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儚き想い、されど永遠の想い

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446部分:第三十四話 冬の花その十


第三十四話 冬の花その十

「ですがそれでもです」
「春までは」
「冬は」
「若しかしたらですが」
 こう前置きしつつだ。医師は二人に話す。
「できるかも知れません」
「ではもう少しだけ」
「そうですね」
 医師の言葉を受けてだ。二人は。
 それぞれ顔を見合わせてだ。こう言い合ったのだった。
「生きて。そうして」
「桜を」
「桜ですか」
 二人の話を聞いてだ。医師も言ってきたのだった。
 やや難しい顔になりだ。二人に言うこととは。
「やはりそれは」
「難しいですか」
「無理だと」
「かなり難しいと思います」
 医師としてだ。こう二人に話すのだった。
「桜までは四ヶ月もありますから」
「その四ヶ月ですか」
「本来ならもう起き上がれない筈なのです」
 真理の病はそこまで重いというのだ。
「今でも奇跡的なのですから」
「奇跡ですか」
「はい、そうです」
「ではその奇跡は」
「続かないというのですか」
「そうは続かないと思います」
 医師は悲観論を述べているつもりはなかった。現実論だった。
 それを述べてだ。彼は二人を見て述べるのだった。
「残念ですが」
「いえ、それでもです」
 真理はだ。今は強かった。そうしてだ。
 医師にだ、こう言うのだった。
「私は生きます」
「そうされるというのですか」
「私がこれまで生きているのは奇跡なのですね」
「はい」
 その通りだとだ。医師はまた答える。
「そして奇跡というものはです」
「続くものではないですか」
「どうしてもです。ですがそれでもですか」
「永遠にとは言わないです」
 そこまで欲はなかった。真理は今の時点でも自分自身にかなり欲があると思っていた。
 だからだ。こう言うのだった。
「ですがそれでも私は」
「桜の季節まで、ですか」
「生きます。三人で」
「また辛いことを申し上げます」
 医師も逃げなかった。真理のその心を受けたからだ。
 それでだ。その彼女に告げたのである。
「春、桜の時まで生きることはです」
「できませんか」
「そう思って下さい」
 その辛い言葉をだ。彼はあえて真理に告げたのである。
「それは幾ら何でもです」
「そうですか」
「ですがそれでもですね」
「はい、私は」
 どうしてもだとだ。真理は答えた。
「春まで。奇跡を起こし続けます」
「その奇跡をですか」
「生きること、それ自体が奇跡というならです」
「そう言われますか」
「それは駄目なのでしょうか」
 強さと共に切実なものも含ませてだ。真理は話すのだった。
「私が生きるということは」
「生きているものは例えどうした生きものであってもです」
 医師はすぐには答えなかった。そのかわりにだった。
 真理のその意志を前面に出した顔を見つつだ。そのうえでこう言ったのだった。
 
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