提督はBarにいる。
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艦娘とスイーツと提督と・22
~山風:ハワイアンパンケーキ~
「提督……大丈夫?ちゃんと焼ける?」
「任せとけって。……そろそろイケるかな?おりゃっ!」
フライ返しを差し込み、手首のスナップを利かせてクルリと引っくり返す。じっくりと火を通した生地はたっぷりと空気を含んでフワッフワの焼き上がりだ。表面も焦げずにきつね色。会心の出来だ。
「お、美味しそう……!」
「後は裏面をもう少し焼いて、盛り付けだな」
今回のスイーツチケットの当選者は、山風。リクエストは『ハワイのパンケーキ』だった。なんでも、ハワイのグルメ紹介番組を見ていたら食べてみたくなったんだそうだ。
「よし、焼けたぞ。後はこいつに特製のホットバニラソースをかけて、フルーツを盛り付けてやれば……出来た!『提督特製ハワイアンパンケーキ』だ!」
「美味しそう……早く食べたい!」
山風もナイフとフォークを持って準備万端だ。逸る山風を落ち着かせつつ、カフェオレと一緒に出してやる。
「いただきます……おいひぃ!」
「口の中に物を入れて喋るのは行儀悪いから、止めような?山風」
さてと、山風もこのパンケーキのレシピを欲しがってたからな。書き出しておくとしよう。
《生地と焼き方がミソ!特製ハワイアンパンケーキ》
・ホットケーキミックス:200g
・牛乳:60cc
・プレーンヨーグルト:25g
・バニラアイス(スーパーカップがオススメ):25g
・全卵(Lサイズ):1個
(ホットバニラソース)
・牛乳:200cc
・生クリーム:60cc
・無塩バター:20g
・強力粉:20g
・グラニュー糖:70g
・バニラエッセンス:少々
・塩:ひとつまみ
(ホットバニラソースの作り方)
1.バニラソースの材料を全てボウルに入れ、よくかき混ぜる。
2.ボウルの中身を鍋に移し、かき混ぜながらゆっくりと加熱していく。とろみがついてきて、ドロッとしてきたら完成。
(生地作り)
1.ボウルに牛乳、ヨーグルト、バニラアイス、卵を入れてよく混ぜる。
2.ヨーグルトとバニラアイスの形が崩れてクリーム状になってきたらホットケーキミックスを入れ、ダマがなくなるまで混ぜる。
(焼き方)
1.フライパン(出来れば鉄製がいい)を強火で温め、湯気が出てくる位まで温めたら一旦火から下ろし、濡れ布巾等に載せて温度を下げる。温度を下げたらキッチンペーパー等を使って溶かしバターかサラダ油をフライパンに薄く塗る。
2.生地をお玉で掬い、流し入れる。生地を入れたら蓋をして、弱火で3分蒸し焼きにする。※その間、弄ったりしない!(最重要)
3.3分経ったら引っくり返し、再び蓋をして3分蒸し焼き。
4.再度引っくり返し、蓋をして2分焼く。2分経ったら火を止めて、蓋を取らずに1分蒸らす。
5.盛り付けて、好みの飾り付けをして完成!
(ワンポイントアドバイス)
※生地を作る際、オレンジピールやリキュール等で香り付けすると、よい香りのパンケーキに仕上がるぞ!
「……ねぇ、提督」
「ん、どうした?おかわりか?」
パンケーキを食べ終えたらしい山風に、不意に声をかけられた。
「ううん、2枚食べたからお腹いっぱい。ちょっと聞きたい事があるの」
「何だよ、改まって?」
「ホットケーキとパンケーキって、どう違うの?」
たまに聞かれたりするよな、これ。パンケーキとホットケーキの違い。
「あ~……実はなぁ。あれ、厳密には違いは無いんだ」
「え、そうなの?てっきり違う物だと思ってた……」
パンケーキもホットケーキも、薄力粉に卵、牛乳、砂糖、ベーキングパウダー等を混ぜた生地を円形に焼き上げた菓子の名前だ。日本だとホットケーキはハチミツやメープルシロップをかけて食べるオヤツ、パンケーキはスクランブルエッグやベーコンなんかと一緒に食べる食事というイメージが強いが、ハワイアンパンケーキを見れば解る通り、フルーツやクリームと食べるデザート的な認識が強いだろう。
かと言って、『ホットケーキ』が和製英語かというとそうでもない。実際アメリカには沢山飛ぶように売れる、という意味で使われる『Sell likes hotcakes』という諺があるらしい。となると、パンケーキでもホットケーキでも具体的な違いはなく、単なる呼び方の違いらしいんだよ(事実、アメリカ人の知り合いに聞いてみたが、ホットケーキでもパンケーキでも通じた)。
「あ~……アレだ。『豚汁』って書いて東の方だと『とんじる』で、西の方だと『ぶたじる』って読むって感じの違いだと思うぞ?」
「……そうなの?」
「……多分な」
自信はない。
「そう言えば山風、ウチの鎮守府に着任してもうすぐ1年くらいだろ?馴れたか?」
「う、うん……最初は、ちょっとキツかったけど、今は楽しい……よ?」
そうだよな、ちょっとオドオドした感じが抜け切ってないが、ウチの鎮守府名物になってる地獄のブートキャンプをクリアしてるんだもんな……馴れない方がおかしいか。この引っ込み思案な性格は生来の物だから完全には抜けないんだろうな。まぁ、その引っ込み思案な所が放っとけないというか、庇護欲をそそるというか。
「そうか、ならよかった」
グリグリと山風の頭を撫でてやる。着任当初は触らないで、とか構わないでと言われて拒絶されていたが、最近になって撫でてやると嬉しそうにはにかむようになった。最初は俺の強面に怯えていたからな、えらい進歩だ。
「あ、あの、提督……?」
「ん、何だ?」
「『パパ』って……呼んでも、いい?」
俺は別に呼ばれ方に拘りは無いしなぁ。現に、天龍と木曾は俺の事を『親父』と呼ぶし、『パパ』でも別段問題はない。
「ん、まぁ……好きに呼べ」
「じゃ、じゃあ……練習ね?」
山風が頬を赤らめ、上目遣いで俺の顔を見上げて来る。
「パ、パパ……?」
「ぐふっ!?」
ヤバい。これはヤバい。予想以上に照れ臭いぞ!?それに物凄く可愛いじゃねぇか。何だかもうこのまま養子縁組して娘として引き取りたい位に可愛い。
「だ、大丈夫パパ!?」
「がはっ!?」
急に噎せた俺に焦った山風が再びのパパ呼び。しかしそれが原因だとは口が裂けても言えない。その追撃のパパ呼びで更なるダメージを負う。イカン、悪循環だ。何とかしないと。
「だ、大丈夫。大丈夫だ……ビックリしてコーヒーが変な所に入っていっただけだ」
「そ、そうなの?良かったぁ……」
ホッと胸を撫で下ろす山風。とりあえず、パパと呼ぶのは誰も居ない所だけにしてもらおう。
後日、山風にパパと呼ばせている現場を金剛に目撃され、『じゃあ私はママですネ~?』とニマニマされたのは別の話。
後書き
という訳で山風編でした。いかがでしたでしょうか?山風みたいなオドオドしてる娘って物凄くお世話してあげたくなるんですよね。でも今回の冬イベで着任したジャービスも捨てがたい……ならばどっちも娘にしてしまおう!と。
疲れてるなぁ、俺www
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