相談役毒蛙の日常
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二十日目
「よう、お前ら。元気してたか?」
「あ!隊長なの!」
「もう会えないかと思ってたの!」
混沌の館に到着した翌日、俺はカトラスを連れて直属の部下に会いに行った。
「おい、トード…お前…変態なのか?」
とカトラスに言われたら。
何故なら…
「まぁ、お前の言いたい事もわかるぞカトラス。
だがこれには事情があんだよ」
俺が隊長を務める遊撃部隊の第一小隊。
そのメンバーは副官として新しく入ったカトラスを除いて三人。
俺と、猫耳女子二人である。
しかも、すげーロリアバター。
「ほーん…で、その事情ってなんだよ変態」
次の瞬間…
シャリリィン!
と二振りの得物が抜かれた。
大太刀と薙刀…
俺の部下二人が、カトラスに得物をつきつけていた。
「ねぇ…おねーさん…おねーさんが何者かは知らないの…
でも、隊長をバカにするなら殺すの」
「地獄の苦しみを味わわせるの」
はぁ…まったく…
「メティ、サンディ、そこまでだ。
剣を降ろせ。カトラスは俺の幼馴染で副官だ」
すると二人は渋々得物を仕舞った。
「隊長が言うならそうするの…」
「兄様にしたがうの」
カトラスが凄い目でコチラを見てくる。
「………何があった?」
さーて…何処から話そうかねぇ…
まぁ…カトラスなら、わかるだろ…
「カトラス」
「なんだよ?」
「無限PKって知ってるか?」
無限PK…MMORPG初期からある迷惑行為だ。
相手をキルし、蘇生させ、再びキル…
それを延々繰り返すこの行為は大抵のMMORPGで御法度とされており、ばれればアカウント凍結や停止、追放さえあり得る。
そして、"VR"MMORPGの世界に於て、無限PKは禁忌である。
過去にALOで無限PKを行ったプレイヤーを訴え、現実世界で裁判にまで発展した事例もある。
そして、その裁判が起こる遥か前。
ALOで初めて"確認"された無限PK。
その被害者が、メティとサンディという双子のプレイヤーだった。
カオスブレイブズ発足当時。
俺がインテンス・アサシンとして、各種族の主戦論者をPKしていた時期。
俺が暗殺を成功させた後、アジトへ帰るべく高高度飛行中、十名程の他種族集団を地表に発見した。
もしや同士やもしれないと高度を下げると…
彼らは、二人のプレイヤーをリンチしていた。
いたぶられていたプレイヤーは、どちらも幼いアバターだった。
やがて、二人はエンドフレイムに、即座にウィンディーネのプレイヤーが蘇生魔法を使い、再びキルした。
ALOはランダムアバターなので、彼女等が年上という可能性もあったが、見ていられなくて、俺はその集団に突撃した。
幸い他種族集団のレベルは低く、第零装備を纏っていた俺一人で殲滅できた。
何があったか事情を聞こうと世界樹の雫を二つ取りだし、彼女等に振り掛けた。
だけど、彼女等は俺に怯えていた。
他種族集団のエンドフレイムが消え、数分が経ち、彼女等がようやく警戒を緩めたので事情を聞いた。
彼女等はログインしたばかりで、飛行の練習中だったらしい。
そこへ、他種族集団が現れ、抵抗できずにリンチされたらしい。
しかも、ペイン・アブソーバlve8で…
その時、俺はALOで痛覚を少しだけ弄れると知った。
倫理コード解除設定…つまりゲーム内で性行為を行う為の設定。
恐らくは基幹プログラムのコピー元であるSAOからあるシステム。
その設定の中に、ペイン・アブソーバを最低8まで下げられる機能が有ると知った。
事情を聞き終え、STRに任せて二人を抱えてアジトへ戻ると、安心したのか二人とも泣きじゃくってしまった。
それを同アジトにいたカールターナーと慰めていたら懐かれたという次第だ。
「な…!そんな!おい灯俊!そのバカ共には報復したんだよな!?」
「無論だ。カールターナーと一緒に無限PKの刑に処した」
勿論、ペイン・アブソーバを下げた状態で…
「はぁ!?」
「奴らの方が先に手を出したからな。
運営からアカウント追放されたのはあちらだったよ。
まー、俺とカールターナーも御咎め無しとは言わんかったが…」
カールターナーへのペナルティは半年間の現有(当時)資産凍結。
主犯の俺は二年間の現有(当時)資産凍結と種族熟練度及びスキル熟練度半減だった。
なお、その時にカオスブレイブズの資産も一月の間凍結。
俺はその責任を取ってカオスブレイブズ副長の権限を返上しようとしたが、テルキスの計らいで相談役になった。
「隊長はそれでも私達を助けてくれたの!」
「兄様は私達のヒーローなの!」
するとカトラスは二人の頭を撫でた。
「そうか…お前らもか。うん。悪かったな。
お前達のヒーローに酷い事言って」
二人はニパッと微笑んだ。
今日も妖精郷は平和だな。
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