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レーヴァティン

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第四十五話 傾奇者その十二

「湖自体を恐れる、しかしな」
「それは違う」
「そのことを今教えてもおる」
 琵琶湖の周りに住む民達にもというのだ。
「そしてお主達もな。よく知っておいてくれ」
「わかった」
 英雄は蛟に一言で答えた、実に簡潔な返事だった。
「ではな」
「うむ、これからな」
「そのことは覚えておいてだ」
「民達にも話してくれるか」
「そうさせてもらう、悪い蛟だけではないか」
「いい蛟もいる、というかだ」
 蛟は誇りのある声で英雄に話した。
「蛟は龍になるのだ、それだけの獣ならば」
「誇りがあるか」
「その誇り故に悪は働かない」
 そうしたことはしないというのだ。
「人を襲うよりもだ」
「龍になる為の修行にだな」
「忙しい、だからだ」
「そうしたことはしないか」
「このことを誓って言う」
 英雄に話ス言葉は強かった。
「その様なつまらぬ蛟なぞ滅多にいない」
「己を高める獣か」
「それが蛟だ、覚えていくことだ」
「そのことも覚えた、そしてだ」
「伝えるな」
「この島の連中にな」
 英雄は実際にこの話を島の者達に伝えていった、そうして琵琶湖の蛟その他の場所の蛟達のことも知らせた。そうして蛟達への偏見も解いていった。旅の途中で知ったそのことは島の者達の重要な知識の一つになった。
 英雄達は蛟と話をした後すぐに甲賀に向かうことを再開した、そうして数日歩いてだった。地図を見ている謙二が言ってきた。
「間もなくです」
「甲賀の里か」
「あと一刻程歩けば」
 そうすればというのだ。
「着きます」
「そうか、ではな」
「甲賀の里に入りそうして」
「六人目と会おう」
「では」
 謙二は英雄のその言葉に頷いた、そうして六人で甲賀の里に入った。新たな仲間がいるという忍の里に。


第四十五話   完


                   2017・12・8 
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