視を入れて毒味もそうであるが、普段の食事を必ず出すようにと念をいれて指導した結果、一切豪華さのない幼年学校標準食が出されてきた。
他の生徒が見る中で、知り合いである4年のイザーク・フェルデナント・フォン・トゥルナイゼンを呼んで同じテーブルで食事を始める、本来ならば校長が着くはずであったが生徒の生の声を聞きたいと変えたのである。
離れたテーブルでは校長達が同じ様に食事をしている、と言うか食べさているのである。何故なら校長は私室でワインを飲みながらキャビアを食べて贅沢していながら、生徒にお題目を述べているのであとで、ギャフンと言わせる為の仕掛けである。
今日の献立は、【ライ麦パン、ソーセージ、チーズ、野菜スープ、ジャガイモのミルクかけ】などが雑然と並び量は同年代の摂取量に達しているが、味は貧相を極めた。
「イザーク、何時もこのようなの?」
「はっ、そうであります」
「イザーク、肩の力を抜きなさいね」
テレーゼは、イザークに優しく微笑む。
「御意」
「オフレッサー、ズザンヌはどんな感じかしら?」
オフレッサーは明らかに量が足りないが、真剣に答える。
「はっ、量は良いでしょうが、味がイマイチかと思います」
「同じく、味が貧相ですけど、あの料理に比にべたら遙かにましですが・・・」
「ふむふむ、イザーク、この点は校長とかはどう言っているのかしら?」
「はっ、栄養価は充分に考慮してある。軍務をもって国家に奉仕しようと志す者が、美食を求め味に不平をもたらすなど情弱の極みであると仰いますね」
「なるほどね、けど育ち盛りの子供達に此は可哀想ですね、もう少し変更するべきだと思いますね、オフレッサーはどう思うかしら?」
「はっ、この頃の体を作るのはもう少し考慮するべきかと思います」
「それでは、後で校長に言って、その後で軍務尚書に連絡しましょうね」
「それが宜しいかと」
「イザーク、勉強頑張って期待してるからね」
「ありがたき幸せ」
取りあえずイザークには発破かけておいたから、是非真っ当な道を進んで貰いたいね。
それで不味い料理を食べ、ヒルダの料理よりは遙かにマシだけど、その後5年生の授業を見学して、学生の授業を見る事は終了したので次は施設の視察です、まあ食糧倉庫での事故を未然に防ぐのがメインなんですけどね。だから来ました食糧倉庫へ、このためにオフレッサーにも来て貰ったんですから。
「殿下、此処が食糧倉庫で御座います」
「ふむ、凄く積んであるのー」
「はっ15mあります」
「ふーん、オフレッサー一寸その角を蹴ってみよ、その後全速で此方へ戻ってくるのじゃ」
「はっ」
皆が皆何故そんな事をと不思議がる中、オフレッサーは小麦粉の袋の高まりを蹴り飛ばし早急に戻ってきた。すると振動で小麦粉袋が落下してきた。倉庫内にはバスンと言う音と共に真っ白な小麦粉が舞い散る状態が発生した。テレーゼだけが冷静であるがそんな事は毛ほども見せずに驚いてみせる。
「きゃー、危ないわー」
知ってて言っているのだからたちが悪い。
「危ないですね」
「危ないと思いますな」
「校長、万が一があったらどうなさるおつもりか!」
皆が皆、その落下する様に驚いた後で、校長に詰め寄る。
「申し訳ございません、積み方が乱雑でありました」
校長は冷や汗をかきまくりである。
「よいわ、蹴れと言ったのは妾じゃからな、しかし校長この様な野積みは危険じゃ、早急に変更するのじゃよいな」
「御意、直ぐさま変更し崩れぬように致します」
「うむ、重畳重畳」
その後はテレーゼ一行と各学年主席、次席、三席の15名と校長、副校長との懇談を行った。
「皇女殿下の御臨席を受けまして、恐悦至極に存じます」
「校長御苦労じゃ」
「御意、此処に居りまするは我が校でも選りすぐりの者達にございます」
「うむ、者共今日はご苦労で有る、卿等が未来の帝国を背負って立ってくれる事を期待いたすぞ」
5年生主席が代表して挨拶を行う。
「皇女殿下の御臨席を賜り祝着至極に存じます。帝国へのより一層の忠節を尽くしたき所存であります」
「うむ。卿等の忠節、妾は嬉しく思うぞ、今日有るを記念し妾から卿等に学業で役立つ物を賜ろうぞ」
その言葉にラインハルト以外は嬉しさで顔をほころばす。キルヒアイスも一応喜んでみせる程度の人格が出来ていたのであるが、ラインハルトは未だ未だであった。
テレーゼがそれぞれの生徒に話しかけながら、手渡しで記念品を渡していく、それは先ほどのキルヒアイスが貰った万年筆セットであるが、色違いになっていた。5年から始まり順番に渡していくのであるから、貴族の師弟としては感激モノで泣きそうな者も居る。ラインハルトに渡されたのは、キンキラのど派手な万年筆であった、こういう時は一応演技が出来るのかありがたそうには見せるのだが、内面がにじみ出ているので、テレーゼにしてみれば見え見えである。
続いてキルヒアイスの番になりテレーゼが話し出した。
「キルヒアイスには先ほど同じ物を渡したので、今回は別の物にしますわ」
そう言って渡してきたのが、プラチナ製の懐中時計であったため、キルヒアイスは元より全員が驚いた。
「殿下、このように高価な物を頂くわけには参りません」
「良いのじゃ」
「御意」
結局はキルヒアイスは受け取ったのである、この話はあっという間に学校内で広まり、キルイアイスは皇女殿下のお気に入りになって、士官学校卒業後は近衛が内定だなと流れたのである。
ラインハルトは、それを聞いて益々苛つくのであった。
4年、3年と続き、いよいよ問題の2年である。モーリッツ・フォン・ハーゼが呼ばれ進み出る。テレーゼの姿はグリーンに赤のアクセントであるが、彼には灰色にしか見えない、その為にテレーゼは万年筆をそれぞれ違う色にしているのである、その為にハーゼの万年筆も赤と緑のセットであった。
取りあえず、そのまま1年まで渡し終えてからが本番である、それぞれに適当に話をさせながら色を聞いていく、ラインハルトとキルヒアイス以外の皆がテレーゼに感謝と敬愛を向けるが、色の話でハーゼがどうしたらよいのか判らなそうな顔をしているのが印象的であった。此で種銭は仕込んだ訳である。
後は観察者によりハーゼの色盲を副校長も知っている事を調べて、ハーゼの今後などを調整するのであるがそれは後日という事にした。更に人事異動を行い7月からシュテーガー副校長を幼年学校から女子下士官学校校長へ移動させて、孫に干渉出来ないようにしたのである。
そのあとで、軽い話をしながら、オフレッサーが校長へジャブを撃つ。
「校長、生徒の給食であるが、あれでは余りにも可哀想だな、
殿下も召し上がったが気の毒だとのことだ」
「はあ」
「軍務をもって国家に奉仕しようと志す者が、美食を求め味に不平をもたらすなど情弱の極みであるとはいえ、育ち盛りであるし卒業して直ぐに軍務に付くわけでもなかろう、そう言った事は士官学校で習えばよいのではと、殿下もお思いだ」
「オフレッサー御苦労、校長、皆未だ15未満じゃ少しは楽しみを持たせてやるのも良いと思うぞ」
テレーゼが、そう言いているなかで、ズザンナが耳元で校長に囁く。
「キャビネットの高級ワインとキャビアは惰弱ではないのですか」
校長は驚愕して顔が引きつり出したが、降参と返答するしかなかった。
「御意。軍務省とも相談致しまして早急に見直します」
「良いことですね」
その話に、明るい顔になる在校生達である、その後に給食の質が良くなり殿下の功績と、オフレッサー大将が校長を絞めたと言われて、両者共に称えられるようになるのである。
その頃、部屋に帰った、ラインハルトは女に手加減されて引き分けに成ったことと、キルヒアイスだけがアンネローゼの贔屓にされることで、キルヒアイスに当たり散らしていた。
「キルヒアイス、何でお前だけが、姉上に贔屓にされるんだ!」
「ラインハルト様、たまたまだと思います」
「姉上のハンカチを貰ってさぞ嬉しかろう!」
「ラインハルト様、その様な事は」
「じゃあ、俺にくれ」
「それは、幾らラインハルト様でもそれだけは譲れません」
「ふん」
ラインハルトはふて寝を始める。
アンネローゼ様、ラインハルト様が拗ねてしまわれました、私はどうしたら良いのでしょうか?
キルヒアイスの心の呟きが虚しく聞こえるのであった。
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