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真田十勇士

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巻ノ百二十六 軍議その十一

「本丸には到底です」
「効きませぬな」
「精々外堀の櫓を撃てる程度ですが」
「それも大砲をうんと近寄せて」
「それで出来ますが」
「問題は撃たれることですな」
「左様」
 まさにそのことがとだ、後藤は言い切った。
「連日連夜撃たれればどうなるか」
「その音が問題ですからな」
 大砲はとだ、幸村も大砲のことを知っているので後藤に応えられた。
「そこまで撃たれますと」
「城の中にいる者達の心が滅入ります」
「そうなりますな」
「そこが問題です、そして若しもです」
 この前置きからだ、後藤はこのことも話した。
「茶々様が櫓におられれば」
「外堀のですな」
「そこにおられれば」
 そうすればというのだ。
「大砲の弾が届けば」
「厄介ですな」
「茶々様がどう思われるか」
 それが一番恐ろしいというのだ。
「幕府も流石に大砲を多くは持っていませぬが」
「そうした時にこそ使うもの」
「はい、幕府にしましても」
「それでは」
「篭城すればそこも危ういです」
 人特に茶々の心を攻められるというのだ、大砲の音や弾の衝撃で。
「ですから拙者もです」
「それがしの策にですな」
「賛成したのですが」
「しかしです」 
 それでもというのだ。
「この度はです」
「茶々様は篭城を選ばれました」
「それではです」
「負けですか」
「勝てる筈がありませぬ」
 到底とだ、後藤は言い切った。
「それがしは思いまする」
「そうですな、これでは」
「我等が恐れていた通りになりましたな」
「茶々様が言われるとは」
「それはです」
 まさにというのだ。
「これだけはと思っていましたが」
「そうなってしまいましたな」
「戦は将が最も大事ですが」
「その将の違いですな」
「幕府は大御所殿です」
「これまで多くの戦で戦ってきた」
 そして勝利をもぎ取ってきただ。
「あの御仁ですから」
「危ういですな」
 二人の危惧は他の諸将も同じだった、それは治房も同じであり弟の治胤に対して深刻な顔で言っていた。
「あそこでじゃ」
「兄上がですな」
「茶々様をお止めしていれば」
 執権である彼がというのだ。
「そうであればな」
「我等は外で戦い」
「そしてじゃ」
「勝てますな」
「篭城したままで勝てるものか」
 治房から見てもそうだった。
「到底な」
「全くですな」
「囲まれれば終わりじゃ、しかもじゃ」
「援軍もですな」
「来る筈がないわ」
 到底、というのだ。 
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