万華鏡の連鎖
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宇宙戦艦ヤマト異伝
惑星ランドック
「わあった、わあったよ!
おとなしくしてっから、吼えるなよ!!
頼むから、物騒な牙を引っ込めてくれや。
なかよくしよーぜ、クァールのムギさんよ」
両掌を挙げ、降参の意思を表す優男。
トパーズ色の瞳が和み、安堵の溜息を吐いた。
ユリの黒い瞳が通信スクリーン、焦茶色《アンバー》の瞳を覗き込む。
「見覚えがあるわね。
お母さん、何て名前?」
「ユリア姐さん!」
「ジョウのお母さんにそっくし!
写真でしか見た事ないけど。
貴女の名前、聞いても良いかしら?」
大男を押し退け、新顔が現れた。
金髪が舞い、燦然と輝く。
星水晶≪スター・クリスタル≫の碧い瞳が煌き、優雅に微笑。
か、勝てない。
金髪、碧眼、白い肌。
何で、こんな美人が混ざってんのよ!
あたしは肩を竦め、顔を逸らした。
ユリもがっくし、肩を落としている。
太刀打ち出来ない、と悟ったんだね。
まぁ、しょうがないよ。
あたしでも、勝てないんだもん。
反則よ、やり直しを要求するわ。
「俺の父親なんぞ、どーでもいい。
認識番号を送る、様式《フォーマット》は合ってる筈だ」
おいしそ-な坊やの背後で、豪快な笑いが弾ける。
縦横に傷が走り、歴戦の戦士を思わせる迫力満点の風貌。
チーム・リーダーが振り返り電光石火、鋭い強烈な蹴りを入れる。
サイボーグ化されたタロスの身体は、全く応えない。
異音が響き、足を抱えて転げ回るジョウ。
後方で金髪碧眼の美少女、童顔の少年がケラケラ笑う。
次元回廊の奥から、更に無数の艦艇が現れた。
2140年代の連合宇宙軍が派遣した艦隊を凌駕、構成する艦種も多岐に渡る。
全長2千m級の超大型戦艦、1500m級の超弩級戦艦。
全長800m級の弩級戦艦、全長600m級の巡洋戦艦、全長400m級の重巡洋艦。
全長300m級の軽巡洋艦、全長200m級の重雷装駆逐艦、全長150m級の護衛駆逐艦。
全長500m級の戦闘艇母艦は直径30m級、円盤型の戦闘艇50隻を運ぶ。
戦艦、巡洋戦艦、重巡洋艦も全長10~15m級の戦闘機2~4機を搭載。
宇宙戦闘艦艇群は見事な統制を見せ、周囲空光分の宙域に展開。
到底、数え切れない。
大艦隊の旗艦、お偉方≪ディレクトリクス≫ならぬ全長300メートルの宇宙巡洋艦。
銀河の栄光≪ザ・グローリー・オブ・ギャラクシー≫から、入電があった。
「太陽系防衛軍の方々へ、銀河連合主席より伝言を預かっております。
銀河連合に所属する太陽系国家、8000以上の惑星に住む全人類が貴方達の味方です。
現時点に於いて戦艦、巡洋戦艦の総数は合計1万隻を超えますが。
宇宙母艦搭載の戦闘艇、戦闘機を含め総数1億に達します。
各太陽系国家は製造施設を総動員し艦艇、戦闘機の製造を継続中。
後続の艦隊も順次、貴太陽系に送り無限艦隊に対抗する予定です。
女神の恩恵は当世界にも様々な波及効果を齎し、異種族の運命も変転を遂げましたが。
太陽系国家タラオの第5惑星、ランドックの研究機関が援軍派遣の鍵となりました」
銀河連合首席からの親書《メッセージ》、派遣軍の編成に至る過程を要約する。
太陽系国家タラオの基幹産業創出を模索する大統領、フォン・ドミネートは或る研究に注目。
時も次元も解明され巨大女神アウラ・カーの統べる神々の都、アリシア星系の第三惑星に非ず。
首都タルカサールの存在する第5惑星、ランドックへと招致活動を行った。
太陽系国家ザルード第3惑星ツアーン、タルボ大学トートミア校レイチェ生化学研究所。
主任研究員プロフェッサー・イトウの掲げる野心的、天才的な研究《プロジェクト》である。
主題《テーマ》は直感的な閃き、大発明の原理解明。
創造力を飛躍的に高め、天才的発明を科学的に誘発する目的の研究だが。
或る日、突然、ピンと来た。
『これだ!』と直感が閃き、前人未到の画期的な案が《降りて来る》超心理学的現象の再現は難しい。
奇蹟《ミラクル》発生の確率を向上させ、人類の進歩と発展に貢献する意欲的な試み。
人類の更なる発展を促し、多大な貢献を齎す可能性を秘めている。
発想が、凄い。
実用化に成功すれば飛躍的な各種技術の進歩、人類全体の進化さえもが可能となるかも知れぬ。
だが、残念な事に。
実用化には、程遠かった。
創造的直感《インスピレーション》と、超能力《サイキック》。
類似性に着目した所までは良かったが、其処から先に進まない。
プロフェッサー・イトウの実験、暗中模索の試行錯誤は幾度も繰り返された。
超能力の源、ESP波の存在は確認されたのだが。
天才的な直感の誘発は果たせず、増幅の糸口も見えない状況が続く。
色々試している内に何故か、ESP波を重力場が遮断する負効果を発見してしまった。
足踏み状態から抜け出せない彼等の疲労は募り、県境の放棄も検討されたが。
或る日、突然。
彼等の研究に、大いなる変化が訪れた。
我々ガミラス帝国を宇宙侵略者から、火星防衛軍へと変貌させた要因。
全宇宙へ向け発信された、とも思われる超次元間遠隔感応映像。
女神救出作戦の発動を告げる惑星メルの王女、プリンセス・メローラの超3次元映像。
太陽系国家タラオ第5惑星ランドック、イトウ率いる研究所のスクリーンも例外ではなかった。
キイ・ワードの効果が顕れ、女神の封印した記憶が解放された。
史上最凶の超能力者クリスが率いる神聖アスタロード王国の来襲、己の死。
多大な心理的衝撃を受け、混乱するプロジェクト・チームの前に。
思いがけぬ味方が、現れた。
分岐点の異なる世界で体験した記憶が甦り、畏怖の念を禁じ得ぬ天才科学者の脳裏に《声》が響いた。
(貴公の研究、《インスピレーション》の実験に協力する。
現在時空の超能力者を総動員し集団超能力を用い、超次元間往復遠隔感応を実現する為に。
超次元間の遠隔感応能力者メローラ姫と、心話連絡《コンタクト》を取る為に。
銀河連合所属の連合宇宙軍と協力しESP波増幅装置を試作実験し、超能力を増幅せねばならぬ。
超能力部隊《サイキック・フォース》、超戦士《スーパー・ソルジャー》編成の用意がある)
銀河連合も未確認の遠隔瞬間移送能力、圧倒的な《サイキック・パワー》を兼ね備えた大導師。
アスタロッチの再建した暗黒邪神教団に、2千名にも及ぶ超能力者の指導者として合流した男。
超越者《スーパー・サイキック》とも噂される偉大な長老、オーティス・ザ・グレイテスト。
ESP波検出器のメーターが振り切れる程、強大な《フォース》を発揮する超能力者集団である。
女神を救う事は、全てに優先する。
事情は超能力者《エスパー》達の間でも、共通していた。
惑星カインを死の星へ変えた後天的な精神感応能力者《テレパス》、元大統領アスタロッチは。
幽体遊離の実験に失敗し、通常の輪廻転生を経る事となった。
史上最強の素質を秘めた少年、クリスへの憑依融合も女神に阻止されていたのだ。
父の連合宇宙軍大佐も、息子の潜在超能力に気付いていなかった。
強力な精神感応能力と念動力を有し、ベティ・タウフリーの転生やもしれぬ第2の実力者。
少女ソニアもまた無事に成長を遂げ、オーティスの許で強力な才能を開花させている。
10代の若者2人も含め暗黒邪神教、及び神聖アスタロード王国に参加し落命した者達。
超能力者達の記憶封鎖も解除《リセット》され、己の《死》と異分岐の記憶が鮮明に蘇った。
クリスの潜在超能力は覚醒し、強力な精神感応波が銀河系を駆け巡った。
オーティスの許にも、銀河系各地から数多の超能力者達が参集している。
異なる分岐世界に於いて、惑星カインの暗黒邪神教に参加した超能力者達。
超念動波増幅破壊砲《サイコ・フォース・デストロイヤー》の要員、3千名。
更に暗黒邪神教の後身、神聖アスタロード王国に参加した超能力者達。
念により時空を歪め、超次元の幻影惑星《ファンタズム・プラネット》を実体化させた2千名。
総計5千を越える超能力者達が、惑星カインへ集結を果たした。
前代未聞のESP波が発信され、超時空の精神感応《テレパシー》放送が行われた。
史上最大の超能力者集団、超戦士《スーパー・ソルジャー》は精神融合体を形成。
多数のESP波を共鳴させ心を一つにして、メローラに向けてメッセージを送る。
応答は無かった。
テレパシー波は、届かなかったと推察される。
遙か次元を隔てる惑星メルに到達するには、彼等のESP波は力不足だったのだ。
突破口を見出す為、多数の記憶が走査≪スキャン≫され精査された。
種々の可能性が探索≪サーチ≫され、様々な角度から検討が試みられる事となった。
ひとつの名前が、浮上した。
太陽系国家タラオの首都、第5惑星ランドック。
インスピレーションのメカニズム解明を主題とする研究者、イトウの存在が確認された。
詳細な情報が追加検索され、ESP波を研究するプロフェッサーの発想は評価が高い。
ESP波遮断装置≪ブレーカー≫は存在するが、増幅する方法は解明されていない。
イトウはESP波増幅の可能性を探る為に本物の超能力者を探し、実験への参加を切望している。
オーティス・ザ・グレイテスト、少年クリス、少女ソニアを含む本物の超能力者集団。
超戦士≪スーパー・ソルジャー≫は即刻、タラオ星系第5惑星ランドックへ飛んだ。
後書き
『美しき魔王』『暗黒邪神教の洞窟』参照(^^)
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