相談役毒蛙の日常
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十日目
フェンリルストームとドラゴンブレスの連べ撃ち。
地上に向かって撃てば町一つ焼き払える威力だ。
散会した俺達前衛隊の中心をそれらが駆け抜ける。
それにより活路が…開かれる事は無かった。
即座にガーディアンで穴が塞がれたからだ。
「ちくしょう!やっぱりか!総員!近くの者とバディを組め!確実に仕留めろ!」
「「「「「おう!」」」」」
「イクシードは前線へ!あの三人を援護しろ!」
イクシード…幹部会に指示を出す。
「「「「「了解!」」」」」
リーファともう一人のシルフが居た高度を越えた。
そして…前衛隊がガーディアンと接敵した。
俺の目の前にも身長二メートルはある白銀の鎧が現れた。
「今までとは…ちげぇんだよ!」
大剣を引き絞り、弓矢の如く放つ。
ズドシュゥ!
正面のガーディアンを貫き、その後ろの奴も貫いた。
貫かれたにたいのガーディアンはエンドエフェクトを残し霧散した。
「立ち向かえ!敵の一体一体は強くない!
ウィークポイントに一撃加えろ!」
ふとキリトを見た…
すげぇ…無双してるよ…
キリトは向かってくるガーディアンを一太刀で屠っていた。
マズイ!
あのバカ背後に気付いてない!?
キリトの後方で矢をつがえるガーディアン…
翅にありったけの力を込め、キリトの居る空域に向かう。
間に合え!
キリトの数メートル後ろのガーディアンを…叩き切る!
「トードか!?」
「ああ!俺だ!勝手におっ始めてんじゃねぇよ!このバカ!」
「悪い!だけど…!」
「話は後だ!今は攻略の事だけを考えろ!」
やがてフェンリルストーム、ドラゴンブレスの第二射が放たれた…
その中にある回復の光…
その光を受け取るべく翅を動かした。
ふぅ…あぶねぇ…
HPバーの下のバフアイコンを見る。
HPスリップの横に複数の回復アイコン…
コレで戦える…!
そうと決まれば…!
「キリト!」
「なんだ!」
「コレから幹部会が突撃する…活路を開く。
お前が行け!」
「いや…それは…」
「お姫様を助けるんだろうが!」
「……!ああ!」
よし!
迫り来るガーディアンを屠りつつ、呪文を紡ぐ。
紡ぐ呪文は大した事は無い。
単なる閃光弾だ…
パァッ!っと明るい光が生まれる…
「来い!」
次の瞬間、バラバラに戦っていたイクシード…カオスブレイブズ最初期メンバーが集結を始めた。
その間にもガーディアンを斬って行く…
「副長!」
真っ先に来たのは現タンク隊隊長だった。
その後も現スカウト隊隊長や現アタッカー隊隊長なども集結した。
「お前達!準備はいいか?」
「「「「ああ!」」」」
集まった旧イクシードの面々…つまりテルキスを除くカオスブレイブズ創設メンバー。
俺を含め、総勢10人。
全員がALO内で二つ名を持つ精鋭中の精鋭…
「お前ら!行けるか!?」
「勿論だ副長!」
ったく…もう俺は副長じゃねぇってのに…
「じゃぁ…やるぞ…予定通り、このスプリガンを届ける…いいな?」
「全て副長の心のままにだよ」
ったく…バカばっかりだ…
「キリト!俺達がお前を上まで送り届ける!着いて来い!」
「いいのか?トード?」
と言うと、アタッカー隊隊長…リディが答えた。
「アンタ…キリト?だったか?聞いてるぜ。
お姫様助けに行くんだろ?
だったら途中までの案内くらいさせてくれ!」
ふふっ…
「キリト、ウチの幹部会はこんなバカばっかりでな…だから…気にするな。」
イクシードがキリトを取り囲む。
キリトを中に入れ、円錐状の陣形を取る。
俺はその頂点部分だ…
そして二度目の、色の違う閃光弾を放つ…
同盟軍と打ち合わせした色だ。
そして…
ゴウ!
と言う音と共に、フェンリルストーム、ドラゴンブレスの第三射が俺達の上の空域に向かって発射された
「行くぞ野郎共!イクシード・ストライク!
GO!」
イクシード十八番の密集突撃。
フェンリルナイツと飛竜隊の攻撃で開いた穴に突撃する
しかしすぐにガーディアンが目の前に現れる。
「邪魔だぁ!どけぇぇぇぇぇ!」
がむしゃらに、ただただ、がむしゃらに剣を振るう。
倍加され、更に諸々のアイテムでUPされたステータス。
この手に握る、全てを断つ刃。
今まで培ってきたプレイヤースキル。
その全てを以てして、ガーディアンを斬り伏せる。
しかし、徐々に徐々に、イクシードが限界を迎える。
「悪い!トード!後は頼むぜ!」
と言ってスカウト隊隊長スネークが脱落した。
「クソっ!」
「おい!トード!もういい!俺だけで行く!」
あぁ、もう!うるさい!
「うるせぇぞ!キリトォ!黙って着いてこい!」
やがて…
「トード!彼を!彼を頼む!そして!どうか!どうか俺達の悲願を!」
俺以外のイクシードで最後だったリディが脱落した…
しかし…
「剣を!」
キリトがリディに手を伸ばした。
エンドフレイムへと化す刹那、リディはその剣を、キリトへ渡した。
「トード!下がれ!」
キリトが俺を追い越し、前に出る。
「ウオォォォォォッォォォォォォッォ!!」
二刀を得たキリトは、鬼神の如き勢いでガーディアンを斬っていった。
しかし俺とて負ける訳にはいかない…
キリトの横から狙うガーディアンを、近付けさせないよう大剣を振り回す。
やがて…
「抜けた!」
ガーディアンの層を突破した。
その天井には、十字に閉ざされた扉…
「キリト!」
「ああ!」
扉に向かって羽ばたく。
やがて、重力が逆転した。
地に…否、天井に足を着ける。
「さぁ…コレで…」
しかし、扉は開かなかった。
「どういう事だトード!?」
「俺が知るかよ!?」
クソっ!何故だ!何故開かない!?
何かキーアイテムが必要なのか!?
世界樹関連クエストはもう一年前に全て洗った!
いったい何が…
「パパ!トードさん!」
キリトの胸ポケットからプライベートピクシーのユイちゃんが現れた。
「この扉はシステム的にロックされています!」
「何だって!?」
と驚くキリト…
そして、俺はやはり自らの仮説が正しかったと悟った。
「やはりか…このゲームはクリアさせる気は無かったのか…」
「どういう意味ですかトードさん?」
「前々から、一部のプレイヤーの間噂されていた事さ…
このゲームはクリアさせる気は無いってね」
「そんなバカな!?」
昨日のイクシード…
そこで俺が再度提唱した説。
"このゲームはプレイヤーを世界樹に侵入させるつもりはない。
何故なら世界樹上部では非合法なVRテクノロジーの実験が行われているから"
実験云々はさておき、『世界樹の上には、ゲームではない何かがある』というのがイクシードの見解だ…
そんな事を話している内に、ガーディアンが生まれていた。
「くそっ…ユイ!何か手は無いのか!」
「なにか…システムにアクセス出来る物があれば…」
そんなものをプレイヤーが持っている訳…
「ユイ!コレを使えるか!?」
キリトがポケットから取り出したのは黒いカードだった。
「行けます!これを使えばシステムにアクセス出来ます!」
なんでそんなもの持ってるんだ…
ユイちゃんがカードを受け取ると、黒一色だったカードに電子基盤の紋様が浮かび、転移エフェクトが生まれた。
「転移します!パパ!」
ユイちゃんがキリトを呼び…
「トード!」
ガシッ
っと、キリトに腕を捕まれた。
「え?」
「お前も来い!」
キリトとユイちゃんの指先が触れ…
俺達は光に包まれた。
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