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獣篇Ⅱ

作者:Gabriella
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2 引いてダメなら押してみろ。

_「お前、いつから煙管なんざ咥えるようになったんだァ?」

_「結構前からよ。」


あ、そうそう。
と、さっき買ったお土産を引っ張り出す。

_「これ、晋助にお土産。」

受けとると、
後から見る、と言って、
さっさと懐にしまってしまった。

_「あとお前の荷物だが、今日の夜に届くらしいぜ?」

_「あら、もう届いてるかと思ってたわ。」

_「ま、この間まで空の上にいたからなァ、届けようにも届かねェだろォ?」

_「確かに、」


と言って正直ホッとした。
もしあの時、着払いにしていたら…
何が起こるか、分からない。汗)

危なかった!www


_「じゃァ、私が受け取っていいかしら?その方がいいでしょ?」


晋助に確認する。

_「いや、隊士に取らせにいかせらァ。」

_「なんで?その人に迷惑をかけちゃうじゃない!?」

_「いいんだ、お前は夜に予定がある。そして、隊士はオレの部下だから、オレが言えば言うことは聞く。だから、お前は部屋にいろ。」

_「ハイハイ、つまり私、夜はあなた様の部屋に軟禁される、という訳ですね?」

_「ンな人聞きの悪いこと言うなや。」

_「でもそういうことでしょう?」

_「まァな、分かってンなら話は早ェ。オラ、行くぞ。」


と手を引っ張られて船内に連れていかれた。まず、最初に出くわしたのは、また子である。出会うなりすぐに、強烈なハグをされた。

_「お帰りッス!!零杏~」


しっかり抱き締められているため、また子の香りがフワッと鼻を(くすぐ)る。グェ、潰れそう…苦笑
仕方ないので、彼女を抱き締め返した。

_「ただいまです、また子先輩ィ :)」



また子が一段落ついたのを見計らって、晋助が口を開く。

_「オイ、また子。ちょっと零杏借りるぞ。」


どうか離さないでくれ、という私の儚い願いは無惨にも打ち砕かれ、どうぞ、どうぞとあっけなく私は晋助の腕の中に閉じこめられた。

_「早く部屋に戻るぞ、じゃないと…」

なんだ、見られたら困るようヤツでもいるのか?あ、神威とか…?
まさかな。

_「あ、零杏だ~」

ハイ、こういう時の悪い予感は不思議と当たるものだ。今回もまたあっけなく捕まりました。苦笑
なぜこんなにも私は悪運が強いのだろうか。正負の法則、とかいうスピリチュアルな本を読んだことがあったが、まさかこんなところで発揮されるものとは思ってもいなかった。

_「アラ、神威もいたのね。」

_「なんだヨ~、いたらまずいことでもあったノ?」


晋助を一瞥し、別に、と答える。

_「っていうかさ、今までどこにいたノ?探しても、シンスケに聞いても、行方がわからなくて困ったんだヨ。」

_「そ、そうだったんだ~…」

_「でもネ、もう見つけたから話は早い。シンスケ、零杏を…」


ナイスタイミングで万斉が現れる。

_「おお、零杏!帰ってたでござるか!心配したでござる。無事で何よりでござる。」

嬉しそうに目を細めているのが、透けるサングラスから見える。ところで、と(ばんさい)は話を続けた。

_「ところで、なぜ神威殿がここに?零杏に用事でもあったでござるか?」

_「そう、そのことなんだけどネ、」


晋助も嫌な予感がしているのか、腕の中の私をより一層キツク閉じ込める。

_「零杏を借りてもいいカナ?交渉役としてちょっと、鳳仙のところに行かなきゃいけなくてネ。男だけじゃむさ苦しいから紅一点、ってことでサ。」

と、無邪気な笑みを浮かべて晋助に尋ねている。これにはどう出るか、ちょっと気になったので黙って晋助の様子を伺う。反応によっては、これからも使える技かもしれないので、もちろん参考にさせてもらうつもりだ。
しばらくして、晋助が口を開く。

_「…いいぜェ。だがな、零杏は帰ってきたばっかりだ。きっと疲れてるだろうよォ。ま、返事は零杏次第だ。オラァ、どっちでもいい。」

本当は行かせたくないがな、と耳元でそっと囁く。何だ突然、なんか爆弾が私のところに飛んできた。
まさか自分にターンが回ってくるとは思っていなかった私は、つい声が裏返る。

_「え?私?」

素っ頓狂な声をあげた私に被せて神威が言葉を続ける。

_「ダメ?オレたちは零杏が必要なんだ。来てくれないなら…殺しちゃうゾ。」
 
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