獣篇Ⅱ
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16 愛情に飢えた男の扱いは、とてもめんどうくさい、
辺り一体、血の海である。
_「しつこいなァ。女を殺すのは、趣味じゃないんだヨ。女は強い子を産むかもしれないだろ?まァ、君らの子どもには期待できないか。」
_「やめろォ!お前、そんなに人を殺して何が楽しいんだ!?なんでそんなヘラヘラ人を殺せるんだよォォッ!」
_「ひどいなァ、ここまで連れてきてあげたのに。それにコイツら、君の母さんをここに閉じ込めてた連中だヨ?」
_「頼んだ覚えはねェやい。」
_「笑顔はオレの殺しの作法だ。どんな人生であれ、最期は笑顔で送って、健やかに死なせてあげないとネ。逆に言えば、オレが笑いかけた時は、殺意がある、と取ってもいい。
冗談だヨ。オレは子どもは殺さない主義なんだ。だってこの先、強くなるかもしれないダロ?
おいでよ、君も笑うといい。お母さんに会うのに、そんなシケた面してちゃいけないヨ。」
よし。影から見守っている。
すると、鳳仙が現れた。
晴太くんに、揺さぶりをかけている。
だがそれが、私は許せなかった。
自分の私利私欲のために、子どもから母親を奪い、その母親を自分のものにしようとしか考えていない男。
私は幼い頃から母も父もいなかった。ずっと一人で生きてきたのだ。その点は、晴太くんと共通している。だが、それでも晴太くんには母親がいる。実の母ではないかもしれないだろうが、そんなのは正直関係ないと思う。血が繋がっていようがいまいが、心の中にその人を親として慕ったり、また子どものように思う感情が存在するならば、その時点でもう親子の絆ができている、と言うことができるだろう。
木刀が突き刺さったと共に、
銀時が口を開く。
_「オイオイ、聞いてねェぜェ?
吉原一の女がいる、って言うからァ、来てみりゃァよォ。どうやらコブ付きだったらしい。その涙が何よりの証拠だ。」
よかった、銀時がきた。だが、安心するのはまだ早い。この夜王を倒すためには、太陽が不可欠である。
_「銀さんッ!」
_「ありゃりゃ、もう終わりか。つまんないの。」
だが神威は、ここまで持った銀時にすごく興味を抱いたようだ。
_「フフフフン)デカい口を叩くだけはあるらしいな、あくまで地球の中だけの話だが。所詮我ら天人から国さえ守れなかった貴様ら武士に、我が鎖、断ち切ることなどできるはずがなかったのだ。獅子は縄張り争いに負ければ、縄張りと共に己の保有する雌たちをも明け渡す。分かるかッ!?貴様ら武士にはもう居場所も、その手で女を抱く権利すらも在りはしないのだ。とっくの昔に縄張りも雌も、皆わしらのものになってしまったのだから。そう、この町も女たちも日輪も、全てこの夜王のもの。ヤツらはわしの鎖に繋がれた飼い犬だ。どこにも逃げられやせぬわ。そして貴様ら負け犬に、これを止める権利はないッ!悪いのは何も守ることのできなかった貴様ら弱者なのだからなァッ!負け犬は負け犬らしく、指を咥えて見ておればよいのだ。この国が、女たちが、我ら強者に蹂躙される様をッ!先に逝った仲間たちと一緒に、あの世でなァッ!」
鳳仙にはまだ見えていないようだが、私は銀時がゆっくり立ち上がるのが見えた。
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