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真田十勇士

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巻ノ百二十七 戦のはじまりその十三

「勝てぬな」
「ただ兵の数の差だけでなく」
「完全に囲まれた」
 茶々が言った篭城策をした結果だ、そうなってしまったというのだ。
「ならばな」
「それをですな」
「どうして覆すかじゃ」
「そして大砲もですな」
「使わせぬ、しかしそれが大御所殿相手に出来るか」
 家康、彼にというのだ。
「お主はどう思うか」
「非常に難しいかと」 
 大助は強張った顔で父である幸村に答えた。
「それは最早」
「そうじゃな」
「はい、大御所殿は天下の名将です」
「これまで数多くの戦を経て来られたな」
「まさに百戦錬磨ですな」
「そこまでの方じゃ、勝ち戦も負け戦もご存知じゃ」
 その両方をというのだ。
「その御身を以てな」
「負け戦もですか」
「勝ち戦には勝ち戦の、負け戦には負け戦の学べることがある」
「どうすれば勝てるかどうすれば負けぬか」
「それがわかる、だからな」
「あの方はその両方をご存知なので」
「とりわけお強い」
 戦を知り抜いている、それが家康だというのだ。
「お若い時から戦の場に出ておられてな」
「それ故にですな」
「今も軍勢を動かされぬ、大御所殿が直接率いられる軍勢だけはな」
 例え十勇士達を使って乱し挑発し乗せてもというのだ。
「動かぬわ、そしてあの方が動かれぬならな」
「それならばですな」
「この戦勝つのは難しい」
「では他の大名の軍勢を動かしますか」
「これからな。そしてな」
「真田丸まで寄せてですな」
「そしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「散々に打ち破りな」
「その勢いで、ですな」
「茶々様を説得してじゃ」
「外にうって出て」
「攻めるべきじゃ」
「そうなりますか」
「我等はな」
 こう大助に話した。
「そして外に出ればな」
「はい、その時は」
「わかるな」
「大御所殿、公方殿の本陣を」
「一気に攻める」
 そうするというのだ。
「そしてお二方の首を取るぞ」
「そうせねば勝てませぬか」
「ことここに至ってはな」
 大坂城を囲まれた今となってはというのだ。
「それしかない」
「都や奈良を取ることはですな」
「もう出来ぬ、大御所殿が大坂まで来られたならな」
 そして秀忠もだ。
「それならな」
「それでは」
「これよりじゃ」
「戦になれば」
 外の戦に持ち込めばというのだ。
「大御所殿の本陣を目指し」
「突き進むぞ」
「わかり申した、乾坤一滴ですな」
「左様、しかし今はな」
 今の状況はというのだ。
「例え敗れてもな」
「大坂城がありますので」
「守りも後ろも確かじゃ」
 その両方がというのだ。
「だからじゃ」
「後ろからものも援軍も来て」
「思う存分戦えるわ」
「この城はこのことも大きいですか」
「そうじゃ、ただ堅固なだけではない」
 茶々はこのことばかり頭にあるがというのだ。
「兵糧も多くあってな」
「守りも確かなので少しの備えの兵だけ置いて」
「思いきり攻められる」
「それが大坂城の利点じゃ」
「その利点を活かし」
「攻めるぞ、よいな」
「その時は」
 大助も頷いた。
「そうしましょうぞ」
「ではな」
 幸村は大助にこう言って十勇士達を真田丸の外に出した、そうして戦を仕掛けるのだった。全ては勝つ為に。


巻ノ百二十七   完


                     2017・10・17 
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