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儚き想い、されど永遠の想い

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476部分:第三十七話 桜を前にしてその十


第三十七話 桜を前にしてその十

 そのうえで二人にだ。こう話すのだった。
「花達が咲いていますね」
「桜はまだだが」
「それでも確かに」
「あと僅かです」
 その時はだというのである。確かな微笑みと共にだ。
「真理さんは頑張ってくれていますから」
「安心しているのか」
「真理さんのことを」
「信じています」
 具体的にはどうなのか。義正は二人に話した。
「あと少しで桜が咲きますから」
「しかし真理はだ」
「本当に今にでも」
 この世を去るとだ。両親は義正に話す。
「今も大量の喀血があったのだ」
「それに顔がもう」
 死者の顔だとだ。彼女の母の話だ。
「それでもなのか」
「義正さんは仰るのですね」
「確信しています」
 揺るぎもなかった。最早。
 だからこそだ。彼今言うのだった。
「そしてその時代になればです」
「桜を観に行くのか」
「貴方達は」
「そうします」
 このこともだ。揺るぎなかった。
 そうしてだ。彼はまた話した。
「真理さんを。桜のところに連れて行きます」
「君はそこまでしてくれるのか」
 深く感じ入った言葉がだ。真理の父の口から出た。
 そのうえでだ。彼を見つつ言うのだった。
「真理は幸せだ」
「そう言って頂けますか」
「君の様な伴侶を得られてだ」
「それは私もです」
 義正もだとだ。彼もまた微笑み言った。
「私も幸せです」
「真理と共にいられてか」
「私はこの幸せと共に生きていきます」
 現在だけではなかった。未来もだった。
「そうしていきます」
「だが真理はもう」
「いえ、死にません」
 彼にもだ。言うのだった。
「真理さんは死なないです」
「死なないか」
「はい、死にません」
 こう言えた。真理の父に対しても。
「あの人は死なないのです」
「それはどういう意味なのか」
 それがわからずだ。真理の父は義正に問い返した。
 その言葉がどういう意味かをだ。それを問うたのである。
「真理は死ぬ。それなのにそう言うのは」
「肉体は確かに死にます」
 こうだ。ここでもこう言うのだった。
「ですがそれでもです」
「魂は死なないというのだな」
「その通りです。真理さんの心は永遠に残ります」
 東洋的な話と思いだ。それでだった。
 真理の父もだ。義正の今の話に頷いた。
 そのうえでだ。こう彼に言ったのである。
「そういうことならわかる」
「有り難うございます」
 その彼の言葉にだ。義正はだ。
 ここでも微笑みだ。言うのだった。
「そう言って頂いて。わかって頂いて何よりです」
「いい。そうなのだな」
「このことがわかったのです」 
 魂の不滅、それがだというのだ。
「ですから私に悲しみはありません」
「では桜を見ることは」
「終わりではないのです」 
 むしろだ。その逆だというのだ。
 
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