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真田十勇士

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巻ノ百二十七 戦のはじまりその十二

「だからな」
「それで、ですか」
「うむ、あの方を止められぬ」
「ですから外堀の方に来られることもですか」
「現に今もそうされておるな」
「はい」
「ではな」
「まさにですな」
「撃たれに行く様なものじゃ」
 大砲にというのだ。
「そしてお心を撃たれるわ」
「そうなってしまえば」
「しかもあの方は戦の場に出られたこともない」
 このこともあるというのだ。
「大砲の音なぞ聞かれたこともない、鉄砲ですらな」
「尚更悪いですな」
「お主も鉄砲の音は何度も聞いた」
 修行の中でだ、それどころか筧が操る雷を術を習ってもいる、それで手裏剣に雷を宿らせたりすることも出来るのだ。
「怖くないな」
「全く」
「しかしじゃ」
「あの方は違う」
 茶々、彼女はというのだ。
「雷にも弱いからな」
「それの様な大砲にも」
「弱い、ではな」
「大砲を撃たれてはなりませぬな」
「まして雷は長くて一日であろう」
「はい、鳴り落ちるのは」
「しかし大砲は違う」
 こちらはというのだ。
「撃とうと思えば何日でも撃てるな」
「昼も夜も」
「そうして攻めればどうなる」
「雷とは比べものになりませぬ」
「そうじゃな」
「では」
「大砲は国崩しという」
 城を崩すからである。
「そう言うな」
「はい、左様です」
「しかしそれはな」
「城を攻めるだけでなく」
「そうじゃ、人が城を守るな」
「その人を攻めるのにもですな」
「大砲は使える、そしてじゃ」
 さらに話す幸村だった。
「その心もな」
「そうなりますか」
「わかるな、そのことは」
「よく」
 大助は父の言葉に真剣な面持ちで答えた。
「父上がこれまで教えて下さったこともありますし」
「武具は時として相手に見せる、そして振るうだけでな」
「相手にですな」
「心を怖気付けさせてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「戦に勝つことが出来る」
「だからこそ大御所殿もですな」
「大砲をそうして使われますか」
「そうであろうな、だからな」
「我等は外に出て戦うべきであり」
「そしてじゃ」
 幸村は大助にさらに話した。
「城の傍で大砲を使わせることもな」
「させるべきではなかった」
「無論茶々様も本丸におられてじゃ」
「そこにおいてですな」
「動かれぬことがじゃ」
 まさにこのことはというのだ。
「よかったのじゃが」
「それがですな」
「今に至った、どうにも悪い方に悪い方にじゃ」
 大坂方、つまり幸村達にというのだ。
「流れておるな」
「左様ですな、確かに」
「この戦相当なことをせぬとな」
 今に至ってはとだ、幸村は大助に深刻な顔で述べた。 
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