歌集「冬寂月」
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二十五
振り返り
見なば侘しき
枯れ野原
うくは陰りし
夜半の月かな
真夜中の帰り道…ふと振り返れば、冷たい風の吹く枯れた野原…。
何もない自分と同じに見えても、春になれば花と緑に覆われる…。
侘しさに空を仰げば、そこには薄雲に翳る幽かな月…。
虚しさに憂う私の心もまた…翳っているのだろう…。
思い散り
嘆くわが身も
ふりされば
夜々の淋しさ
いつか忘るゝ
梅の花も散り始め、それを見るたびに虚しく溜め息をもらす…。
この想いは一体何のためだったか…散りて尚、痛む想いは…。
嘆いたとして何になるともない…だが、これさえも年を経れば淡い夢のように忘れゆけるものだろう…。
この夜の淋しささえ…いつか忘れて、心静かに生きてゆけるに違いない…。
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