獣篇Ⅱ
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8 独占欲が強い男ほど面倒くさいものはない。
_「…いや、だってなァ、元々あんな野良犬が日輪に会おう、だなんて無理な話だったんだよォ。オレたちだって口も聞けねェような存在だせェ?それに、1日一杯引っ掻けるのにちょうどいい感じだったんだよォ、あの金。」
ん?誰か来た。あのシルエットは銀時か?だが、こちらは黒髪である。
普段と化粧も違うので、多分バレないとは思うが、そこは慎重に。
話を聞き直す。
_「オイオイ、ひでェヤツだねェ。
え?じゃあホントに一錢もないの?」
_「ないね。
まァ、構うこたァねェだろう。
どうせあの野良犬のことだァ。ろくでもねェことして掴んだ金に違ェねェんだ。文句を言われる筋合いはねェよ。」
_「確かに、そうかもしんねェな。
今度晴太が来たときゃァ、オレも誘ってくれよ。」
_「うっとォ…言わなきゃよかったなァ?」
おォ!なんかスッキリした。
_「んなこったろうたァ、思ってたぜェ?まァいいさ、最初ッから金で会える相手たァ思っちゃいねェ。
ねェちゃん、いくらだ?」
どうやらあの者も、百華の者くさいな。
_「お代は結構です。スッキリさせてもらえたので。」
_「晴太の知り合いか?」
と、銀時が尋ねる。
_「…ぁ…ここでは有名でしたので。子どもの来るようなところではないのでね。」
_「これっぽっちか…」
オイコラッ!何やってンだいい歳して!
_「日輪と晴太を逢わせようと考えておいでで?」
_「うるせェ餓鬼にいつまでも住み着かれちゃァ、迷惑なんでなァ。身寄りでもいねェかと探しに来ただけさ。金のねェヤツァ、どうやって日輪に会えばいい?」
_「日輪は、この吉原最高位の太夫…よほどの上客でなければ逢えません。諦めた方がよろしいかと。この吉原桃源郷は、地上とは別の法で縛られた一個の国。上の常識は通じません。ここのルールに従って頂たかなければ、二度と上へ戻れなくなりますよ。」
_「わりィなァ。オラァ、上でも下でも自分のルールで生きてんだ。」
攻撃をかわし、銀時が去った直後、百華の者たちが駆け寄ってきた。煙管をしまい、緊急の連絡をする。そして、鳳仙に伝えにいってくる、と伝言を残してその場を去った。ある程度までくると、鳳仙のいる建物のフロアのトイレにワープする。一応、トイレがあることは確認しておいたので、大丈夫であろう。
部屋につくと神威に連絡を取り、無線を繋げた。
失礼します、と声をかけ、襖を開ける。襖を閉めて、鳳仙のずっと前方に座る。すると、おもむろにこう聞かれた。
_「百花を動かしてんのか。」
_「妙な浪人が一匹、潜り込んでいるようで。百花の者が一人、やられました。相当な手練れ。聞けば日輪を探している、とか。」
_「フン)
珍しい話ではあるまい?あれはこの常世の国が太陽。女たちが囲われ者として扱われる、この女の牢獄にあって…あの女の瞳にだけは、諦らめも卑しさも憂いも見えない。
この地下にあってもなお、その魂だけは落つることがない。決して真の美しさを失わない。この町の女たちは皆あれを敬慕し、そしてこの町に流れ着いた男たちは皆、あれを愛するのだ。手など届きはしないがな。」
そう、この情報はさっき聞いた。
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