ドリトル先生と奈良の三山
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第九幕その七
「けれどね」
「それでもだね」
「このことも一から考えなおして」
「検証してみるのね」
「そうしようかな」
実際にと考える先生でした、先生にとって三山はとても不思議なものに見えて仕方なくなっていました。
それで次の日です、奈良市で開かれていた考古学の学会に出席する時に学会が開かれる場所に行く時にです。
そこに白鹿が来てです、こう先生に尋ねてきました。
「謎は、ですね」
「うん、これがね」
先生は白鹿に正直に答えました。
「調べればね」
「調べる程ですか」
「謎が深まっているというかね」
「そうした感じになっていますか」
「そうなんだ」
実際にというのです。
「これがね」
「やはりそうですか」
白鹿は先生のお言葉を聞いても別に取り乱さず冷静に応えました。
「三山については」
「後で地質学、植物学からも検証した論文も書くけれど」
「それでもですね」
「わからないことはね」
「どうしてもありますか」
「むしろわからないことばかりで」
それでというのです。
「論文を書いてもね」
「答えは出ないですね」
「そうなるよ」
もうこうなることはどうしようもないというのです。
「僕は古墳説を出すけれど」
「古墳でもですね」
「誰の古墳かわからないし」
それにというのです。
「しかも三山の配置が二等辺三角形だけれど」
「そのこともわからない」
「どうしてその配置なのかね」
「偶然というには」
白鹿もその可能性を考えました、ですがその可能性は白鹿の中でもすぐに消えてしまうものでありました。
「出来過ぎていますね」
「盆地の中にあの高さと形の山が一つあるのも不自然だしね」
「それが三つで」
「しかも二等辺三角形の配置となると」
「偶然ではないですね」
「そうだよね」
「はい、本当に」
白鹿もこう先生に返しました。
「そう思います」
「そうだね、とにかくね」
「このことはですね」
「どうも僕にしても」
「わからないことですね」
「そうなんだ」
「そうですが、ですが先にお話させてもらった通りに」
白鹿は落ち着いた調子のまま先生に応えました。
「論文を書いて頂ければ」
「それでいいんだね」
「はい、先生の書かれた論文が後々に」
「三山の謎が解けるきっかけになる」
「そうなるかも知れないので」
「学問はまず疑問を感じる」
「そこからですね」
「そう、どうなのか正しいのかとね」
そう思ってというのです。
「調べて検証してね」
「突き詰めていくことですね」
「正しいかどうかね」
「ですから疑問や説を出して頂きたいのです」
「その僕の疑問や説にだね」
「後の人達が考えてくれますので」
「そして何時かね」
「答えを出してくれるでしょうから」
だからというのです、白鹿は遥かな未来まで見据えてそのうえで考えて先生にお話しているのです。
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